過去の受賞者TOP日本自然保護大賞2022(令和3年度)受賞者 活動紹介/講評シンポジウムの様子

日本自然保護大賞2022(令和3年度)授賞式・活動発表報告

日本自然保護大賞2022 授賞式および記念シンポジウムを開催しました

2022年3月13日(日)に、「日本自然保護大賞2022」の授賞式および記念シンポジウムを開催しました。第1部の授賞式では、保護実践、教育普及、子ども・学生の大賞3部門のほか、選考委員特別賞2件に賞状と盾を贈呈しました。第2部の記念シンポジウムでは、受賞者の皆さんに活動の成果をご発表いただき、そのようすをYouTubeでライブ配信しました。コロナウィルス感染拡大防止のため、皆さまと集ってお祝いすることができなかったのは大変残念でしたが、会場に足を運んでくださった方がいらしたり、地元から揃ってオンライン出席いただいたり、全国各地から多くの方々がご視聴くださいました。幅広い世代の方々が順に発表された受賞活動は、生態系の保全や自然を生かした地域づくりに大きく貢献され、人の心を動かすまでの魅力や行動力にあふれたものばかりで、私たちもたくさんの励ましと勇気をいただきました。

日本自然保護大賞2022(令和3年度)授賞式・活動発表報告

受賞活動発表のようすは、日本自然保護協会のYouTube公式チャンネルでご覧いただけます。

https://youtu.be/A6W7PB4L56g

総評

亀山 章
亀山 章
公益財団法人日本自然保護協会理事長/
「日本自然保護大賞」選考委員長
日本自然保護大賞は、本年で第8回となり、応募は全国各地から、市民グループ、NPO法人、個人、学校、企業などさまざまな方々から101件寄せられました。本賞では、活動の地域性、継続性、専門性、先進性、協働などを評価点として選考しています。さらには、活動の訴求性や独自性なども鑑みて評価の高い活動を選出しました。
保護実践部門の大賞、結いの森プロジェクトでは、森の保全を得られた材の商品開発にまでつなげられた実践的な取り組みが評価されました。
教育普及部門の大賞、ふるさと“我田の森”では、荒廃した森林や棚田を整備し、地域の幼稚園の子どもたち、親子、大学の研究者などが訪れ、幅広い人々のつながりで活動を広められました。
子ども・学生部門の大賞、丹後を駆けるF探のチカラでは、高校生たちが地域の巨樹やタンポポの調査、川づくりの活動で探求を深められ活躍されました。
選考委員特別賞の多様なパートナーと希少種・普通種を守る活動では、事業所内の湧水池でオオモノサシトンボやゼニタナゴなどの地域絶滅を防ぐための環境改善に地道に取り組まれました。
選考委員特別賞の仙台市沿岸域での田圃環境再生の活動では、東日本大震災の津波被害からの震災復興の中で、メダカの生息環境保全を通じて、多くの生き物と人々の交流を甦らせようとされています。
これらの受賞活動がどれほど魅力的なものであるか、選考委員からの講評や、受賞者の皆さんの活動発表を直接お聞きできるのが大変楽しみです。本日は年度末のお忙しい中ご参集・ご視聴いただき、誠にありがとうございます。

【大賞】保護実践部門

結の森プロジェクト ー 環境と経済の好循環を目指して
コクヨ株式会社、四万十町森林組合
(高知県)

コクヨでは、文具やオフィス家具の製造販売と法人・個人向けの通販事業を展開されており、原材料の7割近くを紙類・木質類が占めていることから、間伐不足による森林機能低下の改善に取り組もうと、2006年に四万十町森林組合・高知県・四万十町と提携して「結の森プロジェクト」を約100haのモデル林からスタートされました。管理面積を5,425haまで拡大し、すべてFSC®森林管理認証を取得、CO2吸収量や植生、清流の調査を毎年実施されている成果をご発表くださいました。高知県にとくにご縁があったわけではなく、間伐から製品化まですべての工程に高品質を求めたところ、四万十町森林組合の高い技術力に出会われたそうです。結の森から生まれたオフィス家具は、17の市・町庁舎へ納入されたものの、社の原材料確保へのリンクにはまだ至っておらず、「今後は、オフィス家具の需要拡大や、間伐材を用いた文具の開発をめざしたい」と話されていました。

結の森プロジェクト ー 環境と経済の好循環を目指して
結の森プロジェクト ー 環境と経済の好循環を目指して
結の森プロジェクト ー 環境と経済の好循環を目指して

【大賞】教育普及部門

森と人、人と人が繋がり、創り伝える、ふるさと“我田の森”
里山クラブ可児
(岐阜県)

