モニ1000里地調査とは
~全国レベルの里山モニタリング調査~
日本自然保護協会(NACS-J)では、環境省の「モニタリングサイト1000里地調査(以下、モニ1000里地調査)」に取り組んでいます。 このプロジェクトは、生物相や指標生物といった様々な項目について、全国約200ヵ所で統一された調査を行い、里地里山という複雑な生態系の変化を全国レベルでとらえることを目指しています。
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市民が主役の調査です
里やまの多くは私有地で自由に出入りできる場所は多くありません。そのため、全国レベルで里やまを調査するには一部の専門家や行政だけでは難しいといわれてきました。一方で、各地域には、地元の方と丁寧に関係をつくり、誰よりもその地の生き物たちに愛着を持つ「市民」の皆さんがいます。
こうした市民の皆さんの身近な自然をみつめる目をつなぎあわせることで、モニ1000里地調査はスタートしました。
身近な自然を知り、記録し、残していくために、モニ1000里地調査にぜひご参加ください
事業のパンフレットはこちら モニタリングサイト1000里地調査パンフレット(PDF/2.59MB)
モニ1000里地調査とは
里やまをめぐるNACS-Jの歩み
これまでNACS-Jは、「自然しらべ」や「愛知万博会場建設問題」などを通じて、里地里山(里やま)の調査・保全に取り組んできました。2003年からは、市民の手による里やまのモニタリング調査の手法を開発し、その普及に努めてきました。そして2005年から、モニ1000里地調査の実施に取り組んでいます。
調査の特徴
- さまざまな生物・物理化学的環境についての総合的な調査
- 全国レベルでの統一された手法での調査
- さまざまな気候帯・景観のタイプのサイトでの調査
- 地域の市民団体を実施主体とした調査
調査の目的
- 日本の里地里山の生態系及び生物多様性の質的・量的な劣化を早期的に発見する
- それぞれの調査地域の里地里山の変化を把握する
- 調査の結果を各地の市民による保全活動に直結させる
調査方法
「マニュアル・調査票」のページをご覧ください。
モニタリングサイト1000分野一覧
モニタリングサイト1000は、動植物の生育生息状況などを100年にわたって同じ方法で調べ続けるサイト(調査地点)を全国に1000ヶ所程度設置し、日本の自然環境の変化をとらえようという環境省のプロジェクトです。生態系タイプ(森林、里地里山、陸水域(湖沼、湿原)、沿岸域(砂浜、干潟、藻場、サンゴ礁等)、小島嶼)ごとにサイト設置、調査項目及び調査手法が検討されており、このうち里地里山タイプの調査をNACS-Jが担当しています。
(プロジェクト全体の詳細については環境省「モニタリングサイト1000」を参照ください。)
生態系分野 | 主要調査項目 | サイト数 | 現地調査主体 | ||
---|---|---|---|---|---|
陸域 | 高山帯 | 1. 物理環境調査 2. 植生調査 3. 昆虫調査 ほか |
5 | 研究者 | |
森林・草原 | コアサイト | 1. 毎木調査 2. 落葉落枝調査 3. 地上徘徊性甲虫調査 4. 陸生鳥類調査 |
20 | 研究者 | |
準コアサイト | 1. 毎木調査 2. 陸生鳥類調査 |
28 | 研究者 | ||
陸生鳥類サイト | 1. 陸生鳥類調査 | 422 | 市民調査員 | ||
里地里山 | コアサイト | 1. 植物相 2. 中・大型哺乳類 3. 鳥類 4. チョウ類 5. 植生図 ほか 計8調査 |
18 | 市民調査員 | |
一般サイト | コアサイトの8調査の中から1調査以上 | 185 | 市民調査員 | ||
陸水域 | 湖沼・湿原 | 1. 植生調査 2. 動植物プランクトン調査 ほか |
11 | 研究者 | |
ガンカモ類サイト | 1. 個体数調査 ほか |
80 | 市民調査員 | ||
海域 | 砂浜 | ウミガメサイト | 1. 上陸回数 2. 産卵回数 3. 砂中温度 ほか |
41 | 市民調査員 |
磯 | 1. 底生生物調査 ほか |
6 | 研究者 | ||
干潟 | 1. 底生生物調査 ほか |
8 | 研究者 | ||
シギ・チドリ類サイト | 1. 個体数調査 ほか | 138 | 市民調査員 | ||
アマモ場 | 1. 海草調査 ほか |
6 | 研究者 | ||
藻場 | 1. 海藻調査 ほか |
6 | 研究者 | ||
サンゴ礁 | 1. サンゴ被覆度調査 2. オニヒトデ生息状況調査 3. 白化率 4. 物理環境調査 ほか |
24 | 研究者 | ||
小島嶼 | 海鳥サイト | 1. 個体数調査 2. 繁殖状況調査 ほか |
30 | 研究者 | |
合 計 | 1017 |
里地里山とは
里地里山(里やま)とは、日本人が長い歳月をかけて水田耕作や林業・放牧といった伝統的な自然の利用を続けてきたことで形成された環境です。
里地里山には、二次林や水田、ため池、草原といった多様な環境がモザイク状に存在し、そのため多様な動植物の生育・生息の場となっています。また里地里山は、薪炭林のカタクリや、カヤ原のカヤネズミ、水田のメダカやゲンゴロウ、森と草地の両方を利用するサシバなど、人間の伝統的な営みに依存した生物が多く見られる場所でもあります。
しかし一方で、宅地開発や水質汚染などの人間活動、伝統的な営みの放棄、外来種の侵入といった要因により、里地里山の生物多様性は近年急速に劣化しています。最近の研究では、我が国の絶滅危惧種のうち約半数がこの里地里山に集中していることが明らかになっています。