2020.01.29(2020.03.04 更新)
- 東京都千代田区
- 2019年3月9日終了しました
【結果概要レポート】NACS-J 自然観察指導員養成40 周年記念キックオフイベント 『私たちがつなぐ、自然観察指導員の一歩』
お知らせ
テーマ:環境教育
大会趣旨
大会趣旨
「人とつながる、自然とつなげる。」日本自然保護協会が続けてきたNACS-J自然観察指導員の養成制度は、2018年に40周年を迎えました。
全国各地に生まれた3万人以上の自然観察指導員は「自然観察からはじまる自然保護」を様々な形で実践し、活躍してきました。本イベントは、その40年の活動を振り返るとともに、今後もさらに盛り上げ、次の時代に向けた自然観察指導員活動を開始していくための40周年事業の最初の「キックオフ」として開催しました。
当日は全国各地から約100名の指導員が参加し、今後の指導員活動のあり方についての議論や具体的アイデアの交換を行いました。
開催概要
- 日時:
- 2019 年3 月9 日(土)
- 会場:
- 国立オリンピック記念青少年総合センター
- プログラム:
- 基調講演、ワールドカフェ形式でのワークショップ、6テーマの分科会
『私たちがつなぐ、自然観察指導員の一歩』当日プログラム(配布資料)(PDF/1MB)
基調講演「自然観察、次の一歩へ」
NACS-J理事長 亀山章からの挨拶ののち、NACS-J理事・NACS-J自然観察指導員講習会講師であり、長年山梨県で指導員活動を続けておられる植原彰氏に基調講演をいただきました。
基調講演の概要
指導員養成事業の40年の成果を振り返り、自然観察の意義の共有、今後の課題などが紹介された。指導員が自主性を持って事業の充実に関わってほしいと発信すると共に、NACS-Jに対して指導員養成“制度”の充実(主にフォローアップの部分)と、事業を進める上で指導員を積極的に巻き込むことへのリクエストがなされた。
植原彰氏の基調講演の発表スライド(PDF/1.3MB)
ワールドカフェ「次の時代にチャレンジしたい指導員活動は?」
参加者が3つの部屋に分かれ、ワールドカフェ形式で「次の時代にみんなでチャレンジしたい指導員活動は?」をテーマに話し合いました。今後全国で展開したい指導員活動に関する様々なアイデアが出されました。
まとめは、指導員講習会講師である秋山幸也氏(相模原市立博物館)に行っていただきました。
ワールドカフェのまとめの概要
一番目立っていたのは、いろいろな場で自然観察会をやってみたい、これまでと異なる場へと観察会運動を広げていきたいというたくさんの意見でした。
たとえば学童保育や学校、介護施設、病院、などでの自然観察会。そして、「いつやるの?今でしょ。」「誰がやるの?みんな(参加者の指導員)でしょ。」という、今日の皆さんの主体性を象徴する言葉も聞かれました。
さらに、他県の指導員との合同や、全国一斉観察会をやってみたいという声も多く聞かれました。情報技術が日々発達している今、全国の情報を即時的に共有できればおもしろいのではないか。
しかし一方で、これだけ情報技術が発達しているのに、まだまだ私たちはつながりを求めています。こうして顔と顔をつきあわせることの大切さを改めて考えさせられました。
主な意見
ワールドカフェで出された主な意見をこちらにまとめました。
ワールドカフェで出された主なアイデア一覧(PDF/430KB)
ワールドカフェとは・・・
参加者が各テーブルに少人数に分かれ、カフェでの雑談のようにアイデアを出し合い話し合います。
途中で席替えを何度か繰り返して各テーブルでのアイデアを相互に交換し合うことで、新しいアイデアが創造され、特に共感が高いアイデアが徐々に全体で共有されるといった効果が生み出されるワークショップです。
分科会
分科会は、事前に全国の自然観察指導員からテーマを募集し、それをもとに6つのテーマに分かれて行われました。
