わたしたちのミッション
暮らしを支える自然の豊かさを守り、その価値を広め、自然とともにある社会を実現する。
わたしたちのスローガン
「自然のちからで、明日をひらく。」
込めた思い:自然保護活動により社会の課題を解決するNGOを目指しています。
わたしたちの描く未来とビジョン
わたしたちは、日々の暮らしや経済の基盤となり、人々の心や地域の文化の拠り所である大切な自然を守り、人と自然が共に生き、美しく豊かな自然に囲まれて、笑顔で生活できる社会の構築に貢献します。
全国の会員・支援者とともに、自然への理解を広め、自然と共にある暮らしとその喜びを未来に継承します。
▲自然の見方がわかる自然観察会
▲自然観察指導員講習会
▲里山の身近な自然を市民調査で守る(左)、身近なチョウやトンボも危機的状況(右)
▲保護活動が遅れている海の環境を独自に調査
▲絶滅危惧種イヌワシや地域個体群の絶滅が危惧される四国のツキノワグマを指標に健全な森林生態系を保全
中期事業計画2020-2024(2020.3月策定)
社会課題と自然保護の課題
2020年は生物多様性条約愛知目標の達成年ですが、生物多様性の劣化は進み続けています。
わが国や世界の貴重な自然を守り、自然と共にある持続的な暮らしの構築を目指し、自然保護の立場から社会課題への解決策を打ち出すことを目的に、わたしたちは2020年からの5カ年計画を作成しました。
2030年までの10年間に日本の自然に大きな変化をもたらす2大要因とされるのは「気候変動」と「人口減少・少子高齢化」です。さらに、自然破壊が遠因といわれる新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックにより、人々の価値観や行動が変化しています。
社会課題と自然保護の課題が密接にかかわり複雑化する時代の中で、本計画は、こうした社会や自然の変化の状況を毎年分析しながら、必要に応じて改訂していきます。
増え続ける自然災害に対し、防災、減災の観点から適地適策の検討が必要。
ヒアリ。国際自然保護連合(IUCN)の「侵略的外来種ワースト100」に指定されている。(写真:www.AntWeb.org)
気候変動をもたらす激しい気象変化は、高山帯・草地・氾濫原・沿岸や砂浜などの脆弱な生態系の急激な変化や、大規模な自然災害の増大につながります。生物多様性保全と防災インフラの整備や再生可能エネルギー推進を両立させるには、適切な土地利用区分の検討が必要です。
農山村の高齢化や人口減少による耕作放棄は、生物多様性に富んだ里山の減少をもたらします。物流のグローバル化の加速に伴う、侵略的外来生物や新たな感染症の蔓延も危惧されます。また、少子高齢化は全国の保全活動の担い手の高齢化にもつながります。保全活動や保全の担い手を支える、消費行動や原材料調達などを促進させるしくみづくりも必要です。
自然の豊かさや人と自然の適切なつながりを損なうことは、社会・経済の基盤を損なう脅威です。この認識を広め、人々の行動を変化させていくためには、自然と人のつながりを実感する機会や親子世代の自然体験機会の価値の再認識、無配慮な消費行動といったライフスタイルの見直しが、喫緊の課題です。
わたしたちの活動の3つの柱
このような課題に対して、わたしたちは、全国的な自然保護問題の解決と支援の活動を根幹におき、さまざまな分野のステークホルダーとともに社会課題を解決する活動を行います。
▲SDGs17目標のうち、6,13,14,15の環境関連4目標は社会、経済分野の目標の基盤となっている。
活動は、以下の3つを柱として展開します。
地域の団体だけでは解決しない全国規模の自然破壊、各地に共通する自然保護課題にナショナルNGOとして取り組みます。さらに、これまでの各地の保護活動のネットワーク、地域の人材と連携した直接活動のほか、法制度やしくみづくりによる全国レベルの支援を強化します。
多くの地域では、気候変動の影響の増大、自然災害の増加、人口減少と少子高齢化、人と自然のつながりの希薄化、グローバル化など、様々な脅威にさらされています。これら地域を取り巻く様々な脅威や変化に対し、Nature-based Solutions(自然を基盤とした解決策)を打ち出し、自然と共生した持続的な地域モデルの事例をつくります。
子育て世代の自然体験の急減や人と自然のつながりを実感する機会の減少に歯止めをかけるため、自然の価値と恵みを伝える自然観察指導員など、多様な守り手を増やします。さらに企業、地元団体、自治体と連携し、自然とふれあいながら、自然の大切さを実感できる場と機会を大幅に増やします。
