2024.10.28(2024.10.31 更新)
奄美の里海づくり・おいしい海水を探せ!
報告
専門度:
平田集落の前の浜。山、川、里地、海のつながりを考えながら、海水を汲んでいる様子。
テーマ:海の保全エコツアー自然環境調査伝統文化
フィールド:里海づくり事業
鹿児島県奄美大島の宇検村で、2023年度からNACS-Jが委託を受けて進めている里海づくり事業には、「自然を活かした生業づくり」と「海域管理方針・計画の策定」の2本の柱があります。
生業づくりでは、村の事業と連携し、教育や観光のプログラム開発を進めています。7月には、「おいしい海水を探せ」と題した海の環境教育プログラムを、修学旅行で宇検村を訪れた生徒に参加してもらって試行しました。プログラムでは、まず山から海までの地形を観察し、川や農水路などの表層の水の動きと合わせて、目には見えない地下の水の動きも想像します。
おいしい海水ができる仕組みについて仮説を立て、ここならおいしい海水がある!と考えた地点から汲んだ海水で塩づくりをして検証しました。海水の味は水深や場所によって驚くほど違い、海中環境を考えるよいきっかけとなりました。今後は、観光で宇検村を訪れる外部の方にも提供できるプログラムとして開発を進める予定です。
集落共通の課題は、土砂流入と観光客への対応
海域管理方針・計画の策定では、昨年度行ったヒアリング調査結果の報告会を6月に行いました。海の利用と課題に関しては、各集落の共通の課題として、①土地利用の変化、気候の変化によって起こる海への土砂流入の増加と、②釣り客・観光客のマナーやルールづくりなどが挙げられました。
海の利用頻度が高い集落では、海の管理者として保全、利活用、次世代への継承の意識が強い傾向も見られます。各集落に共通する課題には協力して取り組みを進めつつ、集落ごとに異なる海との関係性や慣習、付き合い方の技術を制度に取り入れながら、海の環境や生物の保全と回復を進めていきたいと思います。
泥が堆積した海底と白化したサンゴ群体。泥が堆積するとサンゴは白化から回復できずに死滅する。土砂流入は、攪乱からの回復力も低下させる。
担当者から一言
リポーター
生物多様性保全部 中野 恵
この夏の暑さで、温泉のように生あたたかい海水の中に、一部、冷水塊ができ、その中に幼魚など小魚が閉じ込められていました。胸が痛みました。