6つのテーマ
- 「自然観察会の原点をめざすネイチュア・フィーリング 次の10 年」
- 「いつでも、どこでも、だれとでも楽しめる!」
~介護・福祉の視点からユニバーサルな自然観察を考えよう~ - 「MY フィールドに自然保護問題がやってきた」
- 「全ての子どもに自然体験をとどけよう!」
- 「地域の指導員ネットワークを次世代につなぐ」
- 「企業と連携した観察会活動の最前線」
テーマごとに各地の自然観察指導員から先進的な取り組み事例が紹介され、その後参加者同士での意見交換が行われました。以下にそれぞれの分科会の概要を掲載しました。
自然観察会の原点をめざすネイチュア・フィーリング 次の10 年
- ネイチュア・フィーリング自然観察会は、NACS-Jフィールドガイドシリーズ④「ネイチュア・フィーリング からだの不自由な人たちとの自然観察」の発行からはじまり今年で30周年を迎えた。
- 分科会には全国から約20名が参加。乳児も参加する佐賀での観察会や、小学校の校庭で行われる三重観察会などの事例報告があった。SDGsの「誰一人とりのこさない」というコンセプトと同じだと感じている。
- からだの不自由な人も楽しめる観察会は、五感を使い、ゆったりと行われる。福祉のため、からだの不自由な人のための、特別な観察会と捉えられがちだが、特別なものではなく、だれにとっても大切な自然観察会の原点。参加者だけではなく、観察会をする側も多様であってほしい。みんなが主役になって一緒にやっていけるという、自然観察のあり方を大事にしてほしい。もっとNACS-Jのブランドとして、先頭に立ってネイチュア・フィーリングを広めてほしい。
いつでも、どこでも、だれとでも楽しめる!
~介護・福祉の視点からユニバーサルな自然観察を考えよう~
- 約20名の参加があり、介護福祉の現場での自然観察活動について、熊本県からの事例報告があった。自然観察指導員の考え方は、地域福祉にも合致する視点が多くある。要介護者や要支援者だけでなく、介護福祉現場で活躍している方々、まわりで支えている地域の方々とも一緒に自然をじっくり観る機会ができることで、ライフスタイルや生きがいに変化をもたらし、地域の自然を大切にしていくことにつながるのでは。
- 自然の守り手としての本来の指導員活動にどうつなげていくかを基本に考えないと、サービス提供に留まってしまう。近くにマイフィールドを持ち、地域全体で自然を大切に思ってもらえる土壌をつくることが大切。
- 自然観察を届ける、という意味で「自然観察デリバリー」というネーミングはどうか。まずはインドアプログラムなどから試行し、徐々に外での観察の機会へ誘導。助けてくれる人がいれば、外に出たいと思っている施設は多い。すでに入居している人の家族などのツテをたどるのが近道。
- NACS-Jには指導員の研修会で、認知症サポーター養成講座を加えるなど、認知症の方々に接する基本などを学ぶ機会を持ち、協働できる範囲を広げてほしい。また認知症地域支援推進員などに自然観察会のことをPRしてほしい。
MY フィールドに自然保護問題がやってきた
- 分科会には10名ほどの方が参加。千葉や小笠原、御嶽山などでの事例が共有された。
- 「自然観察からはじまる自然保護」を合言葉にしているにも関わらず、この分科会の参加人数が少ないことは深く捉えるべき。観察会を目的化せず、自然保護のための手段・武器だと考えることが大事。
- 「自然観察からはじまる自然保護」の成功事例をもっと全国で共有すべきだ。
- NACS-J事務局には、保護問題に直面している地方の指導員や会員と交流する場をもっと作って欲しい。指導員とNACS-Jは仲間であるという意識を高めたり、そのために保護の現場をみんなで見に行くといったことが大切。
全ての子どもに自然体験をとどけよう!
