2017.04.06(2018.04.19 更新)
リニア建設で“日本で最も美しい村”から失われる風景
企画制作:公益財団法人日本自然保護協会 画像提供:応本健次・河本昭代
企画制作:公益財団法人日本自然保護協会
画像提供:応本健次・河本明代
(2016年度牧田基金活用事業)
大鹿村をご存知ですか?
南アルプスの大自然が広がり、大鹿村歌舞伎という伝統芸能をはじめとした地域の文化があり、そして静けさや人のつながりを大事にしてきた大鹿村。都会の利便性とは真逆の快適さや豊かさのある村で、「日本で最も美しい村」連合にも加盟しています。かつての日本には大鹿村のようなところがたくさんありました。
今、この大鹿村がリニア中央新幹線のトンネル工事で揺れています。リニア中央新幹線は、東京~名古屋間を40分、東京~大阪間を67分という短時間で結ぶ高速鉄道計画で、夢の超特急とも呼ばれています。近年まれに見る広域にわたる開発計画で、大鹿村だけではなく沿線予定地では非常に多くの懸念の声が上がっています。
交通の便が良くなることは喜ばしいことなのかもしれません。しかし、一方で利便性の追求のためにそれまでの暮らしを一変させなければいけない人々がいます。その犠牲の上で現在の繁栄や利便性を手に入れてきた私たちは、一体いつまで、そしてどこまで便利になるためにこうした犠牲を積み重ねていけば満足するのでしょうか。
日本自然保護協会がこれまで守ってきた現場は、こうした場所。
自然は一度失うと二度と元に戻りません。同じように、風景は一度失うと、そこの歴史や文化が失われます。
私たちは、これを繰り返しています。これから先の社会は、人口が減少し、経済の成長も限界を迎えると考えられています。その未来に、私たちは何を残し、何を期待すべきなのでしょう。リニア中央新幹線問題とは、それを考えなければいけない問題だと考えています。
ある自治体では、リニア中央新幹線によってどのように地域の発展を図るかの会議をテレビ会議で行っていました。普通に暮らしていた生活を奪ってまで本当に人が高速で移動する必要があるのでしょうか。
イヌワシやクマタカといった猛禽類も暮らし、歌舞伎とともに人々が暮らしている静かな大鹿村の暮らしを守ることは、私たちのこれまでを反省し、あるべき未来を築いていくことになると考えています。そのために正しく環境影響評価を行い、きちんと自然と文化を守ることが重要です。自然環境保全を内包しない技術に未来はないと思います。