主な活動の取り組み方針
気候変動やコロナ禍など、地球規模の影響が人と自然の関わり方やライフスタイル、行動様式をも変化させています。
主な活動の取り組み方針は、社会情勢・自然の変化状況を毎年分析しながら、必要に応じて改訂していきます。
1.日本の海岸の生態系を守るしくみづくり~海の保全地域をつくり広げる
日本の海岸線は3万4000km、世界第6位の長さを誇り、わたしたちは海の自然からの恵みを利用し続けてきました。しかし、陸域に比べ海岸域の自然保護は、大変遅れています。海岸の生態系を守るしくみとして、海の保全地域の新設、国立公園などの海域への拡大を推進します。
▲日本で初めてHopeSpotに認定された辺野古・大浦湾のアオサンゴ。
▲愛知県表浜の自然海岸で産卵するアカウミガメ。(写真:NPO法人表浜ネットワーク)
辺野古大浦湾のアオサンゴ・長島洞窟の天然記念物指定やHope Spot 認定を活かした重要海域のアピールを通じて海岸の価値を高め、海の保全地域など守るしくみをつくっていきます。
砂浜生態系が保護対象として社会に認知されるよう、科学的根拠を示し愛知県表浜の保全地域化を進めます。
国交省の海岸法、海岸保全区域での生物多様性保全の内部目標化を進めます。
2.人と里山の自然のよりよい関係の再構築~里山の生物多様性を守り持続的利用につなげる
身近な風景としての里山から普通種が衰退し、地域絶滅を起こす状況に歯止めをかけ、人と里山の自然のよりよい関係を再構築するため、重要な里山の保全の事例、保全事業を増やします。
▲里地里山の複雑な生態系の変化をとらえ保全活動につなげるため、環境省の「モニタリングサイト1000里地調査」に取り組んでいる。調査は、地元の市民団体等の「市民」が主体となり、全国200カ所以上の調査サイトで植物相、鳥類、哺乳類、チョウ類、水環境を調べ、保全活動に活かしている。
▲日本の里山のチョウやホタルの急減が、モニタリングサイト1000里地調査の結果から明らかとなった、世界の傾向と同様に、日本でも「普通種」の危機が深まっていることが浮き彫りとなった。
重要な里山で保全活動を行う市民団体・企業等の守り手の調査活動を支援し推進します。
ナショナルレベルの里山保全政策へ、「モニタリングサイト1000里地調査」の結果を活用し提言します。
調査データに基づく保全計画・管理指針作成を支援し、自治体の土地利用計画・生物多様性地域戦略等の保全計画への活用事例や、多面的機能発揮促進事業の活用など、農地での生物多様性保全活動の支援事例を増やします。
3.気候変動にかかわる防災対策、再生可能エネルギーと自然保護が両立する推進策を検討する
気候変動への対策に貢献するため、防災対策とエネルギー転換を、自然保護と整合させながら推進する方策を検討します。
▲世界平均地上気温は、21世紀末には20世紀末と比べて、RCP2.6シナリオでは0.3~1.7℃、RCP4.5シナリオでは1.1~2.6℃、RCP6.0シナリオでは1.4~3.1℃、RCP8.5シナリオでは2.6~4.8℃の範囲に入る可能性が高いと予測されている。IPCC第5次評価報告書図SPM7(a)より。
▲イギリス、ティーサイド風力発電所。イギリスでは政府予算で行った調査で得られた数千の鳥類の行動データを洋上風力の影響予測にも役立てている。
気候変動への対策として、防災対策と再生可能エネルギー事業について情報収集を行い、自然保護の視点で解決できる課題整理と今後の活動の戦略案をつくります。
C02吸収源としての森林、草原、湿原、海草藻場、サンゴ礁など、自然環境を保全する意義をアピールします。
自然保護と再生可能エネルギー施設や防災施設開発適地とのコンフリクト問題を解決し、生態系を活かした防災や気候変動への対策を行政、事業者、関係者にはたらきかけます。
4.森林生態系の絶滅危惧種保全と地域振興の両立四国のツキノワグマの絶滅を回避する
四国のツキノワグマ地域個体群の絶滅回避のため科学的保全策と地域への普及啓発を進め、地域振興と絶滅危惧種保全を一体として進めます。
▲四国に生息するツキノワグマの生息確認数はわずか十数頭。20年後に絶滅する確率は6割以上。
▲無人センサーカメラ調査で、四国のツキノワグマの生息状況を調べる。(写真:四国自然史科学研究センター)