手入れが行き届かずに荒廃していた可児市久々利地区の里山約13haの整備・保全に取り組んで20年。森のようちえんによる幼児保育から、大学での授業やゼミ活動まで教育現場としての活用をはじめ、行政が行う市民対象イベントや講座、企業の社会貢献活動への協力や、里山体験ツアーの受け入れなど、我田の森を通じてさまざまなセクターとともに歩まれてきたようすをご紹介くださいました。その幅広い協働力に感銘を受けるとともに、会の設立時から毎月発行している会報は260号を超え、InstagramやYouTubeなどにタイムリーに投稿を続けるなど、その発信力の高さも目を見張るものがあります。教育普及部門の受賞にふさわしく、日頃から丁寧に撮影・記録されてきた写真や映像をもとに工夫を凝らして作成された動画で、効果的に活動をPRしてくださいました。

森と人、人と人が繋がり、創り伝える、ふるさと“我田の森”
森と人、人と人が繋がり、創り伝える、ふるさと“我田の森”
森と人、人と人が繋がり、創り伝える、ふるさと“我田の森”

【大賞】教育普及部門

丹後を駆けるF探のチカラ ー 地域の宝を探し、伝え、作り出す
京都府立宮津高等学校・宮津天橋高等学校フィールド探究部
(京都府)

丹後地域全域を対象とした巨樹や在来タンポポの調査、地域を流れる川の豊かさを取り戻す活動への挑戦など、人と自然の関わりを伝える財産を探し出し、その価値を高校生の目線で発信しているようすを、多くの部員が出席して元気よくご紹介くださいました。巨樹の調査結果を学会で発表したり、丹後半島の自然ガイドブックに執筆協力をしたり、自治体の広報誌に連載記事を企画するなど、活動成果の発信にも精力的に取り組まれています。発表動画は、3学期の終業式で全校生徒が視聴されたそうで、「次の始まりに向かって、生徒たちは大きな刺激を受けました」という嬉しい報告もいただきました。地域住民との交流を大切にしながら歩んでいる部活動で培われた経験や想いを、これからも世代や地域を越えた日本・地球の自然環境保全につなげていってほしいと思います。

丹後を駆けるF探のチカラ ー 地域の宝を探し、伝え、作り出す
丹後を駆けるF探のチカラ ー 地域の宝を探し、伝え、作り出す
丹後を駆けるF探のチカラ ー 地域の宝を探し、伝え、作り出す

【特別賞】選考委員特別賞

事業所内の湧水池で、多様なパートナーと希少種・普通種を守る
手賀沼水生生物研究会、日本電気株式会社
(千葉県)

NEC我孫子事業所の敷地内にある4つの湧水池で、何もせずに放っておいたら地域絶滅してしまうであろうオオモノサシトンボやゼニタナゴを守ろうと、試行錯誤を繰り返しながら、生育環境の整備や外来生物の駆除、個体の系統保存や繁殖の研究など多岐にわたる活動に、NECと手賀沼水生生物研究会が力を合わせて地道に取り組まれてきた実績をご発表くださいました。最近では、「コロナウィルス蔓延の影響で企業敷地内への外部来訪者が制限される中、行政・大学・研究機関・学会・NGO・市民など多くの方と連携しなければ保全目標を達成できないことを、社内に理解してもらうのに苦心した」などといったお話もご紹介いただきました。

事業所内の湧水池で、多様なパートナーと希少種・普通種を守る
事業所内の湧水池で、多様なパートナーと希少種・普通種を守る
事業所内の湧水池で、多様なパートナーと希少種・普通種を守る

【特別賞】選考委員特別賞

東日本大震災の津波を転機とした仙台沿岸域の田圃環境復元の試み
棟方有宗(宮城県淡水魚類研究会、宮城教育大学)、遠藤環境農園、カントリーパーク新浜
(宮城県)

3.11東日本大震災から11年。津波で被災した東北の沿岸域では、各地で大規模な復興工事が進められてきた中、仙台市の井土・東六郷・新浜地区で、かつての自然と地域のにぎわいを取り戻したいと、メダカの保護を指標に、農薬不使用の水田環境の再生に取り組まれているようすをご紹介くださいました。動物園等とともに取り組んだメダカ里親活動への参加者は2019年までに250組を超え、小学校の跡地にメダカ池をつくって親子観察会を開いたり、市から借り受けた集団移転跡地に田んぼビオトープエリアを再生するなど、地元の農家、研究者、公務員の方々などへと活動の輪を広げられています。「津波被災を一つの転機ととらえて、私たちなりの目線で、田んぼ環境の復元への試みを今も続けています」という力強い言葉が、とても印象的でした。

東日本大震災の津波を転機とした仙台沿岸域の田圃環境復元の試み
東日本大震災の津波を転機とした仙台沿岸域の田圃環境復元の試み
東日本大震災の津波を転機とした仙台沿岸域の田圃環境復元の試み

お問い合わせ先

公益財団法人 日本自然保護協会 日本自然保護大賞担当
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
award@nacsj.or.jp
TEL. 03-3553-4101 / FAX. 03-3553-0139