2023.02.06(2023.02.06 更新)
NACS-J市民カレッジ109「人は生きものをどうみているか?~生物多様性保全と動物観~」を開催しました
三菱商事株式会社
対象:一般市民学生
貢献:自然の守り手拡大日本の絶滅危惧種を守る壊れそうな自然を守るSDGs
日本自然保護協会(以下、NACS-J)は、一人でも多くの方に日本の自然の美しさや大切さ、尊さ、守ることの大切さを伝えたいという思いから、NACS-Jに集う各分野のスペシャリストが講師を務めるオープンカレッジ「NACS-J市民カレッジ」(以下、Nカレ)を開催しています。
109回目のNカレは、「人は生きものをどうみているか?~生物多様性保全と動物観~」というテーマでNACS-J理事長の亀山章先生にお話いただきました。
▲講師の亀山章先生。造園学や景観生態学などを専門とされている一方、日本の動物観研究においても第一線でご活躍されている。
「動物観」という言葉は少し耳慣れないですが、どういう概念かご存知でしょうか。
簡単に言うと、動物に対する人間の見方のことです。わかりやすい例として、亀山先生が1990年代にイギリスへ赴任していた時の「クジラ」に関するエピソードをご紹介頂きました。
当時のイギリスでは、日本の捕鯨事業をバッシングする動きがあり、新聞広告の一面で取り上げられていることもありました。欧米の動物観では、クジラは大型哺乳類で脳の発達した賢い生き物だと捉えられていて、それを殺す日本人は悪だと考えていました。
その広告を見た亀山先生は、「クジラなんて大きな魚だと思うけどなぁ」という感想を抱き、現地の動物観と自分たち日本人の動物観に大きな違いがあることに気づかれました。
これが、亀山先生が日本に戻られてから動物観研究を始められるきっかけとなったようです。
▲江戸時代の東京。「山くじら」や芋の丸焼きを扱う飲食店が並んでいる。
興味深いお話が次々と出てきましたが、例えばこちらの「山くじら」と呼ばれる食材が江戸時代の日本では庶民に嗜まれていました。実はこれ、イノシシ肉のことだそうです。
なぜそのように呼ばれるようになったのか。その訳には当時の動物観が深く関わっていました。詳細は割愛しますが、その当時、四足の獣は食べてはいけないもので、魚は食べても大丈夫なものと考えられていました。
そして、クジラは魚の仲間だと当時の日本人は捉えていました。なので、山にいるクジラであれば食べても大丈夫ということで、屁理屈のようですが美味しい猪肉を食べるために当時の人々が閃いた論理の結果が「山くじら」であったようです。
そんな中世日本の動物観がどのように作られたかについて、当時の仏教や政治が深く影響していることを詳しく解説して頂きました。また、現代においては「法定動物」が人々の動物観に強い影響を与えているというお話がありました。
「法定動物」とは法律に基づいて扱いが定められている動物のことで、法律によって保護対象になると大事に扱われるようになったり、逆に駆除対象になると邪険にされたりと、法定動物になると人々の動物観がガラリと変わることがあります。
具体例として、特定外来生物に指定されたアライグマなど、自然保護の現場と縁の深い動物たちも少なくないことをご紹介頂きました。
最後に亀山先生より、「動物観は漠然としたものと思われるけど、確実に捉えられるようになってきている。自然保護を進めていく上で、自然観と一緒に動物観も考えていくのが大事だと思います。」と一言頂きました。
その後も多数の質問が寄せられ、盛況のうちに終えることが出来ました。
感想の一部をご紹介
- 日本の歴史からみる動物観、今の動物観、変わってきた経緯を知ることができて面白かったです。
- 動物観の違いから自然保護のあり方を考える視点は新鮮でした。
- 動物観が多様に変化する世の中で、自然保護を進める難しさを感じました。
- 動物観は個人、個人が勝手に持っているという気がしていたが、古来からの宗教の影響、そして、現在でも社会から作られているという所で、外側の影響がこれほど大きいのか!と驚いた。今日のお話も面白く聞かせて頂き感謝です。
ご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。次回のNACS-J市民カレッジもお楽しみに!
※ Nカレは、会員、寄付サポーターとしてNACS-Jの活動を支えてくださっている三菱商事株式会社と一緒に開催しています。
お問い合わせ
03-3553-4101 n-college@nacsj.or.j
日本自然保護協会(NACS-J) Nカレ担当