2018.11.19(2018.12.14 更新)
- 愛知県名古屋市
- 2018年11月4日
「人々の想い」~モニ1000里地調査の全国交流会2018~
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こんにちは、6月より日本自然保護協会でインターンをさせて頂いている立教大学2年の佐藤安未加です。11月に行われた全国交流会にスタッフとして参加しましたので、報告させていただきます。
私はインターン生として、モニタリングサイト1000里地調査(以下、モニ1000)での過去これまでの活動内容のとりまとめに向けて、全国の調査員の方からいただいたアンケート結果の集計を行ったり、過去の報告書から活用事例を抽出する作業に関わらせていただいてきました。調査員の方が、ご自身の調査サイトで実施されてきた調査の活用事例を聞くアンケートを集計し、報告書やニュースレターで過去に取り上げた事例をまとめることを通して、調査継続・データの大切さというモニ1000の意義を感じる一方、後継者不足などの課題についてもひしひしと感じました。
そして、今回の全国交流会では、実際に現地で活動されている調査員の方の生の声を聞くことができる貴重な機会となりました。
▲全国交流会、午前の部の様子
▲各地のサイトでの活動紹介の様子
今回の全国交流会では、前半、基調講演と発表会を行い、後半のプログラムでは、3つのテーマに分かれて分科会での話し合いを行いました。ここでは特に分科会の様子を中心にお伝えします。
分科会1「里地調査と地域の人をつなげる」
全国のほとんどの里山が私有地であるなか、調査を継続していくために不可欠となる地域の方々の理解についてどうしていくべきかを話しました。地域の方々から評価を得ていくことの重要性について確認しつつ、地域の人自身を活動に巻き込んでいくことの大切さについて話し合いました。特に、そこで出てきた調査サイトでの実践例やアイディアとしては、「自然と料理」や「植物とアロマ」などのように人が興味を持つような多様な展開をしていくことも大切になってくるという話があがりました。
分科会2「行政と共に里山保全を実現する」
実際の里山保全では、関連する行政窓口とのやり取りが多いなか、どのように行政と協働できるかについて話し合いました。参加者の皆さんにはまず具体的なサイトでの、自治体との協働に関する課題をお聞きしました。行政に対し、計画への反映、予算獲得などさまざまな役割を期待しているものの、担当者が異動してしまうことで今までの関係性や知識が途絶えてしまうという課題があがりました。そのためにも、行政担当者と積極的に情報交換をして信頼関係を構築しておくことが大切だという話がありました。
分科会3「調査結果を里山保全に活かすには?」
この調査の重要な課題の一つである“各調査サイトでのデータ活用”について話し合いました。調査員の皆さんからは、特に、モニ1000の意義やそこに棲む生きものたちの生息地の重要性を伝えていきたいという意見があり、アドバイザーからは、全国のデータと比較することで、そのサイトの特徴を表すことができるのではといった提案がありました。調査結果から生きものの減少などがもし見られたときには、調査員が知っている現場の情報を組み合わせて予防的な対策を行うことが必要であること、一方で、そうした判断が間違っているかもしれない可能性も念頭に入れて現場をよく観察することや様々な専門家に意見を聞いてみることが大事だという意見交換もありました。
▲分科会の様子
全国交流会全体を通じて感じたことは、「人々の想い」が大切であるということです。モニ1000には2千人以上の方が調査にかかわっています。調査継続のためには、調査員の方々に加え、地域の人々、行政など多くの人の協力が必要になります。一人一人の意思が貴重な自然環境を守るうえでとても大切な要素になるのだと感じました。このことは、分科会の話し合いを聞いてより明確に感じました。
今回、アンケート結果集計作業と全国交流会参加を通し、多くのことを学ぶことができました。里山のほとんどが私有地であるがゆえの調査の困難さや、同じ手法で調査をすることで一定の結果が得られること、調査結果を共有することで次への行動へ繋がること、そして多くのサイトが似たような課題を持ちつつも異なる背景を持っていることなどです。そして、モニ1000が、専門家ではなく市民の皆さんによって行われていることによるメリットも学びました。調査が頻繁で継続的にできる・広域で一斉である・臨機応変に対応できるという強みです。市民自らが調査を行い、現状を正しく知りデータを得ることで、行政や企業を巻き込んでいける可能性が生まれます。
参加者の方々のお話を聞いて、自分には何ができるのか、学生だからこそできることがあるのではないかという思いが強くなりました。今回学んだこと行動に移していけるようになりたいと感じました。