2023.03.08(2023.03.08 更新)
鹿児島大学演習林で計画中の大型風力発電事業の環境影響評価方法書に意見書を提出
- 日本自然保護協会(NACS-J)は、鹿児島県垂水市・鹿屋市で計画されている(仮称)垂水風力発電事業に対し、事業者の株式会社ユーラスエナジーホールディングスに意見書を提出した。
- 本事業は、2022年8月に、NACS-Jが生物多様性への影響の大きさから、環境アセスメントの配慮書の段階で事業中止を求め意見書を提出したが、今回、事業をさらに前進させる手続き「方法書」に進んだ。
- 事業予定地の8割は鹿児島大学高隈演習林内で計画されており、演習林での研究、教育面での甚大な影響を及ぼしうる。
- 希少猛禽類であるクマタカや絶滅危惧種のラン等、生物多様性ホットスポットである当地の自然環境を損なわないよう事業者は慎重に評価をし直すべきである。
公益財団法人日本自然保護協会(理事長:亀山 章、以下「NACS-J」)は、自然環境に配慮した立地での再生可能エネルギーの推進を提唱しています。NACS-Jは、宮崎県綾町、猪八重、屋久島などの照葉樹林の保全活動を長年行ってきた立場から、鹿児島県垂水市などで計画されている(仮称)垂水風力発電に対して株式会社ユーラスエナジーホールディングスへ意見書を提出しました。
本事業は、2022年8月に、NACS-Jが生物多様性への影響の大きさから、事業の早期段階である環境影響評価配慮書の段階で事業中止を求め意見書を提出しましたが、今回、さらに事業を前進させる環境影響評価方法書の段階に進んだものです。
本事業は、2022年8月時点でNACS-Jが指摘したとおり、事業予定地の8割は鹿児島大学高隈演習林内で計画されており、演習林での研究、教育面での甚大な影響を及ぼしうることに加えて、希少猛禽類であるクマタカや絶滅危惧種のラン等、生物多様性ホットスポットである当地の自然環境を損なう可能性があります。今回、NACS-Jでは本事業の環境影響評価方法書に対して下記のとおり、当地の貴重な自然環境を慎重に評価をし直すべきであるとして意見を述べました。
主な内容
- 環境影響評価を行う上で重要となる風力発電機の設置場所が未確定であり、環境影響評価を正しく行うことは不可能である。
- 事業想定区域内における特徴的な植生のひとつである、鵃岳山頂付近のアカガシ二次林において、未実施となっている動物調査を実施すべきである。
- 事業想定区域内で生息が確認されている、希少猛禽類・クマタカの生息調査をすべきである。
- 事業想定区域内に生息する絶滅危惧ⅠA類のハツシマラン、絶滅危惧ⅠB類のマヤラン、キバナノショウキラン、ナゴランをはじめとした希少なランの詳細な調査をすべきである。
- 高峠山頂からの景観的な影響を詳細に評価すべきである。
- 地域住民や利害関係者等との合意形成を図る上でも、環境影響評価図書の常時公開をすべきである。
詳細は、下記リンク先の意見書をご覧ください。
意見書はこちら
https://what-we-do.nacsj.or.jp/2023/03/19041/
鹿児島大学高隈演習林内で計画されている大規模風力発電事業に対し、計画段階環境配慮書段階で事業中止を求める意見書を提出(2022年8月)
https://www.nacsj.or.jp/media/2022/08/31757/
方法書の縦覧および意見の提出はこちら(意見提出は2023/3/9まで)
https://www.eurus-energy.com/assessment/49928/
ご参考
公益財団法人 日本自然保護協会について
自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
http://www.nacsj.or.jp/
本リリースに関するお問合せ
日本自然保護協会 保護・教育部 若松伸彦
TEL:03-3553-4101(受付時間:10時30分~15時)
Email: wakamatsu@nacsj.or.jp
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10ミトヨビル2F