2024.12.23(2024.12.27 更新)
【配布資料】今日から始める自然観察「近所のスズメは今、どこで何してる?」
観察ノウハウ
専門度:
テーマ:自然観察ツール
フィールド:町中
<会報『自然保護』No.603より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
町の中で最もよく見かける鳥、スズメ。でもあんなにたくさんいるのに、どこに巣を作って何を食べているのでしょう。いつもいるような気がするけれど、本当に、一年中いるのかな?
三上 修(北海道教育大学函館校教授)
スズメをよく見かけると思います。でも、まずは本当にスズメかどうか確かめましょう。というのも、町中にはスズメと同じくらいの大きさの鳥が何種類かいるからです。例えば、シジュウカラ、カワラヒワ、メジロなど。スズメかどうかを見分ける最大のポイントは、頬の部分にある黒い斑です。これがあるのは、日本に生息する鳥ではスズメだけです。
姿や鳴き声を観察してみよう
子スズメはくちばしの付け根が黄色く、頬が親鳥に比べ薄い色をしています。この時期は死亡率が高く、翌春を迎えられる子スズメは数割です。寿命は分かっていませんが、5年以上生きるものは少ないようです。
体の大きさは約14cm、重さは約24g(ピーマン1個くらい)。頬の黒い斑が特徴。オスとメスの姿は同じです。いつも、ちゅんちゅん鳴いている気がしますが、実は、いろいろな声を出します。複雑すぎて、それぞれの声にどんな意味があるか、まだ誰も明らかにしていません。「この声はこんな時に出す!」と分かれば、大発見があるかもしれませんよ。
スズメを注意深く観察すると分かりますが、実は山や森には生息していません。その理由は、スズメが巣を作る場所に秘密があります。スズメは道路標識の筒の中や、住宅の隙間など、人が作り出した構造物の隙間によく巣を作ります。人のそばは、タカやヘビなどの天敵が少なく、また穴の形状も使いやすいのでしょう。ただし、子育てが終わった、夏の終わりごろから翌春までは、巣の近くにいる必要がありません。そのため、その頃には、農地や河川敷などでも姿を見かけるようになります。
スズメはいろいろなものを食べます。雑草のタネや、街路樹に付く虫です。それに加えて、お米や果物も食べるので、困ったところもありますが、生態系の中では、雑草や害虫の発生を抑える役割をしてくれていると考えられます。
ごはんは虫やタネ
餌の好みは季節による変化があり、子育ての時は、ヒナに与えるためにもタンパク質(昆虫)をよく取ります。秋冬は、昆虫がいないせいもありますが、植物のタネなどをよく食べています。
トビケラの仲間をくわえたスズメ
イネ科のタネを食べるスズメ
バスタイム
スズメは水浴びや砂浴びをよくします。体に付いた汚れや寄生虫を落とすために行うと言われています。水浴びは雨上がりの水たまりで、砂浴びは公園の花壇などで見られます。砂浴びをした後は、テニスボールみたいな穴がいくつも空いています。
減っていくスズメ
そのスズメが減少しています。原因の1つとして巣を作る場所が減ったことが考えられます。最近の建物は、エアコンの効果が高まるように気密性が高く、スズメが巣を作れるような隙間がないのです。加えて、草地などが減って親鳥が餌を取りづらくなっているようです。スズメは減ってはいますが、まだまだたくさんいますので、すぐにいなくなってしまうことはありません。スズメが減ったというニュースをきっかけに、身近な鳥であるスズメを、ぜひ見直して観察してみてください。
スズメの春夏秋冬
3月ごろ、それまで群れでいることの多かったスズメが、次第に数羽で見るようになります。スズメにとっては恋の季節で、つがいになろうとします。4~5月ごろになると、草などを材料にして、道路標識の穴や、石垣の隙間などに巣を作ります。
6~8月は子育ての時期。公園などで巣立ったばかりの子スズメ見かけるようになります。子スズメは巣立ち後1週間ほど親鳥から餌をもらいます。親鳥は、年に2回子育てをし、3回以上するものも。つがいは、毎年同じとは限りません。
9~2月ごろまで巣から離れて、群れで行動するようになります。それまで巣を作るために町の中にいたスズメたちの一部は、農地や河川敷へと移動して、町の中で見かける機会が減ります。寒い地方にいるスズメは南へ移動します。
期間限定の家
ツバメの巣は目に見えるところにできますが、スズメの巣は、隙間にあるので、見つかりません。5~6月ごろ、シリシリシリという声が聞こえてきたら、それはスズメのヒナが巣の中で鳴いている声。近くに巣があるので見回してみましょう。巣材の草が穴から垂れ下がっていることもあります。でも、じっくり観察していると、スズメの子育ての邪魔になるので、長時間居座ったり、近付きすぎたりしないようにしましょう。
樹洞
看板の隙間
瓦の隙間
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