2017.06.14(2017.06.14 更新)
イヌワシが暮らすまち 「みなかみユネスコエコパーク」誕生!
PRESS RELEASE
報道関係者各位
2017年6月14日
2017年6月14日、ユネスコの人間と生物圏(MAB)計画国際調整理事会にて「みなかみユネスコエコパーク(*1)」の登録が承認されました。
公益財団法人日本自然保護協会(会員約2万4千人、理事長:亀山章)は、みなかみ町で林野庁と地域住民との協働事業「赤谷プロジェクト(*2)」を進めており、また2012年に宮崎県の「綾ユネスコエコパーク」の登録に際して支援した経験があったことから、みなかみ町のアドバイザーとして積極的に申請の支援を行いました。
日本自然保護協会は、今後も赤谷プロジェクトを推進していくと同時に、自然に配慮した地域づくりにおける日本あるいは世界のモデル地域となるようみなかみユネスコエコパークの活動を支援していきます。
*1 ユネスコエコパーク
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の認定制度のひとつ。「ユネスコエコパーク」は日本での名称で正式名称は生物圏保存地域(Biosphere Reserves: BR)。
豊かな生態系や生物多様性を保全し、自然に学ぶとともに、文化的にも経済・社会的にも持続可能な発展を目指す、地域づくりのモデルとして高く評価されたエリアが、ユネスコエコパークに登録される。
*2 赤谷プロジェクトとは
群馬県みなかみ町新治地区(旧新治村)北部に広がる約1万ヘクタールの国有林「赤谷の森」を、地元住民で組織する「赤谷プロジェクト地域協議会」、林野庁関東森林管理局、日本自然保護協会が協定を結んで、生物多様性の復元と持続的な地域社会づくりをめざす、協働プロジェクト。
公益財団法人日本自然保護協会
広報室 Eメール:press@nacsj.or.jp TEL:03-3553-4106
【ニュース】「みなかみユネスコエコパーク」誕生!
2017年6月14日ユネスコ国際調整理事会にて「みなかみユネスコエコパーク」の登録が承認されました。「祖母傾大崩ユネスコエコパーク」も同時に登録され、国内のユネスコエコパークは9つになりました。(※ユネスコエコパークについての詳しい解説は後続ページ)
みなかみユネスコエコパークは、群馬県最北部に位置するみなかみ町を中心として、隣接する新潟県魚沼市、南魚沼市、湯沢町からなります。総面積は91,368haあり、厳正な保護が求められる核心地域は9,123ha、核心地域を保護し研究や教育研修などの自然に配慮した利用が求められる緩衝地域は60,421ha、持続可能な地域づくりが進められる移行地域は21,824haとなっています。日本海側と太平洋側を分ける脊梁山脈を含み、多様な自然環境に基づく歴史文化が育まれてきました。東京都を含む約3000万人が利用する利根川の水を生み出す水源地にもなっています。
みなかみユネスコエコパークの核心地域や緩衝地域には、日本自然保護協会が2004年から林野庁や地域住民と協働で進めている「赤谷プロジェクト」の対象地域、約1万haの国有林「赤谷の森」が含まれています。日本自然保護協会では、赤谷プロジェクトを通し、エリア内の自然環境保全にとどまらず、地元の産業であったカスタネット製造を復活させ広く森林活用の重要性を市民に伝える活動や市民向けのセミナーや自然観察会の開催、イヌワシ保全を題材として小学校の環境教育など持続可能な地域づくりにも協力しています。
こうしたありかたは、ユネスコエコパークが目指す「自然と人間社会の共生」と合致しており、今回のユネスコエコパーク登録に際しても評価されました。
また、藤原地区の上ノ原におけるNPO法人森林塾青水による草原再生の取り組みは、日本自然保護協会が事務局を担っているモニタリングサイト1000里地里山調査のサイトにもなっています。
日本自然保護協会は、2012年に宮崎県の「綾ユネスコエコパーク」の登録に際して支援した経験があったことから、みなかみ町のアドバイザーとして積極的に申請の支援を行いました。
みなかみ町は、水源地をもつ町の施策として豊かな自然を「まもり、いかし、ひろめる」取り組みを進めており、綾ユネスコエコパークが登録されるとすぐに綾町を視察し、みなかみユネスコエコパークの申請準備に取りかかりました。
私たちは、申請書の自然環境に関する章の執筆、みなかみの自然や歴史文化をとりまとめた「みなかみの自然とくらし」の一部執筆および編集支援、ユネスコエコパークに関する情報提供などをみなかみ町とともに分担しました。
ユネスコエコパークに登録された後は、推進体制の構築、実施計画の策定、町民向けセミナーの開催、ユネスコエコパークセンターの開設、森林活用に向けた取り組み、自然環境調査の実施などが計画されています。
日本自然保護協会は、赤谷プロジェクトを推進していくと同時に、自然に配慮した地域づくりにおける日本あるいは世界のモデル地域となるようみなかみユネスコエコパークの活動を支援していきます。
【解説】ユネスコエコパークとは?
ユネスコ(国際連合教育科学文化機関)の認定制度のひとつ。正式名称は「生物圏保存地域(Biosphere Reserves: BR)」ですが、日本では「ユネスコエコパーク」と呼ばれています。
ユネスコエコパークは「自然と人間社会の共生」ができているモデル的な地域。豊かな生態系や生物多様性を保全し、自然に学ぶとともに、文化的にも経済・社会的にも持続可能な発展を目指す、地域づくりのモデルとして高く評価されたエリアが、ユネスコエコパークに登録されています。
世界遺産との違い
世界自然遺産は「世界の中で唯一無二、オンリーワンの特色ある自然を手つかずに守ること」が原則となっていますが、ユネスコエコパークは、「自然保護と持続可能な利用を考え、自然と人間とのお互いの関係の構築を目指した地域」を認定する制度です。
ユネスコエコパークとして登録されるには、自然の価値だけでなく、自然を利用する地域の住民、研究者や地方公共団体などの、自主的かつ日常的な保全活動が重視されます。
保護の方法も、法規制で保護する世界遺産と違い、法律による規制と自主管理を併用した、共同管理による保護が求められるのです。
複雑な土地利用が絡みながら、貴重な自然が点在する日本の里やまや沿岸地域のような環境には、このユネスコエコパークの制度は、地域の保全戦略としても非常に活用しやすいものといえるでしょう。
地域の自然を保護していく手段のひとつとして、日本自然保護協会ではこれまでも、国際的な基準に基づく保護地域として世界自然遺産やユネスコエコパークなどへの各地の登録推進を支援してきました。
ほかにも国際的な登録制度はさまざまなものがありますが、地域の状況や特徴に合せた制度を活用することで、自然環境の保護とともに自然と共生する地域づくりを進めることができるのです。
ユネスコエコパークの特徴
人と自然の共生を目指すユネスコエコパークには、コアエリア(核心地域)・バッファーゾーン(緩衝地域)・トランジッションエリア(移行地域)という3段階の地域区分(ゾーニング)があります。厳正な自然保護を行うコアエリアを、バッファーゾーンが守るように取り囲み、トランジッションエリアで持続可能な利活用が行われます。居住地も、トランジッションエリアに含まれ、地域の社会発展・経済活動を担っていきます。
国内のユネスコエコパーク
これまでの国内のユネスコエコパークは「只見」「志賀高原」「南アルプス」「白山」「大台ケ原・大峯山・大杉谷」「綾」「屋久島・口永良部島」の7か所。
ここに今回、「みなかみ」と「祖母傾大崩」が加わり9か所となりました。
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