2023.12.27(2023.12.27 更新)
【配布資料】今日から始める自然観察「神待つ木 松を観察しよう」
観察ノウハウ
専門度:
テーマ:伝統文化
フィールド:身近な自然
<会報『自然保護』No.597より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
正月に飾る植物といえばマツが最初に思い浮かぶと思います。この機会にマツについてよく観察し、自然の不思議さや面白さに触れてみましょう。今回は日本で見かけるマツの仲間のうち、クロマツとアカマツに注目します。
佐藤仁志(自然観察指導員、樹木医)
古来より、神が天から降りてくるよりどころとして高い樹木や大きな岩があり、それらが信仰の対象とされてきました。樹木の場合は「ひもろぎ」、岩の場合は「いわくら」と呼ばれます。「ひもろぎ」には天に届くように高く伸びだすスギがその対象とされることが多かったようですが、平安時代ごろからはマツもよく使われるようになり、神が降臨する神聖な樹木として定着してきたようです。ちなみにマツの名は、「神待つ木」という意味から名付けられたとも言われています。
マツは常緑で厳寒にも葉の色を変えず、苦難に耐え、堅く節操を守るというイメージがあり、神宿る木として適していました。また、身近に多く生育し、樹齢も長く、樹脂は松明として闇を照らし、輪生する松の枝は一家だんらんを表します。さらに、2枚の葉が束ねられたように付く日本の二葉松は、夫婦和合のしるしとされました。
門松を観察してみよう
門松は、正月に年神を迎えるためのもので、そのよりどころとして家の入口に松を立てたことが起源と考えられます。平安時代に始まったとされる門松を飾る風習は、鎌倉時代にそれまで使われていた常緑樹にタケが加えられ、江戸時代になると一対の飾りとして定着してきました。
一対の門松は、正面から見て右側に雌松(アカマツ)、左側に雄松(クロマツ)を立てるようになり、次第に定型化されて私たちが見慣れているような門松となりました。門松は地域によって形や使用される材料が微妙に異なっていますので、よく観察してみると面白いと思います。門松を観察したら、周辺に生えているアカマツやクロマツの樹皮の色、葉のかたさ、冬芽の色などを見て、新年の自然観察の第一歩を踏み出しましょう。
島根県で見た門松
クロマツとアカマツを比べてみよう
アカマツとクロマツは、樹皮の色の違いの他に、葉のかたさや冬芽の色の違いなどによって見分けることができる。しかし、最近はこれらによって見分けにくいマツが増えてきた。それは、アカマツとクロマツが交雑したマツが見られるからだ。アイアカマツやアイグロマツなどと呼ばれるものがかなり見られる。
公園に植えられたクロマツ。樹皮や冬芽の色も見てみよう。
マツの葉を手のひらで触ってみよう!チクチクと痛ければクロマツ、ほとんど痛くなければアカマツだ。
弱った松にも注目してみよう
松くい虫(マツ材線虫病)は、マツノザイセンチュウがマツノマダラカミキリによって運ばれて感染する厄介な病気で、全国各地にまん延した。最近はこの病気による松枯れも一段落してきたが、まだ各地で発生し続けている。図のように、まず前年の葉が枯れ出し、やがて新しい葉も枯れていくといった特徴を持つ。
松くい虫の初期症状
活版葉枯病
近年全国にまん延する褐斑葉枯病。この病気は針葉の途中に病斑が現れ、病斑から先端部にかけて枯れていくといった特徴を持つ。菌が原因で、梅雨時に胞子をつけ雨滴などによって広がる。
松ぼっくりの付き方にも注意してみよう。写真のように小さな松ぼっくりを異常に多く付けているマツは、樹勢がかなり衰退してきている証拠。放置しておくと、やがて枯れてしまうかもしれない。
松ぼっくりを観察してみよう
松ぼっくりはどこに付いている?
マツの枝に松ぼっくりが付いていたら、まずどの位置に付いているかを観察しよう。写真では伸び出した枝の下部に付いている。ここから先がこの1年間で伸びた枝で、松ぼっくりは1年前の枝に付いている。枝の先端に付いているのが今年付けた松ぼっくりの赤ちゃん。よく観察してみると、小さくても松ぼっくりの形をしている。
お尻に渦巻き?!
松ぼっくりをお尻からよく観察してみると、粒がうず巻き状に並んでいることが分かる。うず巻きが何列あるかを数えるなどして、みんなでそれぞれが拾った松ぼっくりをよく観察してみよう。うず巻きラインが分からない人は、ラインをマジックで塗った上の写真を参考に。
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