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2024.04.03(2024.04.03 更新)

国立公園内での大型風力発電計画に中止を求め意見書を提出 絶滅の危機にある国指定天然記念物・イヌワシへの影響多大

イヌワシの画像

国内に推定個体数500羽しかいない絶滅危惧種で天然記念物のイヌワシ(写真:上田大志氏)

  • 日本自然保護協会は、新潟県・山形県境で計画中の「(仮称)新潟関川風力発電事業」に対し、生物多様性への影響が多大であり、中止を求め東急不動産株式会社に意見書を提出
  • 計画地は絶滅危惧種で国指定の天然記念物であるイヌワシの国内有数の生息地であり、事業による影響が多大
  • さらに計画地は自然度の高い植生が大部分を占め、全風力発電機の建設を国立公園内に含むなど、周辺の自然環境への影響も大きい
  • 本事業者の親会社である東急不動産ホールディングス株式会社はネイチャーポジティブ宣言を行っているが、本事業による生物多様性への影響は憂慮するものであり、中止を前提とした計画の再考を求める

公益財団法人日本自然保護協会(理事長:亀山 章)は、カーボンニュートラルとネイチャーポジティブの両立を目指して、自然環境に配慮した立地での再生可能エネルギーの推進を提唱しています。2月に環境影響評価方法書が公開された「(仮称)新潟関川風力発電事業(事業者:東急不動産株式会社)」は、絶滅危惧種イヌワシの国内有数の生息地を含むなど、自然環境と生物多様性への影響が甚大です。当会は、事業中止を前提に事業再考を求めて意見しました。

提出した意見書全文はこちら(NACS-J資料室へ移動します。)

意見書のポイント

計画そのものが生物多様性への配慮を欠いており事業の再考をすべき

本事業は、環境影響評価配慮書段階での指摘を受けて、今回の方法書で、計画の規模縮小や影響の大きなエリアを絞り込むなど一定の環境配慮がなされているが、そもそもの立地が自然環境への影響が多大であり、事業を再考すべきである。詳細は下記のとおり。

1-1.
日本有数の高密度なイヌワシの生息地であること
1-2.
自然林に近い植生が計画地の大部分を占めていること
1-3.
国立公園内への風力発電機の設置自体を避けるべきであること

特にイヌワシは、国指定の天然記念物であるが、国内に推定個体数500羽しかおらず絶滅の危機に瀕している。一度、大型風力発電施設が建設されると、回転する風車のブレードに衝突して死傷する事故(バードストライク)に合う可能性が恒久的に高まる状況になる。

調査計画が不十分である

計画地東側には、荒谷沢という、砂防ダムなどの建設がなくイワナなどの魚類が多数生息している可能性のある重要な河川がある。しかし、荒谷沢での調査地点が不足しており環境影響評価が十分ではない。水環境と魚類・水生動物の調査を大幅に増やすべきである。

また、同地域は日本有数の豪雪地域のグリーンタフ地域で、地すべりが発生しやすい。計画地内には地すべりの移動体が多数みられ、一部は地すべり防止区域および土砂災害警戒区域に指定されている。このような地域に高さ最大159mもの大型風力発電施設を建設することは、地すべりを誘発する可能性があるが、本アセス図書では一切言及されていない。本事業による地すべりの危険性について、調査を行い評価すべきである。

参考URL:

ご参考

公益財団法人 日本自然保護協会について

自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
http://www.nacsj.or.jp/

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