2023.07.26(2023.07.27 更新)
- 東京都八王子市
- 2023年7月1日
【報告】長池公園でモニ1000里地調査講習会・サイト視察会・交流会を開催しました!
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こんにちは、日本自然保護協会でインターンシップをしています東京大学大学院1年生の溝上紗雪です。
7月1日(土)に東京都八王子市にある長池公園でモニタリングサイト1000里地調査講習会・サイト視察会・交流会を開催しました。
今回は調査講習会・サイト視察会の内容を一部ご紹介します!
モニタリングサイト1000とは?
モニタリングサイト1000(以下モニ1000)とは、研究者や市民の力を借りながら日本全国の生態系の状態を長期的にモニタリングする環境省事業です。モニタリング対象となる生態系が高山帯や沿岸域にわたるまでいくつか設定されており、すべての調査サイトを合わせると1000サイトほどになります。
日本自然保護協会では、モニ1000のうち、全国の市民調査員が主体となって調査を行う里地調査の事務局を務めています。モニ1000は1期5年としていますが、里地調査は昨年度で4期目が終わり、今年度から5期目に入りました。この間、全国から寄せられた調査結果から、里山でよく見かけられた動植物が急速に減少していることなどが明らかになってきました。
事務局では、全国の調査員の皆さんのスキルアップとモチベーションアップを目的とし,調査手法をお伝えする調査講習会や、調査員同士の情報交換や交流の場としての交流会を定期的に開催しています。今回の講習会では南は香川、北は北海道まで、全国各地から33名もの方々に参加していただきました。今期から里地調査に新たに参画した新規サイトからも、6名の方にご参加いただきました。
長池公園とは?
本講習会の会場となった長池公園は、東京都八王子市の閑静な住宅街の中にある都市公園です。ニュータウン開発から逃れた公園内には貴重な里山環境が残っており、様々な人が様々な形で公園管理に関わり生物多様性保全に寄与しています。
長池公園は都市部にありながらも環境省が重要植物群落に指定しているハンノキ林があるなど生物多様性の価値が高く、OECM※1の好事例となっています。環境省が認定する自然共生サイト※2への登録も期待されています。
(長池公園については会報誌「自然保護」2022年9・10月号で詳しく取り上げています。)
調査講習会の内容
調査講習会では、最初に長池公園自然館の館内でモニ1000事業や市民調査の意義について事務局から全体にご説明した後、植物・チョウ類・哺乳類の3つのグループに分かれて講習会を行いました。
植物のグループでは、千葉県立中央博物館の尾崎煙雄さんを講師に迎え、モニ1000で植物の調査をする意義、調査を始める際の調査ルートの決め方、調査用紙への記入の仕方などを教わりました。
講義が終わった後には実際に外に出て、長池公園内の植物を調査しました。まず公園内の園路を周辺の植生や景観に基づいて3つの区間に分け、全員で調査の流れを確認しました。そしてその後、それぞれの区間内で目線よりも低い位置に生育していて、花・実・蕾を付けている草本植物を対象に、調査員の皆さん同士で植物の名前を教えあいながら調査用紙に記録していました。
調査開始時はあいにくの雨でしたが、皆さまの熱意が伝わったのか途中から雨が止み、スムーズに調査を進めることができました。長池公園で実際のモニ1000里地調査の流れを実践できたのは、新規サイトの調査員の方々にとっても役立つものになれたかと思います。
サイト視察会の内容
サイト視察会では、まず長池公園の管理団体である「NPOフュージョン長池」の小林さん、片山さんに、長池公園の歴史、生物多様性保全の取り組み、「パークキッズレンジャー」や「生きがい就労」などの多様な公園管理の取り組みについて館内でご説明いただきました。
具体的には、「パークキッズレンジャー」は周辺地域に住む小学生とその家族が登録できるボランティア制度で、公園内の生き物調査や清掃などの公園管理を行っています。本講習会にも数組の「パークキッズレンジャー」の親子にご参加いただきました。また、定年退職した周辺住民の方々を職員として雇用し公園管理を担ってもらう「生きがい就労」という取り組みもあります。このように、様々な取り組みを通じていろいろな方に関わってもらいながら公園管理を行っているそうです。
館内でのレクチャーが終わった後、実際に公園内を案内していただきました。公園の入り口付近には芝生広場や長池見附橋など公園利用者の憩いの場となる空間が広がる一方で、公園の奥に進むと一気に自然が豊かになり、長池や雑木林、田んぼなどの里山環境が広がっていました。「生きがい就労」の活動者の方々が植生管理を行っている現場を見せていただいた際、すべての活動者の方が植生に関して知識があるわけではないのに、一回作業の説明をしただけで刈り取る植物と残す植物を大体の方が感覚で理解できている、という話を聞き感心しました。
都心でありながらもこのような環境が残っていることに驚くと同時に、この環境を次の世代につなげられるように守っていきたいと強く思いました。サイト視察会に参加していただいた皆さまも、ご自身が活動している調査サイトと比較して長池公園から学ぶことも多かったのではないでしょうか。
また、モニ1000里地調査員対象に実施した『調査継続に関するアンケート』では、多くのサイトが「担い手確保」を課題としてあげていました。長池公園のこうした管理方法が各調査サイトの担い手確保や現場保全のためのヒントになればよいと思います。
おわりに
今回の講習会・サイト視察会は1日開催であったためかなりのハードスケジュールでしたが、ご参加いただいた皆さまにもご協力いただき、充実した会にできたと思います。遠方で参加できなかった調査員の方々に向けて、今回の調査講習会・サイト視察会の様子をいずれ動画でお届けできればと考えています。しばらくお待ちくださいませ。
最後になりましたが、全国各地からお集まりいただいた調査員の皆さま、各調査項目で講師をしていただいた皆さま、「NPOフュージョン長池」の小林さん、片山さんをはじめとするスタッフの皆さま、ご参加・ご協力いただき誠にありがとうございました。