2019年3月30日(土)に満開の桜の中、東京・六本木の国際文化会館で「日本自然保護大賞2019」の授賞式および授賞記念シンポジウムを開催しました。午前に行った授与式では、保護実践、教育普及、子ども・学生の大賞3部門のほか、沼田眞賞1件、選考委員特別賞3件に賞状、盾、記念品を贈呈しました。午後の授賞記念シンポジウムには全国から102名が参加され、各受賞者による活動発表のほか、シンガーソングライターで本賞選考委員のイルカさんによる特別講演を行いました。小学6年生や高校生からシニアまで幅広い年代の方々が順に受賞活動を発表され、着実な保護成果や地域づくり計画への貢献、人の心を動かすまでの活動の魅力やみなぎる行動力に、来場者の皆さんは大きな感動・感銘を受け、もっと多くの人たちに発表を聞いてほしいといった声が多く寄せられました。
ヤマセミ一家の子育て観察をとおして、県の絶滅危惧種の保全をアピール
西垣 慎治郎くん
コウノトリの野生復帰に向けた取り組みが盛んな兵庫県豊岡市に住む小学6年生の西垣くんは、工事現場の土の仮置き場に巣をつくってしまったヤマセミを偶然発見。県の絶滅危惧種に指定されているヤマセミを、毎朝夜明け前から川に通って繁殖のようすを観察し、その記録を「第51回科学する但馬の子ども作品展」に出品した成果をご発表くださいました。観察のしかた、記録のとり方・まとめ方、写真や動画の撮影方法、生態の研究などをすべて独学で習得されたそうで、小学生とは思えないすばらしい才能と発表に、会場は感動と賛辞にあふれました。
「イタセンパラかるた」で、高校生が小学生に保護の大切さを伝える
愛知県立木曽川高等学校 総合実務部
絶滅の危機に瀕する淡水魚・イタセンパラの保全のために、高校生の自分たちが小学生にできることはないかと考えた愛知県立木曽川高等学校総合実務部のみなさん。イタセンパラのことを「正しく」「楽しく」学べる方法として思いついたのが、「イタセンパラかるた」を自主制作して、小学生を対象に「かるた大会」を実施することでした。卒業した3年生から想いを引き継がれた2年生と1年生の代表が元気よく活動発表され、かるたの絵札をもとに自作したしおり・缶バッジなどを展示・配布してくださいました。卒業生から在校生、高校生から小学生へしっかりと継承されている取り組みは、目を見張るものがありました。
グループ社員の想いを集め、自ら行動し、自然保護を促進
富士ゼロックス端数倶楽部
「ハスウが変える。ゼロから変える。」を合言葉に、社員・役員・派遣・退職者等有志の自発的な想いで、30年近く活動を続けられている富士ゼロックス端数倶楽部のみなさん。全国の事業所と関連会社7社で働く社員のうち、倶楽部会員は3,600名超にのぼるそうです。その中から約30名が運営委員に立候補され、環境保全のほか国際協力、福祉、災害など多岐にわたる分野で社会貢献活動に取り組まれています。活動発表をとおして、社風が築き上げた先駆的なCSR活動の大きな実績を知ることができました。
大阪湾最奥に残る自然海岸・甲子園浜を未来へ受け継ぐ
特定非営利活動法人 海浜の自然環境を守る会
日本の自然海岸は、全海岸線の50%ほどしか残っていないほど危機的な状況におかれており、干潟や浅海域の埋め立て、防潮堤や風力発電の建設、気候変動や汚染物質の流入による環境悪化など、さまざまな脅威が迫っています。そうした中、今回の発表は、埋め立て開発をかろうじて逃れた甲子園浜の存在を知り、浜を守り続ける人たちがいることの意味や、保全活動を継続することの大切さ・難しさについて、あらためて考える機会となりました。
みんなで取り組む「シカ食害で痛む三嶺の森」の保護と再生
三嶺の森をまもるみんなの会
シカの個体数増による環境悪化に悩む地域が多い中、早くからシカ食害で傷み始めた高知県・物部川源流部の三嶺の森で、10年間にのべ3,400名が汗を流して取り組んだ防鹿対策は、全長9.5kmにおよぶ柵の設置、8,500本もの樹皮食い防止のネット巻き、5,000㎡におよぶ土壌流出防止のマット張りでした。管理捕獲の効果もあって、対策を講じた場所と稜線部で着実に植生が回復しているという喜ばしい報告があった一方、広範囲かつ長期間にわたる課題であることがあらためて浮き彫りになりました。
世代の異なる3団体の連携体による水辺環境保全と次代の人づくり
鈴鹿・亀山地域親水団体連携体
(亀山の自然環境を愛する会、水辺づくりの会 鈴鹿川のうお座、魚と子どものネットワーク)
ともすれば、世代ごとに分断されがちな自然観察活動が少なくない中で、多世代で1団体を構成しようとせずに、世代の異なる3団体でゆるやかな連携体制をつくられた鈴鹿・亀山地域親水団体連携体は、地域活動の新しいモデルと言えるでしょう。授賞式にも、世代分担とのことで、10~30代からなる魚と子どものネットワークのみなさんが三重県からご出席くださいました。活動発表をとおして、若い方たちの人柄が3団体の絆をつなぐ重要な要素の一つとなっていることが伝わってきました。
士幌の原植生、カシワ林を後世に伝えるために
北海道士幌高等学校 環境専攻班・士幌環境講座
学術的に貴重な内陸部のカシワ林について、わずか10名の部員が2~3年間に1000ヶ所もの地点で植生調査を行い、町内にカシワ林が0.95%しか残されていないことを明らかにされました。のみならず、多岐にわたる保全・普及啓発活動に取り組まれ、活動の成果が「士幌町町づくり計画」に活用されるまでになりました。会場には膨大な量の調査報告書を展示してくださり、発表では多くの活動をテンポよく紹介され、来場者から士幌町の将来が楽しみとの声が多く寄せられました。
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