地域でツキノワグマの保全に専念できる専門職員を雇用する支援を行い、3年間でクマの生息地周辺の全小中学校で普及啓発授業を実施します。
科学的な根拠に裏付けられた給餌による保全策など、個体数の増加要因を解明するアプローチを検討します。
長期的な生息地保全として、人工林の広葉樹林化(ミズナラの植栽等)を実施します。
ISLAND BEAR グッズの充実や、地元木材、ハチミツなどの商品開発を行い、商品やサービスを通じた都市と地域の関係の強化を進めます。
5.森林から里地の自然を活かした地域づくりモデル赤谷プロジェクト・みなかみエコパーク
群馬県みなかみ町の赤谷の森で先進的な生態系管理・絶滅危惧種保全策を行い、自然を活かした地域産業で雇用創出や地域へのUターン、Iターンなど関係人口を増やします。
▲赤谷プロジェクトの活動地、群馬県旧三国街道・三国峠を歩こう!ウォーキングマップ。
▲森林生態系の頂点をなすイヌワシの幼鳥。
▲赤谷プロジェクトエリアでは多数の環境教育活動が行われている。
イヌワシ生息地保全の先進地、ニホンジカ低密度管理、治山ダム中央部撤去などの実績を積み上げつつ、他地域へ発信します。
エコツーリズムを地域づくりの一つとして確立し、みなかみ町の産業の柱である「観光」に貢献します。
町内の小中学校等での体系的な教育活動に注力し、近い将来に赤谷プロジェクトとみなかみユネスコエコパークを活かした地域づくりをすすめる基盤をつくります。
ニホンジカの増加を止め、害獣から森の住人へご支援をお願いします!
6.海の自然を活かした持続的な沿岸漁業のモデルづくり~山口県上関町を日本初の海のエコパークに
瀬戸内海本来の生物多様性が残る唯一の「奇跡の海」の自然を活かした、持続的な沿岸漁業のモデルづくりのため、日本初の海のエコパーク登録を目指します。
▲「奇跡の海」と呼ばれる山口県の上関。今もなお瀬戸内海古来の姿を見せる海域には、独自で希少な生態系が多く残されている。
▲山口県上関の豊かな海の生態系は、魚たちのゆりかごであることを明らかにする。
▲カンムリウミスズメ。世界に5,000 ~9,000羽しか生息していない希少な鳥ですが、上関の海は世界で唯一、一年中この鳥を観察することができる。(撮影:山本尚佳)
現在未利用の海藻アカモクの採取と購入を通じて漁業者との関係を深め、並行してユネスコエコパーク登録への理解を広めます。
全国的には資源枯渇の懸念があるアカモクの持続的な利用について、現在進めている刈り取り試験結果を活かして発信します。
上関海域での魚類の多様性調査を行い、保全のための科学的な根拠をつくります。
7.自然と人とのつながりの実感・理解を広め活動を支える~ふれあいの場と機会・守り手を増やす
親子世代での自然体験の急減や人と自然のつながりを実感する機会の減少に歯止めをかけるため、自然観察指導員などの、多様な守り手を増やし、自然とふれあう場と機会を大幅に増やします。
▲いつでもどこでも誰とでも。五感を使った自然観察で自然の見方や新たな発見を体験する。
▲これまで自然観察指導員講習会で3万人の自然観察指導員が誕生。自然観察指導員40周年全国大会では、全国から指導員が集合し、多様な分野での活動を発表。
多様化する時代に活躍する自然観察指導員を増やすために、介護福祉や幼児教育、貧困家庭対策等、多様な分野で活動する指導員情報を発信し、研修の場と支援体制をつくります。
情報通信技術の活用や企業、地元団体、自治体との連携により、身近な自然への関心を高め、自然とのふれあいの場を増やします。
8.日常生活の中に自然保護に貢献するしくみを構築する~ライフスタイルの提案
企業との連携を促進し、製品やサービスなどに自然と社会をより良くするしくみを導入します。それらの製品やサービスの利用を促進することで、暮らしのなかで自然保護に貢献する社会を構築していきます。
▲保護活動地の農産品を使った製品づくりや、保護活動に貢献する商品開発への協力を深める
▲新たなテクノロジーを持つ企業と協働し、自然保護活動に楽しく参加できるしくみをつくる。
▲企業との協働で保護活動に参加される方々を増やし、現場の社会課題の解決に協力する。
企業との協働を深化させ、社会と自然をより良くする要素を含めた製品やサービスなどの企画、提案を行い実施します。
社会的弱者・無関心層が享受できる自然とのふれあい、自然保護への共感の場を増やします。
自然保護に貢献したい企業や消費者に活動現場を紹介し、マンパワーや資金、技術で支援します。