2024.11.15(2024.11.19 更新)
世界の44%のサンゴが絶滅危惧種に サンゴ礁に迫る環境変化とは
解説
専門度:
2024年9月に実施した沖縄サンゴ白化調査でみられた、白化したサンゴ(沖縄県浦添市)
テーマ:絶滅危惧種海の保全
フィールド:サンゴ礁
現在、気候変動枠組み条約COP29が開催されています。これにあわせて、国際自然保護連合(IUCN)は、11月13日、IUCNレッドリストの一環として行われた世界サンゴ礁評価の結果を広くメディアに発表しました。最新の調査によると、温帯水域でサンゴ礁を形成するサンゴの44%が絶滅危惧種に指定されました。そこで、サンゴを取り巻く近年の環境変化について解説します。
日本自然保護協会 保護・教育部
安部真理子
サンゴを取り巻く環境変化と白化現象
沖縄をはじめ南西諸島では、沖縄が1972年に日本へ復帰した頃から人間活動の影響が活発になり、開発行為や赤土等の土砂の流入、生活排水や工業廃水の流入、埋め立てによって大きく劣化しました。加えて近年では、オニヒトデやサンゴ食巻貝、サンゴを窒息させて殺すカイメンの影響も受けています。そして、今回、絶滅危惧種が大幅に増えた理由については、気候変動を引き起こした人間活動の影響も見過ごせません。海水温上昇による白化現象によって、サンゴ類の多くは危機的な状況にあります。
2024年の白化は、1998年、2010年、2014年から2017年にかけての世界的に起こった大規模白化現象に続くものです。そして、過去のどの白化現象よりも広範囲にわたっており、2024年8月末時点で、世界のサンゴの75%が白化しているといわれています。
サンゴの白化現象は、高水温などのストレスを受けて、褐虫藻がサンゴ体内から外に出てしまうことで起こります。白化してすぐにサンゴが死んでしまうわけではありませんが、褐虫藻がいなくなることでエネルギーを十分に得ることができず、長期間この状態が続くとサンゴは死んでしまいます。
日本でもこの夏、広範囲でサンゴの白化が確認されました。白化の状況を把握し、今後回復をしていくのかどうか、サンゴ礁のモニタリングが急務になっています。
今後に向けて
今後求められることとして、今あるサンゴを大切にし、人為的影響を最小限にすることが重要です。また、サンゴの移植・養殖技術や普及啓発活動を高めること、それらが遂行できるよう資金調達の強化が大切になります。将来世代に、健全なサンゴの海を引き継ぐためにも、私たちは、陸と海をつなぐ人間活動のあり方を見直し、官民学が協力して、保全活動を加速化していく必要があります。
参考
国際自然保護連合(IUCN)の発表(2024年11月13日)
Over 40% of coral species face extinction – IUCN Red List
日本自然保護協会のこれまでの活動
【解説】サンゴ「白化」のメカニズムと台風との関係(2020年8月)
2022年秋・南西諸島のサンゴ白化の状況(2022年10月)
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