桜が満開の2018年3月31日(土)、「日本自然保護大賞」の授賞式と記念シンポジウムをYMCAアジア青少年センター(東京都千代田区)で開催しました。
授賞式では6団体・個人の方々58名が出席され、晴れ晴れしい笑顔での表彰となりました。午後のシンポジウムでは、受賞者・聴講者合わせて86名が集まり、受賞活動の講評と受賞者による活動発表を行いました。当日は受賞者によるブース展示や、コーヒーサーブなどもあり、自然保護活動の最前線にふさわしい活気に溢れたシンポジウムとなりました。
開会の挨拶では、選考委員長の日本自然保護協会理事長の亀山章より、多くの方々のご応募と、ご支援のご協力により日本自然保護大賞の開催ができましたこと、今年も全国より、受賞された皆様方にお集まりいただき授賞式と記念シンポジウムを開催できる運びとなったことへの御礼と、選考の総評を述べました。
博多湾・和白干潟の保全活動
和白干潟を守る会(福岡県)
保護実践部門で大賞に輝いた和白干潟を守る会(福岡県)は受賞活動である「博多湾・和白干潟の保全活動」について発表しました。和白干潟を守る会は豊かな自然を守り、未来の子どもたちに伝えていくために30年にわたって環境教育としての自然観察会やクリーン作戦、鳥類調査などを続けられ、さらにラムサール条約の登録に向けて前進を続ける活動が賞賛されました。当日のご発表では、自然観察会で使っている湿地の生きものの指人形を披露してくださり、参加者の方も親しみやすく和白干潟の生き物や保護活動の様子を知ることができました。
市民協働で取り組む“かいぼり”による井の頭池の自然再生
井の頭恩賜公園100年実行委員会(東京都)
教育普及部門で大賞に輝いた井の頭恩賜公園100年実行委員会(東京都)は、受賞活動である「市民協働で取り組む“かいぼり”による井の頭池の自然再生」について発表しました。井の頭恩賜公園100年実行委員会は、「かいぼり」を地域の市民団体などと連携して行い、武蔵野の水辺の生態系が蘇る成果を挙げただけでなく、市民ボランティア「かいぼり隊」の育成や普及展示施設「かいぼりステーション」の取り組みなどユニークな活動により、大きな普及効果を発揮したことが高く賞賛されました。当日は、20人以上のかいぼり隊の皆さんがおそろいの手ぬぐいで応援に来てくださり、普段「かいぼりステーション」で展示している在来魚のぬいぐるみや、かいぼりで復活した絶滅危惧種イノカシラフラスコモを展示・説明してくださいました。参加者の方も、活動の意義や成果を実際に知ることができたとともに、実行委員会のチームワークも実感できる機会となりました。
「わたしたちは土の道がいい!」子ども未来環境会議を開催
自然探険コロボックルくらぶ(埼玉県)
子ども・学生部門で大賞に輝いた自然探険コロボックルくらぶ(埼玉県)は、受賞活動である「『わたしたちは土の道がいい!』子ども未来環境会議を開催」の活動について発表しました。子ども達の自然体験などが行われてきた綾瀬川の河畔林「綾瀬の森」。その森を含む3.5 kmの土手の遊歩道が舗装されることを知った子ども達が、土の道にするために舗装した遊歩道と土の道との比較調査や「子ども未来環境会議」を開催して提案した結果、「綾瀬の森」の部分の遊歩道が土の道となることが決定しました。子ども達による積極的で自主的な活動とともに、1人1人が自分の言葉で意見を出している点が特に注目を集めました。さらに受賞決定後も土の遊歩道を延長してほしいと行政の会議で積極的に提案し、実現できたとの報告に会場から拍手が湧くとともに、子どもたちの頼もしい姿に明るい未来を予感させてくれました。
生物としてのヤシガニ、文化としてのヤシガニを未来につなぐ
藤田喜久氏(沖縄県)
沼田眞賞に輝いた藤田喜久さん(沖縄県)は、受賞活動である「生物としてのヤシガニ、文化としてのヤシガニを未来につなぐ」について発表しました。ヤシガニは、世界最大の陸棲甲殻類であり、古くから食料などとして沖縄の人々と関わりをもった生物です。絶滅危惧種にも指定され個体数減少が著しくなったヤシガニを守るために、藤田喜久さんは地道な研究に基づく保護活動を展開し、地域レベルでの保護条例の制定を実現させました。その活動は、地域の文化に根差した生き物を守るには、地域レベルで守る体制づくりが大切であることを参加者の方々に改めて示してくれました。
バードフレンドリー®コーヒー推進「1杯から始める渡り鳥保全」
住商フーズ株式会社(東京都)
選考委員特別賞に輝いた住商フーズ株式会社(東京都)は、受賞活動である「バードフレンドリーRコーヒー推進『1杯から始める渡り鳥保全』」について発表しました。自社の環境保全活動を推進するためにNGOの取り組みと協力し、日々のコーヒー1杯と渡り鳥の保全を結びつけ、誰の手にも届く自然保護の選択肢として積極的に国内流通を促進する取り組みは、生物多様性の主流化にもつながるとして高く評価されました。当日は会場にてコーヒーサーブもしてくださり、リラックスした雰囲気の中で味覚・聴覚・視覚から取り組みを知ることができました。
海岸漂着ゴミの回収と、その漂流ルートの解明
兵庫県立神戸商業高等学校 理科研究部(兵庫県)
選考委員特別賞に輝いた兵庫県立神戸商業高等学校 理科研究部(兵庫県)は、受賞活動である「海岸漂着ゴミの回収と、その漂流ルートの解明」について発表しました。高校の目の前の自然海岸がゴミであふれ、それを「なんとかしたい」という気持ちでゴミの回収を続けそれと合わせて、広域的な視点で漂流ルートを解明し、普及活動も展開する地道な活動を続けられました。その取り組みは、自然保護問題・環境問題を頭で考えるものではなく身体で取り組み、その上で考える大切さを改めて気づかせてくれました。
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