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2023.06.26(2023.06.28 更新)

前代未聞!絶滅危惧種サシバの渡りルートに風力発電計画 事業の一部中止を求め 意見書を提出

絶滅危惧種の猛禽類・サシバの写真

写真:絶滅危惧種の猛禽類・サシバ(撮影:与名正三氏)

  • 日本自然保護協会(NACS-J)は、「(仮称)肥薩ウインドファーム」の環境影響評価準備書に対し、事業の一部中止を求めて事業者の電源開発株式会社に意見書を提出しました。
  • 本事業予定地は、絶滅危惧種の猛禽類・サシバの1300羽以上の主要な渡りルート上にあたり、さらに同じく絶滅危惧種・クマタカの繁殖地でもあり、鳥類のバードストライクのリスクが極めて高いことから、風車設置の再考を求めるよう意見しました。

公益財団法人日本自然保護協会(理事長:亀山 章、以下「NACS-J」)は、自然環境に配慮した立地での再生可能エネルギーの推進を提唱しています。

NACS-Jは、自然環境と生物多様性の保全の観点から、熊本県水俣市、鹿児島県出水市および伊佐市で計画されている「(仮称)肥薩ウインドファーム(事業者:電源開発株式会社)」の環境影響評価準備書に関する意見書を提出しました

提出した意見書全文はこちら(NACS-J資料室へ移動します。)

(仮称)肥薩ウインドファーム予定地写真:計画エリア(撮影:大澤風季氏)

意見書のポイント

絶滅危惧種の渡り鳥「サシバ」への影響

絶滅危惧種の猛禽類・サシバ(環境省レッドリスト 絶滅危惧Ⅱ類(VU))は、夏季に日本で繁殖期を過ごし、冬~翌春までは東南アジアで過ごす渡り鳥です。そのため秋季と春季には、集団で九州から南西諸島を中継して東南アジアと日本の間を長距離移動します。
本事業の計画エリアは、1300羽以上ものサシバの渡りの主要ルート上に位置しており、本地での風車建設によって、渡りを行うサシバが恒久的にバードストライク*に合う可能性が極めて高まる状況です(図1)。
サシバは、各地の生態系において重要な種であり、本事業は、風車建設予定地だけでなく日本各地や東南アジアなど広域の生態系に大きな影響を及ぼす恐れがあります。

バードストライクとは:鳥類が風車に衝突し死傷すること

サシバのタカ柱の写真

サシバのタカ柱の写真2

写真:サシバの渡りの際にみられる「タカ柱」(撮影:与名正三氏)
サシバは渡る際に、このように群れを成して移動する。

図1:風力発電機設置予定場所とサシバの主要な渡りの状況
(環境影響評価準備書をもとにGoogleマップ上にNACS-Jが作図)

絶滅危惧種の猛禽類「クマタカ」への影響

本事業の風車設置周辺では、絶滅危惧種・クマタカ(環境省 絶滅危惧ⅠB類)が高密度で繁殖を行っているとされています。本事業の環境影響評価書では、風車の設置場所を再検討しクマタカの年間衝突個体数(予測値)を低減させたとあります。しかし、一部エリアでは再検討後の予測でも風車が20年稼働した場合9~10個体衝突する予測とされ、これは他の風力発電計画と比べても異常なほど高い確率であり甚大な影響といえます。

絶滅危惧種のラン科植物への影響

本事業の計画エリア内では、環境省レッドリストに記載されているラン科植物が多数確認されています。これらラン科植物の生育が多く確認された場所や、移植が困難な希少な着生ランの生育が確認された場所では生育地を回避して計画を再考すべきです。
 

NACS-Jのサシバ保全活動の紹介とご支援のお願い

NACS-Jでは、日本から東南アジアを移動する渡り鳥「サシバ」の、繁殖地・中継地・越冬地で連携した保全活動を推進しています。これからも、サシバが舞い、子育てできる自然環境を守るため、私たちの活動をご支援ください。

サシバ保全活動ページはこちら

解説:環境アセスメントについて解説した会報『自然保護』特集(2022年3-4月号)記事を期間限定で公開しました。下記リンクからお読みいただけます。

特集「1から知りたい環境アセスと自然保護」

ご参考

公益財団法人 日本自然保護協会について

自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
http://www.nacsj.or.jp/

本リリースに関するお問合せ

日本自然保護協会 保護・教育部 若松伸彦
TEL:03-3553-4101(受付時間:10時30分~15時)
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10ミトヨビル2F

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