2024.12.11(2024.12.11 更新)
四国で最も自然環境上問題のある風力発電所計画に意見書を提出
写真:風車建設予定の青ザレ三角点(1376m)付近の谷の源流部(撮影:三嶺の森をまもるみんなの会)
- 日本自然保護協会は「(仮称)嶺北香美ウィンドファーム事業(事業者:株式会社GF)」の環境アセス配慮書に対し、生物多様性保全の観点から計画中止または抜本的な事業の見直しを求めて意見書を提出
- 本計画予定地は、高知県でも希少なブナ優占の自然林が含まれ、四国に残りわずか20頭ほどしか生息しない絶滅寸前のツキノワグマ生息地に隣接している。
- 本計画予定地は、絶滅危惧種の渡り鳥・サシバの渡りのルート上に存在し、風車建設によって恒久的に影響を与えうる。計画中止または渡りの時期の稼働制限が必須
公益財団法人日本自然保護協会(理事長:土屋 俊幸)は、高知県香美市および大豊町で計画されている「(仮称)嶺北香美ウィンドファーム事業(事業者:株式会社GF、最大154,800 kW、基数:最大36基)」の計画段階環境配慮書に対し、自然環境と生物多様性の保全の観点から12月10日に意見書を提出しました。本計画は、当会が独自に調査を行った自然環境影響指数※において、四国で計画中の風力発電事業(12件)で、最も自然環境への悪影響が懸念される計画であり、計画の中止もしくは対象事業実施区域の抜本的な見直しを行うべきです。
提出した意見書全文はこちら(NACS-J資料室へ移動します。)
※2024年9月に日本自然保護協会が、個別の陸上風力発電事業について、自然環境への配慮状況を独自に数値化したもの。詳細はこちら。
主な意見書のポイント
意見書の主なポイントは以下のとおり。
1.計画予定地の北東部にある自然林および自然草原を外すべき
計画予定地の北東部は、高知県内でも希少なブナ林が分布し、環境省の特定植物群落に選定されている。
また、四国に残りわずか20頭前後しか生息していない絶滅寸前のツキノワグマ四国地域個体群の生息地に隣接している。このように全国的に見ても生物多様性保全上極めて重要な地域であることから、これら地域を計画予定地から除外すべきである。
2.計画予定地ほぼ全域が保安林であり、事業実施は慎重になるべき
計画予定地のほぼ全域が国有林および民有林の保安林に指定されており、一部は奥物部県立自然公園の第3種特別地域および普通地域、梶ヶ森県立自然公園の普通地域に指定されている。高知県が策定した「再エネの促進区域の設定に関する環境配慮基準」でも、県立自然公園や保安林は適切でないと示されており、本計画予定地は再エネ導入を促進すべきではない区域といえる。
特に、本計画の風車設置予定地の一部は、土砂流出防備保安林に指定されており、地すべりの発生密度が極めて高い地質的な特徴を有している。このような場所に大規模な土地改変と高さ150m以上の風車を設置することは地すべり、土砂流出、河川環境の悪化などを引き起こす可能性がある。
こうした状況を十分に配慮し、本計画の実施は慎重に判断すべきである。
3.計画予定地は絶滅危惧種の渡り鳥・サシバの渡りルート付近に存在し、計画中止もしくは渡り時期の稼働制限をすべき
計画予定地の付近では、2020年から2024年までに、2,000~6,000匹ものサシバの渡りが観察されている。サシバは、環境省レッドリストで絶滅危惧IB類に指定され、さらに渡りをすることで、各地の生態系に対し重要な役割をもつ猛禽類である。そのため、風車によってサシバの衝突死が起れば、計画予定地のみならず海外を含めた広域の生態系に影響を与えることになる。このようなことより、本計画は中止もしくは少なくともサシバの渡り時期には稼働制限(稼働停止)を行う必要がある。
ご参考
公益財団法人 日本自然保護協会について
自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
http://www.nacsj.or.jp/
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