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2025.02.26(2025.02.28 更新)

「全国砂浜ムーブメント」の自然しらべ  植物の連続性がある砂浜は約2割

報告

専門度:専門度2

清野聡子先生

清野聡子先生(九州大学工学研究院 環境社会部門 准教授)と、全国の砂浜とその周辺で撮影された海岸植物約1万件の中から、代表的な種類を選定。約5000件データを抽出し、複数年で見ることで推測できることをまとめた。データはいきものコレクションアプリ「Biome」を通して寄せられた。

テーマ:自然環境調査

フィールド:砂浜

多くの市民や企業、団体の皆様と連携して、自然海岸の減少や海ごみの問題などを背景に実施した「全国砂浜ムーブメント」。2019年から2023年の5年間に集計した生きものデータについて、海岸研究者の清野聡子先生と考察しました。今回は海岸植物から見た砂浜の状況について報告します。

海岸植物から分かる陸から海の連続性

砂浜は、風や潮汐の影響で常に変化する環境であるとともに、陸から海へと移行する特殊な場所です。このように、海と陸の生態系が連続的に変化する場所は「エコトーン」と呼ばれ、生物多様性が豊かな場所です。特に海岸植物は、内陸側から波打ち際まで、それぞれの環境に適応する植物の種類が変わります(図2)。そこで今回は、海岸植物を指標として〝陸寄り〟と〝海寄り〟に生育する代表的な海岸植物が報告されているか、という観点で、陸から海の連続性を判断しました。その結果、市町村ごとでみてみると、海岸植物の連続性がありそうな地域は約2割だけでした(図1)。

砂浜っぷ①海岸植物の写真は実際に寄せられたデータ。代表的な種類を一部抜粋して掲載。※植物の選定には、『日本の海岸植物図鑑』(中西弘樹著)を参考にした②砂浜を断面から見た図。比較的安定した場所に生育するハマゴウから内陸側が陸寄り植物、海側が海寄り植物。コウボウムギの生育するゾーンが消失していると推測される(イラスト提供:NPO法人表浜ネットワーク)③波打ち際付近に生育するコウボウムギ帯がごっそり削れている様子。もともと砂の移動が激しいゾ―ンだが、削れて回復していない(提供:清野聡子)

海寄りに見られる海岸植物の危機

連続性を判断する代表的な植物の報告が一定数揃わなかった市町村の多くは、陸寄りの植物よりも海寄りの植物が少ない状況でした。これらの市町村では、海寄りの植物の中でも砂の動きが激しく波打ち際付近に生育するコウボウムギやハマニガナの報告が少ない傾向がみられました。これらが生育するゾーンの砂が浸食され、消失している可能性が推測できます(写真3)。どちらも代表的な海岸植物ですが、都道府県レベルでは絶滅危惧種のところもあります。今後、気候変動による海面上昇などの影響も懸念されます。気付かれないうちに失われないよう、注目していく必要があります。

この5年間、本当にたくさんの方が砂浜に目を向けてくださいました。今回のデータは、砂浜ごとでみると陸寄りと海寄りの海岸植物が揃わなかったものの、市町村ごとでみると保全の余地があるかもしれないことが分かりました。今後はネイチャーポジティブに向けて、さらに市町村や県をまたいで連携を強化し、保全していく必要があります。引き続き、砂浜の見守りをお願いします。海岸植物以外のデータも含めた考察詳細や、「砂浜を守るためにできること」コラムなどは、砂浜ムーブメント特設サイトで3月末に公表予定です。

全国砂浜ムーブメント

期間: 2019年9月20日~2019年12月31日
2020年7月23日~2020年12月31日
2021年5月30日~2021年12月31日
2022年5月30日~2022年12月31日
2023年5月30日~2023年12月31日
共催: 株式会社バイオーム、株式会社ピリカ
協賛: こくみん共済coop、株式会社サニクリーン

他、全国170万人以上の皆様にご支援、ご協力いただきました。本当にありがとうございました!

担当者から一言

櫻井さんの顔写真

リポーター
自然のちから推進部 櫻井亜里沙
砂浜の自然環境はスケールが大きいので、見る目を養わなければ、砂浜ごとの自然の特徴がなかなか見えてこないかもしれません。ウェブサイトでは、砂浜データの深掘り方法や再生のポイントなどをまとめているので、ぜひご覧ください。一緒に砂浜を見る目を磨きましょう!

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