2025.02.26(2025.02.28 更新)
【配付資料】今日から始める自然観察 「きっと見たことがある!小さな昆虫アザミウマ」
観察ノウハウ
専門度:
テーマ:自然観察ツール
<会報『自然保護』No.604より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
多くの人がきっと見たことがある、野草の花の中にいる小さな虫。それはアザミウマの仲間(アザミウマ目、以下アザミウマ)かもしれません。アザミウマにはたくさんの種類がいて、花の他にもさまざまな環境で観察できます。ちょっとした工夫で、微小昆虫観察の世界が広がりますよ!
柴田智広(自然観察指導員)
とっても身近で小さな昆虫
アザミウマ目の昆虫は植物の花・葉・茎・根、枯れた植物の葉・枝・樹皮の下、積み重なった落ち葉の中など多様な環境に生息しています。種数は比較的多く、日本では2亜目4科450種以上が報告されており、今も新しい種が見つかり続けています。私たちの身近なところで見られる種は体長1~2㎜程度がほとんどです。微小であることと、物陰に隠れたがる性質を持つことから、なかなか目に留まることがないのですが、注意を向ければ比較的容易に見つけられます。
アザミウマを見つけるコツ
花の咲いているときなら、植物の花の中からは簡単にアザミウマが見つかるため、初めての観察に適している。花で見つかるアザミウマには、花粉や花びら、葉、茎などから吸汁したりする種が多いが、他の小さな節足動物を捕食する種もいる。慣れてくると動き方でアザミウマと他の生物を見分けることができるようになる。
ユリの花の中にいたアザミウマ
ジャガイモの葉の上にいるアザミウマ
名前の由来
昔の子どもたちの遊びに「馬出ろ、牛出ろ」と言いながらアザミの花を叩き、中から出てくるアザミウマの数を競うものがあったという。一説にはそれが「アザミウマ」という名称の由来となったとか。
初めて観察を試みるときは、アザミウマを見つけやすい野草の花の中を探してみると良いでしょう。一般的に、花にいるアザミウマは、成虫が花に飛んできて、花やその周辺で卵を産みます。幼虫は花粉や花びら、葉などから吸汁して大きくなると、いったん土に潜って蛹になり、羽化して再び花に飛んでいきます。
こんな植物でよく見つかる!
シロツメクサなどの野草
身近な空地などに生えた野草には多くのアザミウマが生息している。地域や環境、野草の種類によって生息する種の構成も変わってくるので比較してみるのも面白い。
エノコログサなどのイネ科植物
イネ科植物の群落でもアザミウマがよく見られる。花、葉、茎には植物から吸汁する種が、根元の枯死部には菌類を食べる種がいる。花で探すことに慣れたら、イネ科の植物も見てみよう。
花にいるアザミウマは生態系の中で送粉者の役割を担っていることが知られています。観察を通じて生きもののつながりについて考えてみても面白いと思います。
こんな環境にもいる!
枯れ葉や枯れ木にも菌類を食べる種がいて、一年中観察できます。
林の中にある枯れ枝の葉上で見られるのは黒色で大型(約5mm)のBactrothrips属の種。このグループでは雌親も雄親も卵を外敵からガードする性質を持つが、雄親による子の保護は昆虫では珍しい。また、雄同士の激しい闘争も観察できる。
枯れ葉に生息するアザミウマの蛹。アザミウマの蛹は歩くことができる。
枯れ木や枯れ枝の樹皮下には菌類を食べるアザミウマが生息している。Hoplothrips属はこのような環境に最もよく見られるグループの一つ。同じ種で同性でも翅や体の形態が違うことがある。
アザミウマ観察のポイント
アザミウマの観察を楽しむヒントとして、3つの視点を挙げてみます。
- 他の昆虫と違い、蛹の状態で歩くことができます。
- 足の先が粘着質の袋状になっているので、足場の植物などをひっくり返しても落ちません。
- 同じ種で同性でも翅の形や体型が変わる種や、足先や腹部に突起を持つなどの変わった形態を持つ種が多く見られます。
小さなアザミウマを観察するときのコツ
アザミウマだけでなく他の小さな昆虫の観察にも使える方法です!
行動を虫メガネで観察
倍率2~5倍の虫メガネを使用して、その場でアザミウマの行動や仕草を観察する。餌を探して動き回る様子や他の個体と出会ったときの反応などを観察できる。太陽を見ないように注意。
トレーに落として観察
姿を詳しく観察したい場合は、花や葉などアザミウマがいる場所を軽く叩いてアザミウマを落とし、白色のトレーや紙皿で受けて観察する。枯れ葉・枯れ枝に生息するアザミウマの観察・採集時にも適用できる。
姿は倍率の高いルーペで観察
倍率7~12倍程度の繰り出しルーペを使用して姿を観察する。繰り出しルーペは目から数cmのところで固定し、観察対象までの距離を調節して観察する方法が基本だが、アザミウマは動くためルーペをアザミウマの真上にもっていってから距離を調節する方が観察しやすい。
じっくり見ればほかにもたくさん気付くことがあるはずです。アザミウマはあまり生態の解明が進んでいないので、行動の観察は新発見につながる分野だと思います。ぜひ挑戦してみてください。
本コーナーは、エプソン純正カートリッジ引取回収サービスを利用されたお客様のポイント寄付によるご支援をいただいております。
この記事のタグ