2019.09.02(2019.09.04 更新)
- 石川県輪島市
- 2019年6月29日~30日
梅雨空に舞うホタルをしらべる! モニ1000調査講習会(能登)レポート
解説
専門度:
こんにちは、モニ1000里地調査事務局を担当している後藤ななです!
6月29・30日に石川県輪島市にてモニ1000里地の調査講習会を開催しました。今回は、哺乳類調査や鳥類調査などに加えて、ホタル類調査の調査講習会を開催しました。
皆さまは、ホタルはいつ頃夜空を舞っているかご存知ですか?
実は、この6月~7月頃という、まさに梅雨の時期なのです。ホタル類調査の調査講習会は、ホタルが発生するこの季節にしか開催できず、開催時期がどうしても梅雨に被ってしまいます。
毎年、ホタル類調査講習会の準備時には、スタッフは毎日週間天気予報を食い入るように見て、天気を要チェックしています(てるてる坊主をつくったり、おてんとさまにお願いをしたり…)。
しかし、なんと、今回は!大変残念ながら途中大雨となりプログラムの変更も余儀なくされ、2日目の日程は「中止」ということとなりました。
1日目は、小雨の中なんとか開催することができ、一時的に雨が強まる大変な場面もありましたが、講師の皆さま、お集まりいただいた皆さまの多大なるご理解とご協力もあり、無事に講習を終えることができました。お集まりいただいた皆さま、本当に、本当にありがとうございました!
また、冒頭で説明をしたホタル類調査ですが、1日目の夜の開催として、無事に開催することができました。
ここでは、このホタル類調査とその調査講習会を中心に紹介をさせていただきます。
ホタル類調査(能登)レポート
モニ1000里地調査では、里山の大切な環境要素である水辺と陸地の連続した部分「移行帯」の環境変化をみるために、ホタル類の個体数を指標として調査を行っています。
この「移行帯」は、具体的には、小川と陸の境界、田んぼやため池と陸の境界というような場所です。里山に棲む数多くの昆虫、両性類、爬虫類などは、求愛・産卵や幼虫・幼生期を過ごすため、また食事などのために、この移行帯を行き来して暮らしています。
しかし、近年、農業の効率化などのために、小川などのコンクリート化や、田んぼの乾田化などによって、その環境は大きく変化し、移行帯を行き来していた生き物たちにも大きな影響を及ぼしています。
モニ1000里地調査で調査対象としている、ゲンジボタルやヘイケボタルは、岸辺に産卵し水中で幼虫を過ごし、土のある自然護岸で蛹になり、成虫となって夜空を舞い次世代につなげる、というように、一生を通じて水辺と陸地を利用しています。
▲調査マニュアル概要版より:ホタルの一生
このホタル類を調査することで、里山における水辺と陸地の移行帯の環境変化を長期にわたってモニタリングすることとしています。
調査の方法は至ってシンプル!成虫として夜空を飛ぶホタル類の数をカウントするだけです。しかし、単純とはいうものの、ホタル類調査にはいくつか難しいといわれる部分があります。「ゲンジボタルとヘイケボタルの見分け方」や「ホタルの光(明滅)の数え方」などです。
今回の調査講習会では、石川ホタルの会の水野正秋先生に講師をしていただき、こうした調査のポイントに触れながら実施いただきました。
調査講習会の会場となったのは、石川県輪島市にある「トキのふるさと能登まるやま」です。“まるやま”と呼ばれる小さな小山を囲むように田んぼがあり、その周囲をさらに山で囲まれた袋状の里山環境です。このサイトは2008年度よりモニ1000里地調査に参加され、初期から「まるやま組」の皆さんが調査とともに自然観察会など、里山を学び舎とした幅広い活動をされています。
▲初夏のまるやまの様子
調査講習会では、屋内で調査の意義や調査の方法、ホタル類の生態などについて講義を行いました。講師の水野先生からは、ゲンジボタルとヘイケボタルの見分け方について、棲んでいる環境や光り方の特徴のお話も交えて解説いただきました。
ゲンジボタルは強くゆっくり光り、ヘイケボタルはまたたくように光るという違いのほか、ゲンジボタルは舞っているうちに数個体が同調して一緒に光ることがあるという特徴も教えていただきました。また、とある小学校でのホタルの校章のお話も踏まえて、ホタルと人との関わり合いについてもお話いただきました。
▲調査マニュアル概要版より:ゲンジボタルとヘイケボタルの違い
次に野外に出て、野外が明るい時間帯に、調査する対象区間の確認や周辺環境も含んだ環境条件の記録を行いました。環境条件としては、水辺の環境タイプ(流水域・止水域)や、幼虫の餌となるカワニナの生息状況、人工護岸の程度や人工照明の有無などを記録します。
また、ホタル類の調査は田んぼなどのすぐ近くで行うため、農家の皆さんが大事に管理されている畦なども近く、場所によっては獣害防止のための電気柵が張り巡らされている場合もあります。暗闇のなかでトラブルや怪我のないように、必ず、必ず暗くなる前に調査区間環境の様子を見るようにしましょう。
▲区間環境の記録の取り方の確認。明るいうちに調査地の安全確認も忘れずに!
