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2022.08.25(2022.08.30 更新)

鹿児島大学高隈演習林内で計画されている大規模風力発電事業に対し、計画段階環境配慮書段階で事業中止を求める意見書を提出

スギ老齢人工林の写真

▲演習林内では様々な段階のスギ人工林がみられる。林齢およそ100年の古いスギ林もあり、そこでは多様なシダ植物やラン科植物が生育している。

  • 日本自然保護協会は、鹿児島県垂水市・鹿屋市で計画されている(仮称)垂水風力発電事業は計画段階環境配慮書の段階で事業計画を中止すべきと、事業者の株式会社ユーラスエナジーホールディングスに意見書を提出した。
  • 本事業実施エリアの8割以上を占める鹿児島大学高隈演習林は生物多様性が高く、照葉樹林のホットスポットと言える場所であり、計画による生物多様性への影響は多大である。
  • 営利目的の民間事業による前代未聞の大規模開発は、演習林での研究、教育活動へ甚大な影響を及ぼすことは明白である。
  • クマタカやサシバなど希少猛禽類などの生息への影響など自然環境面、土石流発生のリスクを高めるなど防災面で重大な懸念がある。

公益財団法人日本自然保護協会(会員・サポーター約2万4千人、理事長 亀山 章、以下NACS-J)は、自然環境に配慮した立地での再生可能エネルギーの推進を提唱している。NACS-Jは、宮崎県綾町、猪八重、屋久島などの照葉樹林の保全活動を長年行ってきた立場から、鹿児島県垂水市などで計画されている(仮称)垂水風力発電事業は、計画段階環境配慮書の段階で中止すべきと株式会社ユーラスエナジーホールディングスへ意見書を提出した。

主な内容

株式会社ユーラスエナジーホールディングスにより計画されている(仮称)垂水風力発電事業は、自然環境面および防災面で下記のような重大な問題があり、事業計画を計画段階環境配慮書で中止すべきである。

  1. 鹿児島県の大隅半島は他地域の照葉樹林と比較しても構成種数が最も高く、照葉樹林のホットスポットともいえる地域である。その中でも鹿児島大学高隈演習林の照葉樹林は、種の保存法で特定第一種国内希少野生動植物種に指定されているハツシマランなどの絶滅危惧種の生育が知られており、本事業による生物多様性の喪失が強く懸念される。
  2. 事業実施想定区域の8割以上が、鹿児島大学高隅演習林である。演習林は、「学部又は学科の教育研究に必要な施設」と規定されており、森林生態系や林学などの研究や教育活動が展開されている。前代未聞の演習林を対象とした本事業が実施されれば、演習林全域で大規模な樹木伐採や土地改変が行われ、大学演習林が本来果たしてきた学術的教育的機能が喪失する。
  3. 国内希少野生動植物種に指定されているクマタカ、渡り鳥のノスリなどの鳥類が、風車によるバードストライクの危険に晒される恐れがある。
  4. 本事業実施想定区域の下流域では過去に何度も土石流が発生しており、事業実施想定区域の一部は土砂流出防備保安林、さらには崩壊土砂流出危険地区に指定されている。防災上重要な地域で大規模な土地改変や森林伐採を行うことは、自然災害のリスクを高めることになる。

詳細は、下記リンク先の意見書をご覧ください。

「(仮称)垂水風力発電事業」の計画段階環境配慮書に関する意見書を提出(2022年8月)

大規模風力発電事業が計画されている場所を示す地図

本リリースに関するお問合せ

日本自然保護協会 保護・教育部 若松伸彦
Tel: 03-3553-4101(平日10:30 ~ 15:00)
Email: wakamatsu@nacsj.or.jp
〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F

ご参考

公益財団法人 日本自然保護協会について

自然保護と生物多様性保全を目的に、1951年に創立された日本で最も歴史のある自然保護団体のひとつ。会員・サポーター2万4千人。ダム計画が進められていた尾瀬の自然保護を皮切りに、屋久島や小笠原、白神山地などでも活動を続けて世界自然遺産登録への礎を築き、今でも日本全国で壊れそうな自然を守るための様々な活動を続けています。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんから高齢者までが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動しているNGOです。山から海まで、日本全国で自然を調べ、守り、活かす活動を続けています。
http://www.nacsj.or.jp/

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