2022.08.12(2023.09.20 更新)
四国ツキノワグマ保護プロジェクト 活動支援2000万円達成のお礼とご報告
報告
専門度:
テーマ:森林保全絶滅危惧種里山の保全生息環境保全
フィールド:森林
四国のツキノワグマの保護活動について、2020~2022年の3年間の活動に必要な資金として皆様にご支援をお願いしていた2000万円を、この度、達成することができました。皆様からのご支援に心より感謝を致します。本当にありがとうございました。
2017年度からの3年間の調査で、四国に生息するツキノワグマの個体数が20頭程度あることが明らかになりました。一方で、地域の方々へのアンケート結果では、クマの現状や、正しい生態を知らない中で、多くの方がクマを怖いと感じていることも明らかになりました。
そこで、2020年度からは、地域に密着した普及啓発活動を進め、クマが生息することが地域の方々にとっての誇りになることを目指して活動を進めてきました。予期せぬコロナ禍での活動になりましたが、皆様のご支援のお陰で、地元の四国自然史科学研究センターが徳島県那賀町木頭地区に拠点を構え、地域の方々とのコミュニケーションを深めることができました。そして、木頭地区において、地域の拠点である「木頭図書館」がクマをメインキャラクターに採用し、全国から注目を集める「未来コンビニ」でISLAND BEAR Friendly商品の販売が開始されました。普及啓発パネルも9箇所で常設されています。これらは、地域の方々が日常的にクマの情報に接するようになり、来訪者とクマの話をする機会が生まれるという意味で、とても重要なことだと考えています。
皆様のご支援によって、四国のツキノワグマ保護活動は着実に前進しています。一方で、20頭程の個体数が直ぐに増加するわけではありません。継続した取り組みが必要です。現在、これまでの成果を基盤として、2030年に向けた新たな目標設定と活動計画の検討をはじめています。引き続き、四国自然史科学研究センター、日本クマネットワークとの協働を継続し、展開させていく予定です。
四国のツキノワグマを絶滅させないために、引き続き皆様からのご支援を、何卒よろしくお願い申し上げます。
3団体からのご挨拶
四国自然史科学研究センター・安藤喬平
たくさんのご支援をありがとうございました。四国のクマが存続の危機にあることを知り、地元から保全活動に参加してくれる方が着実に増えています。皆さん、より良い自然環境を後世に残したいと願う人たちです。
地域との連携はまだ始まったばかりですが、四国のクマの絶滅回避、そして共存のための方法を、地域と一緒に考え実行する機会を作っていきたいと思います。引き続き四国のクマ保全に注目していただければ嬉しいです。
日本クマネットワーク代表・佐藤喜和
多くの方々からのご支援,心より感謝申し上げます。これまでの活動を通じて,支援や協働の輪が,全国的にも,また生息地周辺の地域にも広がりはじめていることを実感しています。
クマの生息数や生息環境は一朝一夕に改善されるわけではありませんが,クマが生息する豊かな森が地域の将来に繋がることを願い,今後も活動を続けていきます。引き続きのご支援をよろしくお願いします。
日本自然保護協会・出島誠一
ご支援本当にありがとうございます。現時点でクマの分布域の拡大傾向を確認できたことと、地域の協力者が少しずつ増えていることが、これまでの活動の成果です。
私はまだ四国でクマを見たことがありません。センサーカメラの写真や、GPSのデータを見るだけなのですが、愛着のようなものを持ち始めていることを感じます。近い将来、個体数の増加傾向を確認できる日を目指して活動を続けます。
2020-21年の活動成果
1.地域に密着した普及啓発
クマの生息周辺で普及啓発パネルの常設個所が9箇所、地域の各種関連のイベントへの情報発信出展を9回、地域の集まりでの普及活動7回、新聞掲載11回、「しこくまニュースレター」の発行・配布4回、ドキュメンタリー映像「人と熊 四国の森に生きる」製作、オンラインシンポジウム開催2回、情報発信ホームページ開設と精力的に活動を進んでいます。また、2020年度にはクマの生息が確認されている8市町村2400世帯に郵送アンケートを実施しています。今後2022年度にも実施して、普及啓発活動の成果を定量的に測定する予定です。
▲地域の催事での普及啓発
▲野外イベント等にも積極的に出店しています
▲「しこくまニュースレター」は年2回発行し、自治体広報誌に同封して頂いている
▲ドキュメンタリー映像「熊と人 四国の森に生きる」は、2021年12月12日開催のオンラインシンポジウムの動画として公開されています。4:24から30分間です。※画像をクリックしますと別ウインドウでご視聴いただけます(YouTube)
▲那賀町木頭「未来コンビニ」に常設された普及啓発パネル
▲高校生への普及家発活動
2.科学的な保全対策の推進
ツキノワグマの生息状況のモニタリング調査も継続しています。2017年以前は生息が確認できなかった地域に2019年以降新たに定着し分布が拡大していることが確認されました。個体数の増加のためには一定程度の分布拡大が必要と考えられることから嬉しいニュースです。現在、国有林を中心に新たな分布エリアでの生息地保全をどのように進めるか、検討を開始しています。
また、クマの生息地の保全の観点では、地域で森づくり活動を実施している方々との連携を深めています。長年ニホンジカの対策と、自然植生の保全を進めてきた「三嶺の自然を守る会」と連携して、子供たちと一緒にブナやミズナラ等の植栽を行いました。また、木頭地区の「山桜プロジェクト」とも連携し、ヤマザクラ等の植栽を行っています。
▲胸部の月の輪の形によって個体識別をしています。2021年度は17頭が確認されました
▲ミズナラを植栽して、それを柵で覆う。剣山系はシカの摂食によって下草が無い状況です
3.クマをシンボルにした商品開発等
クマと人との軋轢予防対策の中で採れたハチミツや、木頭杉を使った箸など、クマをシンボルとして地域振興の一旦を担えないかと考えてきました。その後、奥槍戸山の家でステッカー、木頭図書館でキーホルダー、エコバック、しおり、がクマをシンボルにして制作されました。それらの施設を ウェブサイトの「ISLAND BEAR Freidlyマップ」として掲載しています。ぜひ四国のこれらの施設を訪れてみて下さい!
▲ハチミツと、木頭杉の五稜箸は「未来コンビニ」でも販売
▲奥槍戸山の家では、ハチミツやオリジナルステッカー・Tシャツも販売しています
▲木頭図書館では、ツキノワグマのオリジナルトートバックを販売
▲ウェブサイトも開設され、ISLAND BEAR friendlyスポットマップも掲載
関連過去記事リンク
2020-21年の活動の様子を動画で見られます!
四国のツキノワグマを救え!オンライン生会議
公開日:2021年4月22日
時間:12分/ショートバージョン
76分/フルバージョンはこちら
https://youtu.be/6ChgAIu2NKQ
活動報告/2021春
公開日:2021年10月19日
時間:4分
シンポジウム「四国のチベット」木頭より~クマと歩む地域のミライを考える
▲画像をクリックしますと別ウインドウでご視聴いただけます(YouTube)
公開日:2021年12月12日
時間:156分
※4:24~30分間は「熊と人 四国の森に生きる」
以上
NACS-Jでは、日本クマネットワーク、四国自然史科学研究センターと協力して「四国ツキノワグマ保護活動」を進めています。世界で最も小さい島に生息するツキノワグマを守り続けるために、皆さまからのご支援をよろしくお願い致します。