- NACS-Jは2018年度に「自然の守り手検討チーム」を発足し、今、日本の自然保護に必要な事業について検討した。検討チームは、子どもの自然体験は低下し続け、そのことが、更に将来世代の子どもの自然体験の低下の要因となっている現状に課題意識を持ち、NACS-Jが「すべての子どもに自然体験を届ける」ことを目指すことを提案した。
- 子どもに自然体験を届ける指導員活動の既存事例として2つの事例紹介を行った。
- 千葉県で19年間続いている、小学校の授業として自然観察会を実施する「小学校自然観察支援ネットワーク(SSN)」の取り組みでは、学校の授業で実施することで、自然に興味の無い子どもにも自然観察会を届ける機会になる意義や、学校との連携をするための授業内容についての勉強会を実施していることなどが紹介された。
- 同じく千葉県で、そもそも自然体験のない親が多数を占める現在において親子を対象とすることの意義や、子どもと自然観察をする際に大切なポイントなどを紹介。
- 意見交換では、子どもに自然体験の機会を提供することの重要性とやりがいを感じる一方で、学校と連携することの難しさや、子どもの年代毎の細かなノウハウを共有することが、指導員が子どもの自然体験を提供する後押しになる。
- 今後、NACS-Jとして情報共有やデータベース化を進めることがリクエストされた。
地域の指導員ネットワークを次世代につなぐ
- 香川、兵庫、大阪、富山、静岡、神奈川、東京、群馬、岩手など多数の県から指導員が参加し、各連絡会から取り組みの紹介がなされた後、全員で話し合いを行い、最後に東京連絡会川上氏より「私の虎の巻」を紹介いただいた。
- 指導員ネットワークを盛り上げ次世代に引き継ぐアイデア・コツが議論された。
- 「外来種」を一つのテーマにすることで、指導員が活動をはじめるきっかけづくりや、イベント等で発信力を高めることにつながっている。
- 「セミの抜け殻しらべ」は、一般の方でもとっつきやすい一方で、長期調査や親子の交流促進などの大義名分も高い。
- 地元の保護問題を積極的に共有することで所属の意義を見出してもらっている。
- COP10のような1つの共有できる目標があったこと。
- 3つのC(Cast(指導員)、Color(の個性・得意)、Connect(それをつなげる)を大切することが重要。新指導員さんの「やってみたい」と思える、普段の職業・特技をプロボノとして活用できる観察会を形にする。
- 若い人は忙しい。新指導員の日程・都合にあわせてフォローアップを実施する方が効果的。
連絡会をいつまでも元気にさせる私の虎の巻(NACOT 川上典子)(PDF/194KB)
企業と連携した観察会活動の最前線
- 分科会には20名ほどが参加した。NACS-Jの企業連携活動について紹介があり、企業と連携した観察会のメリットと課題を共有した。
- メリットとしては、対象の拡がりをもてる、ユニークな企画ができる、施設を活用できる、保全活動に貢献できる、指導員の活動の場となる、など。課題としては、担当者や責任者の意識次第であること。社員家族を対象とした観察会からはじめることで担当者の理解が深まることもある。
- 大企業と大手NGOの連携の意義は共有できたがが、地方はまだ何をして良いか分からないという企業と、どうアプローチしてよいかわからないという地域NGOが多い状況。
- NACS-J事務局には、地方企業・支社と指導員を結びつけるマッチングの仕組みをつくってほしい。ニーズをマッチングさせるコーディネイトやデータベースを期待している。企業向けに生物多様性やSDGsについて説明しやすい資料(営業資料)を作って指導員に提供してほしい。
閉会挨拶
閉会の挨拶は、自然観察指導員講習会講師の佐野由輝氏に行っていただきました。
閉会の言葉
今、自然の中で遊ぶ子供も親も、笑顔が失われつつあることに警鐘を鳴らすことが必要。
自然観察指導員がもっている「自然観察を通じて参加者を笑顔にする力」を高め、分科会で話し合ったことを活かしていこう。
参加者一人一人が、今日を「これからの10年のキックオフを行った日」と受け止めて活動していきましょう!
キックオフイベント終了後の懇親会の様子。