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2008.07.01(2018.06.27 更新)

【自然しらべ2008】見えてきたこと

調べる対象:カマキリ

集計結果

 

身近な場所で生物多様性の一端を知ろう

カマキリは、全国で見られ、みんなが知っている昆虫ではありますが、どこでどんな種類がみられるかといった基礎的な情報さえ限られたものしかなく、広く各地で調べられたことがありませんでした。
また、主に昆虫を食べる肉食で、環境との関係を知る指標となる生きものであるため、カマキリをとおして日本の自然のようすを知ろうと、日本で初めて全国一斉の市民調査を実施しました。とは言っても、一般に使えるような観察のマニュアルや種類の見分け表もなかったので、それらを新たに作るところから取り組みは始まりました。そして、カマキリの成虫を見つけたら、見分け表を使って種類を確かめた上で、カマキリの写真と観察記録(見つけた日、場所、周辺の環境など)を送ってもらうという方法で、7/1からスタートしました。

 

集まった観察情報は1,078件

8月になると全国的に成虫が見られるようになると言われるカマキリですが、例年に比べて成虫になる時期が遅かったため、調査期間を8/31から10/31まで延長したところ、47都道府県、沖縄県竹富島から北海道函館市まで690ヶ所から1,078件の観察情報が集まりました。
そのうち約半数の530件が関東南部(神奈川・千葉・東京・埼玉)から寄せられたものでした。発見するのが比較的難しいにもかかわらず、これだけの情報が集まったことは、意義のあることだったと思います。参加者から集まった記録は、種類の見誤りを修正して、より正確な観察記録としました。また、観察情報のネット投稿を受け付けたキッズgooの特設サイトには、約138,000回ほどのアクセスがありました。『読売ウイークリー』誌で連載された監修・岡田正哉さんによる「教えてカマキリ博士!」も、興味深い生態がいろいろ紹介されて好評でした。

 

カマキリの全国分布を見てみよう!

カマキリの種類が見分けられたもののうち、観察数が多かった4種を全国分布図に示しました。
いずれの種も、北海道・東北からの記録がほとんどありませんが、これはカマキリが南方系の昆虫であることに加え、これらの地域からの参加者が少なかったためと考えられます。なかでもハラビロカマキリやコカマキリなど、中小型で、林縁などの見つけにくい場所に生息する種では、その傾向が顕著でした。
それぞれに、これまでに知られている生息場所を囲んだ地域範囲を重ねたところ、分布が大きく異なるものはありませんでした。そう言うと目新しくないと感じるかもしれませんが、詳しい分布が明らかになっていないカマキリにとっては、今回の観察情報の一つ一つが新記録といってさしつかえないでしょう。また、今回これだけの分布図がを示せたことが今後の新たな情報の掘り起こしにもつながり、カマキリ研究において意義深いものといえます。

 

 

 

カマキリをとおして環境の変化を読みとろう

カマキリは主に肉食で、他の昆虫に比べて個体数が少ないため、環境の変化による影響を受けやすいものと考えられます。今回得られた情報をもとに年ごとの変化を追っていけば、環境指標としての役割を担うことができるでしょう。もしもある時からカマキリの姿を見かけなくなったら、それが環境悪化のサインになるはずです。自宅の庭などごく身近な場所でじっくり観察できるので、毎年続けて注意深く観察してみましょう。

 

環境別に見られたカマキリを比べてみると

 

 

カマキリは、海岸の草地、街中の植え込みから山間の林地までさまざまな環境で見られます。おそらく、餌となる小さな昆虫が生息していれば、植生や環境にはあまり左右されない生きものなのでしょう。
上の円グラフに、市街地、山・丘陵、草地、水田・湿地・河川敷、林地の5つの環境で見られたカマキリの種類とその割合を示しました。そのうち、市街地と山・丘陵という対比的な環境を比べてみると、一見あまり大きな差は見られません。ただし、市街地では山・丘陵よりハラビロカマキリの割合が増えています。
ハラビロカマキリは樹上性のため、この結果はちょっと意外に思いますが、おそらく山・丘陵では発見するのが難しかったのでしょう。一方、山・丘陵では市街地より「その他のカマキリ」の割合が増えています。これは、山・丘陵は市街地に比べて環境が多様なため、くらしぶりが異なる複数のカマキリが生息できることを表しているのでしょう。
また、草地ではコカマキリ、水田などの水辺ではチョウセンカマキリ、林地ではハラビロカマキリやヒメカマキリ(「その他」の多くを占めている)と、環境ごとに見られる頻度が高い種類が異なっています。これらのことから、オオカマキリはどの環境にも割合高く生息し、これに次ぐ種類が環境のタイプによって変わり、自然度が高くなると種類が増えるだけでなく、一角を占める勢力になることがわかました。
なお、今回の調査では山・丘陵や林地、水田・湿地・河川敷での観察情報が少なく、自宅や庭・公園など市街地からの報告が総観察数の約2/3を占めました。それが、実際に山・丘陵などでは生息数が少ないのか、あるいはカマキリの姿を見つけにくかったからなのかは定かではありません。自宅や庭・公園以外からの報告がもう少しあってもよさそうだと思われるので、それらの発見数を増やすためには、調査のしかたを改良する必要がありそうです。

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