2024.12.13(2024.12.13 更新)
<日本自然保護大賞2024>大賞・教育普及部門「蕨ひがし自然観察クラブ・蕨市立東公民館」の授賞セレモニーを開催しました
イベント報告
専門度:
テーマ:人材育成自然環境調査里山の保全環境教育
フィールド:公園
こんにちは 自然のちから推進部の後藤です。
晴れ渡った12月9日(月)、埼玉県蕨市で「日本自然保護大賞2024」の大賞・教育普及部門を受賞した「蕨ひがし自然観察クラブ・蕨市立東公民館」への授賞セレモニーを開催しました。
会場に向かう道中、スタッフの皆でタクシーに乗った際、運転手さんから「今日は何かあるのですか?」と聞かれ「今日はセレモニーがあるんです」とお伝えすると「蕨で!?」と驚かれるところから始まりました。
そう、日本自然保護大賞授賞セレモニーは、昨年から、全国各地で受賞団体の皆さまのもとへ訪問して開催しているんです。
蕨市は、さいたま市や川口市などの大都市に隣接し、東京駅へも電車で30分ほどのアクセスのよい場所に位置しています。日本で最も小さい「市(し)」で、人口密度が日本一とのまちして有名で、市全域が市街化区域(建物が建てられ市街化が図られるエリア)なのだそうです。
そんな蕨市で活動をされているのが「蕨ひがし自然観察クラブ・蕨市立東公民館」のみなさま。今回、日本自然保護大賞の教育普及部門の大賞を受賞されました。
授賞式セレモニーには、選考委員長である日本自然保護協会(NACS-J)理事長の土屋俊幸が参加したほか、同じく選考委員のシンガーソングライターでIUCN親善大使もつとめるイルカさんも参加されました。また、蕨市の賴髙英雄市長をはじめ、多くの方がご参列くださいました。
会場には、地域の小学生たちが作ったセミの一生をたどるスゴロクゲームや、セミの抜け殻の標本なども展示されていました。
選考委員長である土屋理事長からは、「本取り組みが、大賞の選考基準である地域性、継続性、協働性の観点からも、行政と協働し、地域に根差し、15年にも渡る調査をされてきたことはもちろん、4つ目の選考基準である先進性においても、15年調査を続けてこられたからこそ、今まさに問題となっている温暖化への影響ということも明らかにされた」とコメントがありました。
活動発表では、蕨ひがし自然観察クラブの共同代表である堀内伸一郎さんから、活動をはじめたきっかけとして、「楽しくなくては続けられない」と、すぐ身近な公園でセミの抜け殻しらべを実施、そこから15年調査を継続するなかで、もともと温暖な地域に生息していたクマゼミが観測地点のなかで出現比率が上昇していること、セミ類の羽化時期の早期化なども明らかになったことを発表いただきました。また、SDGsという国際目標も、自分たちの遠くにある話題ではなく、まずは身近な自然観察・市民調査をベースにやってみて、感じて、知っていくことが大事であることをお話いただきました。
堀内伸一郎さんの発表。写真の、手に持つ棒の高さまでの範囲でセミの抜け殻を探すという調査方法で、定量的な調査を実施されています。
活動に小学1年生のときから参加されていた伊東晏那さんからは、会場で小学校6年間の調査成果も展示いただきました。そして、現在はSDGsをちゃんと学びたいと高校では専門性のある学校へ進学、「今の自分があるのはこの活動と出会い、セミの調査を通じて身近なところに温暖化の影響があることを実感して、何かしたいと思ったことがきっかけ」とお話いただきました。
発表する伊藤晏那さん
発表のあと、イルカさんからは「晏那さんのようなユースを皆で育てていくことが大事」とコメントをいただき、また賴髙市長からも「こんな身近な公園で、すぐ足元から様々なことがわかったことに驚いた。」「発表のなかにも、センスオブワンダーという言葉が紹介されたが、リアルな体験が減っている現代、実際に触れて感じる体験という面からも素晴らしい、蕨でできることは全国どこででもきっとできる」とお話いただきました。
写真左から、賴髙 蕨市市長、イルカさん、蕨市立東公民館の岡本啓太郎さん、蕨ひがし自然観察クラブの堀内伸一郎さん、伊藤晏那さん、伊東理映さん、土屋理事長
セレモニーの後には、実際に、会場のすぐ横にある蕨市民公園で、調査の様子をご紹介いただきました。
もう12月なので、あいにく生きているセミに出会うことはできませんでしたが、夏にセミが羽化するときに掘り出てきた穴を観察したり、まだ枝に残っていたセミの抜け殻を実際に取ってみて観察をしたりしました。
セミが羽化するときにできた地面の穴の観察(上段左右)、セミの抜け殻を実際に棒で落とすところ(下段左)、採れたアブラゼミの抜け殻(下段右)
地域に密着した地道な活動が、温暖化による身近な生きものへの影響を明らかにしたこと、そして、そうした活動を通じて、地域の子どもたちや地域の方々に「SDGsがすぐ身近なことにつながっている、すぐ身近で起きていること」と実感をもって伝えたことの大きさを感じるセレモニーでした。
ご参加いただいた皆さま、心よりありがとうございました。
今後の活動も応援しております!
今年の受賞者と活動の詳細は・・・