2025.02.26(2025.02.28 更新)
奄美のサンゴ礁保全活動
調査報告
専門度:
養成講座の海洋実習の様子
テーマ:人材育成自然環境調査海の保全
フィールド:海サンゴ礁
ひび建て式サンゴ養殖を実施
鹿児島県奄美大島の瀬戸内町にある清水の海にて、瀬戸内漁協の組合員により、ひび建て式サンゴ養殖が実施されました。
このひび建て式サンゴ養殖は、沖縄島恩納村で始められた方法です。沖縄の恩納村では1998年に起こった世界的な大規模白化の影響でサンゴの被度が5%以下まで落ちましたが、ひび建て式サンゴ養殖を導入したことで、被度60%を超える良好な状態となりました。もずく養殖の鉄筋にサンゴがつくことからヒントを得て、改良が重ねられたこの方法は養殖したサンゴの生残率が高いことが知られています。
この優れた方法でサンゴの保全を進めるべく、NACS-Jは2022年7月に、沖縄サンゴ保全協会会長を連れ、瀬戸内町役所と漁協を訪問し、2024年10月に沖縄サンゴ保全協会の指導の下、今回の養殖が実現しました。12月に龍郷町でも奄美漁協龍郷町支部の組合員の手により養殖が行われました。
奄美大島瀬戸内町で、ひび建て式で養殖したばかりのサンゴ
リーフチェックチームリーダー&チーム科学者養成講座
将来、養殖したサンゴが産卵しこの海域のサンゴ礁の健康度が上がっていくのを地域の人たちが調査できるよう、2024年12月11~13日に龍郷町の漁業組合員8名、瀬戸内漁協1名、大学院生1名の計10名を対象にリーフチェック・チームリーダー&チーム科学者養成講座を実施しました。(瀬戸内町では4年前に講座を実施済み)
リーフチェックは1997年より世界規模で行われている市民参加型のサンゴ礁調査です。人間活動の影響を調べることを目的としています。世界的に研究者や行政機関の数が不足し、彼らだけでは海を見る目が不足しているのですが、レジャーダイバーが調査に参加することにより、より多くのデータを集めることができます。また調査チームには必ず海洋分野で修士号以上を持つチーム科学者が同行し、科学性を担保することがリーフチェック本部(米国)が定めたルールです。しかし特に日本では修士号以上の資格を持ち潜水ができる研究者の数は少ないのが現状です。
そのため4年前から「リーフチェック・チームリーダー&チーム科学者養成講座」を実施し、一定のスキルを持つダイバーにチームリーダーおよびチーム科学者の資格を与えるプログラムを開発しました。3日間の講習では、座学のほか、海底が何でできているかを調べる底質同定についての海洋実習も行います。最終日には受講生のみでリーフチェックを実施し、データを入力して筆記テストを受け、合否が決まります。今回は受講生10名とも無事合格しました。チームリーダー、チーム科学者の数が増えれば、調査ポイントやデータを増やすことができ、より詳しく奄美のサンゴ礁の状況を把握できます。
担当者から一言
保護・教育部
自然のちから推進部 安部真理子
地域の人たちが自分たちの手で調査を実施し、地域の自然を数値で正確に把握できるようになることは重要です。新しい調査仲間が増えたことを歓迎します。
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