2024.04.03(2024.04.04 更新)
NACS-J市民カレッジ118 「生物多様性とテクノロジー ~ 最新技術活用でここまで分かる!自然環境調査の最前線」を開催しました
三菱商事株式会社
対象:一般市民学生
貢献:愛知ターゲット自然の守り手拡大日本の絶滅危惧種を守るSDGs
日本自然保護協会(以下、NACS-J)は、一人でも多くの方に日本の自然の美しさや大切さ、尊さ、守ることの大切さを伝えたいという思いから、NACS-Jに集う各分野のスペシャリストが講師を務めるオープンカレッジ「NACS-J市民カレッジ」(以下、Nカレ)を開催しています。
118回目のNカレは、最新技術を活用した自然環境調査について学びました。
AI(人工知能)、ドローン、環境DNA分析……、今、さまざまな最新技術が自然環境調査に活用されています。
今回のNACS-J市民カレッジ(以下、Nカレ)は、野生動物のカメラトラップの調査研究を専門とする国立環境研究所の深澤圭太氏を講師に迎え、自然環境調査にどのような技術が使われ、何が分かるようになったのか詳しく解説いただき、参加者の皆さまと学びました。
まず、ドローンの活用について紹介いただきました。ドローンを活用した自然環境調査の進化はものすごく、すでに林間を木にぶつからないよう自動制御しながら飛行するドローンが登場。森の上からの撮影が可能なドローンを組み合わせることで森林の構成を詳細に把握できるようになり、赤外線カメラをドローンに搭載することで、空中からでも動物の存在を検知できるようになりました。さらに、ドローンに水を採取する機能を付加することで、人がアクセス困難な地域の水域調査も可能となり、さまざまな形でドローン活用が進んでいます。
次に紹介されたのは、環境DNA調査です。水中に含まれている生物のDNAを採取・解析することで、どんな生きものがいるかが分かるようになりました。例えば、外来種のブルーギルの対策のための生息調査では、各地の池の水を採取してブルーギルのDNAを検出していくことで、ブルーギルがどこに生息しているかを把握しているそうです。特定の種の把握だけでなく、複数の生きものも把握可能で、1か所の水を採取して、その中に含まれているDNAから、何種類、どんな生きものがいるかということも分かるようになってきています。
鳥の調査には音響技術を活用したモニタリングも進んでいるそうです。
深澤氏の専門でもあるセンサーカメラを活用したカメラトラップ調査についても解説いただきました。まず、森に設置したセンサーカメラで撮影されたさまざまな動画を見せてくださいました。イノシシの群れや、ノネコとタヌキが対峙する様子、キジバトとニホンリスの争いの様子、ヒヨドリを捕食するハイタカの動画など、なかなか直接見ることが難しいような動物たちの行動を、センサーカメラは記録してくれます。
カメラトラップ調査で大変なのは、大量に撮影された写真や動画の解析。かつては目視で一枚一枚確認していく必要がありましたが、今はAIによって動物の自動検出が可能となり、その精度も日々向上しています。
現在、センサーカメラは個人で購入できる安価なものもあり、一般の人でも利用できる自動検出ソフトも無料で公開されはじめているので、ぜひ多くの人にカメラトラップでの野生動物観察を楽しんでみてほしいと深澤さん。
最後に、国際的に進んでいるカメラトラップ調査「Snapshot」というプロジェクトの案内をいただきました。これはグローバルな野生動物の生息調査で、2023年度には深澤氏ら日本の研究者が参加し、2024年度には一般からの参加も募集される予定だそうです。4月から募集開始となり、詳細は下記ウェブサイトで公開されるので、ぜひ皆さんもご参加ください。
NACS-Jでも、株式会社ニコン(以下、ニコン)とAIを使った動物画像の自動検出アプリ※を開発してモニタリング調査に活かすなど、さまざまな技術を積極的に自然保護活動に取り入れています。ぜひご注目ください。
※ニコンと開発したアプリの紹介
https://www.nacsj.or.jp/partner/2022/07/31203/
次回のNACS-J市民カレッジもお楽しみに。
※ Nカレは、会員、寄付サポーターとしてNACS-Jの活動を支えてくださっている三菱商事株式会社と一緒に開催しています。
お問い合わせ
03-3553-4101 n-college@nacsj.or.j
日本自然保護協会(NACS-J) Nカレ担当