屋内講習の時間までは、外で一時的に激しく雨の降る様子もありましたが、夕食休憩をはさんで、屋外での調査実習を再開する頃には雨足が少し和らいできました。日も暮れると、まるやまは一体、人工照明もなく真っ暗な闇に包まれました。
すると、雨上がりを待っていたようにホタルたちが一斉に舞い始めました。実習では、参加者の皆さんで、舞うホタルの数をカウントしました。決まった場所から1分間にカウントを3回繰り返し行い、3回のなかで最も多かった数字を記録します。
参加者の皆さんで、その数を出し合ってみると、数は見事に一致!…したのではなく、十数個体~三十数個体とかなり幅がある結果となりました。これはスタッフの準備不足で、調査区画がはっきりしきれずカウント範囲や立つ位置によって見える数が異なってしまったことなどが大きな原因になっておりました…、すみません。
他にも、参加者の方からは「田んぼの水面に反射したものを多く数えてしまった気がする」「飛んで動くのでカウントが難しい」といったコメントをいただきました。
まとめでは、事務局スタッフから、外が明るいうちにカウントする範囲や立つ位置もしっかり確認してその条件をむやみに変えないことを、今回の反省としつつ、「この調査の目的は、ホタル類の個体数の経年変化を記録して、環境変化をみることです。
カウントの数に不安を感じる方もいるかもしれませんが、数に厳密になりすぎるよりは、今年15だった数が次の年もほとんど変わらないのか、それとも30に増えるのか、それとも減っていってしまうのか、ざっくりとでも変化の傾向を掴むことがとても大切になります。
そのためにも、カウント数の正確性にこだわりすぎて疲れてしまわないように、長く続けられる方法を探してみてください」というお話をさせていただきました。
また、最後に、水野先生からは「ホタルの調査は暗闇のなかで実施します。調査員の皆さんに怪我などがあっては元も子もありません。安全を第一にして、天候が悪いときには実施しない、危ない場所をしっかり確認することを忘れないでください。」というお話しいただき、安全管理の重要性を再確認して終了となりました。
▲お話される水野先生
今回は天気には恵まれず、満足な内容で実施できない部分もありました。しかし、参加いただいた皆さまのご協力のおかげで、怪我や事故もなく無事に終えることができました。お集まりいただいた皆さまに、心より御礼申し上げます。
これから現場で調査をされる皆さまは、くれぐれも安全管理を第一に、これからも楽しく調査を実施いただければ幸いです。今後も、モニ1000里地調査をどうぞよろしくお願いいたします!
また、本記事をお読みいただいた皆さまも、身近な自然の記録のために、ぜひ調査に参加してみてください!
※調査マニュアルはウェブサイトで公開していますのでぜひご覧ください。>> https://www.nacsj.or.jp/activities/guardians/moni1000/howto/
調査講習会(能登)の様子
ホタル調査以外にも、鳥類や哺乳類、水環境の調査講習や現地で活動されているまるやま組の活動紹介などがありました!
▲鳥類調査の様子。調査結果の記録の仕方を確認中!
▲哺乳類調査の様子。木にベルトでカメラを固定しています。
▲金沢大学の伊藤浩二先生より、まるやま組での植物相調査の様子や調査結果の活用について紹介していただきました!
▲古民家のお食事処「茅葺庵」で夕食休憩。地域のお野菜たっぷりの「里山まるごと定食」をいただきました。