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2024.06.21(2024.06.27 更新)

【配布資料】今日から始める自然観察「カタバミの葉っぱを観察してみよう!」

観察ノウハウ

専門度:専門度2

今日からはじめる自然観察ページ画像

テーマ:自然観察ツール

フィールド:公園市街地農地

【今日から始める自然観察】カタバミの葉っぱを観察してみよう!(PDF/2.4MB)

<会報『自然保護』No.600より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。

都市の道路の隙間に生えている植物は過酷な環境で生きています。そんな植物の代表であるカタバミを調べてみると、カタバミが急速に適応進化していることが分かってきました。身近なカタバミを観察して、進化を感じてみませんか?

深野祐也(千葉大学大学院 准教、園芸学研究科作物学研究室)


カタバミは葉の色は緑だけでなく赤いものまで、ばらつきがあります。特に赤い個体はアカカタバミと名付けられています。緑葉と赤葉の個体は交配できますし、赤~緑の中間もたくさんあります。ただし、モミジの紅葉などと違って、葉の色は生まれたときからあまり変化しません。葉の色は多くは遺伝的な性質です。

葉っぱは何色?

カタバミは、3~5cm程度の葉柄の先にハート形の小葉が3つ集まります。あなたが見つけたカタバミの葉っぱは緑色でしょうか、赤色でしょうか?
東京近郊のさまざまな農地や公園(緑地部)と市街地の道路(都市部)でカタバミの葉色を観察してみたところ、緑地部は緑葉ばかりな一方、都市部では赤葉が多いことが分かりました。

赤葉のカタバミの画像都市部(市街地の道路)

緑葉のカタバミの画像緑地部(農地や公園)

身近な進化をみてみよう

私たちは、赤葉の個体は市街地の道路(都市部)に多いけれど、農地や芝生など緑が多い場所(緑地部)にはほとんど生えていないことに気が付きました。東京近辺の26地点で調査すると、都市部と緑地部で葉の色がはっきり分かれていました(図1)。実験室や温室で行ったさまざまな実験で、その理由が分かりました。25℃くらいの適温では赤葉よりも緑葉の個体の方が、光合成の効率が高くよく成長できるのに対して、35℃以上の高温環境では、赤葉の個体の方がよく成長できました。葉に含まれる赤い物質(アントシアニン)のおかげで高温に強くなっているようです。アスファルトやコンクリートの隙間に生える都市のカタバミは、ヒートアイランドによって高温ストレスを受けています。もともとのカタバミは緑色ですが、市街地では高温に強い性質を持つ、赤いカタバミが生き残り、世代を重ねて、より赤くなり、増えていったのです。

もし都市の高温ストレスがカタバミを赤く進化させるなら、世界中の都市でも観察できるはずです。この予測を、世界中の人が利用する生物観察アプリ(iNaturalist)のデータで検証しました。世界中で撮影された9561枚のカタバミの写真を分析すると、世界中で市街地の道路に生えるカタバミは緑地に比べ赤葉の割合が高いことが分かりました。皆さんもカタバミの葉色を観察してみませんか。

グラフの画像図1:カタバミ集団の葉色の違い。東京都市圏の26地点で、半径200~300mで出会った最初の20個体を調査。緑地集団は農地や公園など緑地のみ、都市集団はすべて道路を探索した。

比較写真写真Aは高温(35℃)で赤葉と緑葉のカタバミを栽培した様子。緑葉は葉緑体が分解し脱色して黄色っぽくなっている。
写真Bはこのときの光合成の強さの比較。光合成が活発なほど青く発色する。赤葉の方が全体的に青っぽく、高温でも光合成が活発にできていることが分かる。

カタバミの観察いろいろ

ヤマトシジミの画像カタバミ類の葉に産卵するヤマトシジミ。葉の表裏や茎をよく観たら、0.4mmほどの小さな白い卵が見つかるかもしれない。幼虫はカタバミを食べて大きくなる。(写真:伊藤信男)

雨に濡れた赤葉カタバミの画像カタバミは毎日の環境変化に敏感。雨の日や夜には、花や葉を閉じている。何時ごろ、どんな天気の時に花や葉はどうなっているか、観察してみよう。

カタバミのタネカタバミのタネ。成熟したさやに触れると勢いよく割け、種子が弾け飛ぶ。

赤葉のカタバミの黄色い花赤葉個体は花弁の付け根が少し赤くなる。

カタバミの仲間

外来種のカタバミは多く、特に都市周辺では世界中から運ばれてきたカタバミの仲間がたくさん見つかります。

インカカタバミインカカタバミ[園芸品種]
花は薄いピンク色や白色。葉は三角で、緑色や紫色の品種がある。

オオキバナカタバミオオキバナカタバミ[南アフリカ原産]
花は黄色で3~4cmと大きい。生態系被害防止外来種リストに入っている。

イモカタバミイモカタバミ[南米原産]
花は赤紫色で中心部が濃い。葯は黄色。よく似たベニカタバミもある。

ムラサキカタバミムラサキカタバミ[南米原産]
花は赤紫色で中心部は白っぽい。雄しべの先に付く葯(やく)は白色。

オッタチカタバミオッタチカタバミ[北米原産]
花は黄色でカタバミによく似ているが、茎は匍匐せず、立ち上がる。


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