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2006.07.01(2018.06.27 更新)

【自然しらべ2006】見えてきたこと

調べる対象:バッタ

バッタをとりあげた理由

2006年の自然しらべでは、バッタをとりあげました。バッタは、知名度の高い昆虫です。でも、身近な場所にどんなバッタがいるのかということは、ふだん意識しないものです。身近な草はらにひっそりと暮らしている――バッタはそんな生きものかもしれません。
バッタには、たくさんの種類がいます。どの種類も姿がよく似ていますが、好みの草はらはバッタの種類によって異なっています。
どこにどんなバッタが住んでいるのかを調べることによって、バッタをとおしてみた草はらの「質」を見ることができるかもしれません。これが今回、自然しらべでバッタを取り上げた理由です。


ショウリョウバッタ/橋本ひだまり倶楽部のみなさん(和歌山県)

 

多かったバッタ、少なかったバッタ

今回の自然しらべでは、7種のバッタを対象種としました(「グラフ・みつけたバッタ」参照)。全国から902件の報告をいただきました。のべ3322名の方が、ご参加くださいました。小さいお子さんや、親子での参加も多かったです。)

 

グラフ・みつけたバッタ

 

みつけたバッタのなかで多かったのは、ショウリョウバッタとオンブバッタでした。これらのバッタは実際、郊外だけでなく、都会の緑地に住んでいることもあります。


トノサマバッタ/新さん(長野県)

一方、報告がとても少なかったのは、カワラバッタです。カワラバッタは、石ころが広くたくさんあって、草がほとんど生えていない河原に住んでいます。そのためカワラバッタの住むことができる場所は限られています。また最近は、河川敷の環境変化によって、カワラバッタの住むことのできる場所が減っているといわれています。カワラバッタが住むことのできる環境が維持されるよう、目を向けていきたいものです。

対象種の他のバッタのうち、トノサマバッタとクルマバッタモドキはやや多く、ショウリョウバッタモドキとクルマバッタはやや少ないという結果がでました。前2種のバッタは、あるていど人による土地への撹乱がある場所でも住むことができます。後2種のバッタは、良好な草原(半自然草原)を好むバッタです。

 

バッタをとおして身近な自然に目を向けよう

今回の自然しらべでは、「こどもの頃にはバッタはたくさんいたのに、なかなか見つからなかった」という感想をたくさんいただきました。また、除草剤や殺虫剤などの農薬の散布が、バッタや草はらに悪い影響を与えているのではないか、という意見もたくさん寄せられました。バッタの住める環境は、必ずしも安泰ではないようです。
バッタが身近な生きものであり続けられるためにも、身近な自然である草はらを、もう一度見直していきたいものです。


こどもエコクラブ「かんさつクラブシャイン」のみなさん(鹿児島県)

 

バッタから見えてくる草はらの「自然度」

今回対象とした7種のバッタたちは、草の高さと、草が地面をおおっている程度とによって、大まかに住んでいる環境を区分することができます。

▲植生からみたバッタのすみかの区分

 

このようなバッタの特徴をとおして、「自然度」を考えました。餌の草が生えていればどこにでも住めるオンブバッタを「自然度1」、人の影響がやや強い草はらでも住めるショウリョウバッタ、クルマバッタモドキ、トノサマバッタを「自然度2」、良好な草原(半自然草原)を好むクルマバッタとショウリョウバッタモドキを「自然度3」としました。川の自然の作用によってできる河原に依存しているカワラバッタは、以上の自然度とは別にしました。

  • バッタ自然度0:バッタが見つからなかった場所
  • バッタ自然度1:オンブバッタだけがいた場所
  • バッタ自然度2:ショウリョウバッタ、トノサマバッタ、クルマバッタモドキのどれかがいた場所
  • バッタ自然度3:ショウリョウバッタモドキ、クルマバッタのどちらかがいた場所
  • バッタ自然度・河原:カワラバッタがいた場所
  • 対象外のバッタがいた場所

今回寄せられた結果からは、「自然度2」に該当するバッタたちがみつかったケースが多かったです(「右図:バッタ自然度グラフ」参照)。また「自然度3」の場所は、東京・横浜・大阪・神戸などの大都市周辺にもまだあることがわかってきました(「バッタ自然度マップ」参照)。特殊な環境に住むカワラバッタは、中部地方を中心にして、おもに東北から近畿地方にかけて健在であることがわかりました(カワラバッタとして報告された記録のなかには、別のバッタも含まれている可能性がありますが、ごく大まかにみると実際の分布域のようすが示されていると思います)。
以上のように今回の調査をとおして、バッタが住める環境が日本各地にまだまだ残っていることがわかりました。一方では、まったくみつからなかったという結果も寄せられています。

 

▼バッタ自然度マップ

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