2024.11.22(2024.11.22 更新)
今夏の猛暑による南西諸島・サンゴの白化調査
調査報告
専門度:
▲大浦湾の調査地では白化率が83.3%に上った(写真:横井謙典)
テーマ:生息環境保全モニタリング海の保全
フィールド:サンゴ礁
2024年は世界各地で大規模なサンゴの白化現象が起こっており、これは過去最大規模のことで、8月末時点で世界のサンゴ礁の75%が影響を受けています。日本でも琉球列島の島々のみならず高知県や三宅島でもサンゴの白化が記録されています。
9月上旬にNACS-Jのフィールドである沖縄島の辺野古沖、大浦湾、勝連半島、浦添、鹿児島県の奄美大島瀬戸内町の油井小島、大和浜、嘉鉄、清水、天皇浜でサンゴの白化状況の調査をしました。
被害の大きい場所では、80%のサンゴが白化
辺野古沖にはミドリイシを優占種とするサンゴ群集が発達しています。1998年からほぼ毎年リーフチェック調査をしてきましたが、コロナ禍などの事情で2018年を最後に調査ができていませんでした。6年ぶりの今回のリーフチェック調査ではサンゴの被度が浅場(水深3m)で76.9%、深場(5.5m)で64.4%と過去最高の数値を記録しましたが、それらのサンゴのうち浅場で66.7%、深場で41.7%のサンゴが、完全に白くなったり、色が薄くなったりする「白化」が確認されました。
▲図. 辺野古沖のサンゴの被度の変化
▲辺野古沖のサンゴ礁の様子(写真:横井 謙典氏)
陸に近く、浅い場所に位置する大浦湾チリビシのミドリイシ群集では白化率83.3%でした。テーブル状のミドリイシが優占していますが、潮が引く日にはサンゴが水の外に干出してしまうほど浅くなるので日光の影響を多く受けることになります。
勝連半島の宮城島チャネルではハマサンゴ類、キクメイシ類などが主に広がっている多種混成のサンゴ礁が広がっていますが、このポイントのサンゴの白化率は33.7%でした。同半島の150mに及ぶスリバチサンゴの群集が広がるサウストゥサウスでは78.1%でした。浦添市のパルコシティ前の水深3mより浅い場所ではテーブル状のミドリイシ類が優占し広がっていますが、約80%のサンゴが白化していました。
▲勝連半島のスリバチサンゴ群集(写真:桐本 香織氏)
▲浦添のサンゴ礁の様子
奄美大島南部にある大島海峡でも調査をしました。強風のため海峡の両端のポイントには行けませんでしたが、海峡の真ん中のアナサンゴモドキ類 、ハマサンゴ類などから成る多種混成の油井小島、大和浜、浅瀬にアナサンゴモドキ類が広がり深場には枝状のミドリイシ類が一面に広がる天皇浜では場所によっては白化率80%を超える被害があり、深刻な状況でした。
台風が琉球諸島に来ない期間が長く続き、高水温が続いた影響と思われます。白化したサンゴが必ず死ぬという訳ではなく褐虫藻がサンゴの体内に戻れば元に戻ります。調査以降、沖縄や奄美に台風が来ているので、水温が下がり多くのサンゴが生き延びることを願っています。今後、冬に再度調査を行い、どれくらいのサンゴが生き延びているか確認します。
▲奄美大島・天皇浜のミドリイシ群集
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担当者から一言
リポーター
保護・教育部 安部 真理子
冬に調査をしてどれくらいのサンゴが生き延びているか確認します。できるだけ多くが生き残っていることを願っています。