2023.11.06(2023.11.06 更新)
【連載】遺贈寄付を知ろう「第12回:人生100年時代の中、子どものいない“おひとりさま・おふたりさま”世帯が急増中」
解説
専門度:
フィールド:活動支援寄付
NACS-Jではここ数年、遺贈寄付に関するご相談が寄せられることが多くなってきました。まだ元気なうちに人生のエンディングの準備を進め、遺産の活かし方をご自身で決める方が増えているようです。
遺贈寄付とは、人生の最後に財産が残った時に、その一部を公益団体などへ寄付をすること。自分の想いを未来に託し、自身亡き後に財産を社会に有効に活かす方法の一つとして、注目が高まっています。
そこで、NACS-Jの遺贈寄付アドバイザーで遺贈寄附推進機構(株)代表取締役の齋藤弘道さんに、遺贈寄付の基礎知識や今すぐ役立つ準備の進め方のポイントをお聞きしました。
【連載】遺贈寄付を知ろう ~ あなたの想いと自然を未来につなげるために
第12回:人生100年時代の中、子どものいない“おひとりさま・おふたりさま”世帯が急増中
Q. 最近「おひとりさま」という言葉をよく見かけますが、どういう方をそう呼ぶのでしょうか。
A. 厚生労働省の「令和4年簡易生命表」によると、日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳だそうで、まさに人生100年時代を迎えています。100年も生きることになれば、人生いろいろありそうですね。これまでにない状況が発生し、これに備える必要があるかもしれません。特に「おひとりさま」の場合は、状況にあわせて対応してもらえる家族がいないので、自分自身で対策を考えておく必要があります。
一口に「おひとりさま」と言っても、人によって使う意味が異なるようです。「一人で生活している人」「自立した一人の人間」などの意味もあれば、「結婚しない人」を指す場合もあるようですが、相続・遺贈分野では、生活様式としての単身世帯であることよりも、法的な親族関係が着目され、次のような方が「おひとりさま」と呼ばれています。
- 子どものいない夫婦
相続人は配偶者と親または兄弟姉妹です。「おふたりさま」という言い方もあるようです。夫婦のどちらかが亡くなると、残された方が下記2.になります。 - 独身、配偶者と離死別
配偶者も子どももいないので、相続人は親または兄弟姉妹になります。 - 相続人が誰もいない
配偶者・子ども(孫)・両親(祖父母)・兄弟姉妹(甥姪)など誰もおらず、「相続人不存在」となります。
今回は検討すべき課題を広く捉えておきたいので、1に近い方を対象に考えたいと思います。つまり「子どものいない人」という定義です。
Q. お子さんがいないご家庭は、現在どのくらいあるのでしょうか。
A. 国勢調査には、「世帯の構成人数」のデータはあっても「子どものいない人」というデータはありません。そこで、厚生労働省の国民生活基礎調査(2022年)をみたところ、全国世帯総数5431万世帯のうち、65歳以上の人がいる世帯が50.6%(2747万4千世帯)と半数を超えます。その世帯構造をみると、ご夫婦のみ世帯が最も多く(32.1%、882万1千世帯)、次いで単独世帯(31.8%、873万世帯)、親と未婚の子のみの世帯(20.1%、551万4千世帯)となっており、その割合は年々増加してきました。
▲65歳以上の人がいる世帯の世帯構造の年次推移(厚生労働省、国民生活基礎調査、2022年)
また、内閣府の少子化社会対策白書(2022年)によると、2015年における50歳時の未婚割合が男性23.4%・女性14.1%と、1990年以降その割合が急上昇しており、未婚化・晩婚化の流れが変わらなければ、今後も未婚割合の上昇は続くと予測されています。
▲50歳時の未婚割合の推移と将来推計(内閣府、少子化社会対策白書、2022年)
現在の75歳以上では、おひとりさまの割合は10%程度ですが、20年後には30%を超えそうです。人生100年時代に後期高齢者の30%がおひとりさまとなると、これはもう個々人の問題というよりも、社会全体として対策を考える必要がありそうです。
Q. 社会全体の対策も少しずつ進んでいますが、おひとりさまが直面しそうな困りごとにはどんなことがあるでしょうか。
A. 人生100年時代とは言えでも、健康寿命は75歳前後とされており(厚生労働省、2019年)、心身ともに健全なまま最期を迎えることは稀なことです。認知症になっても、すぐに認知機能がすべて失われるわけではなく、徐々に低下していきます。また、認知機能低下の前段階には、フレイル(病気ではないけれど、年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい)という状態もあるようです。
子どもを含む家族が身の回りにいるのが標準的であったかつての社会と異なり、おひとりさまが普通にいる現代社会では、血縁関係にすべてを依存することを前提とした終活は成り立ちません。おひとりさまは、何かあったときに頼れる親族がいない状況にあります。その「何かあったとき」「いざというとき」には、次のようなものがあるでしょう。
判断能力が減退したとき |
|
---|---|
死亡したとき |
|
このほかにも、いろいろとありそうです。何かに備えようとしたときに、何らかの「契約」が必要になれば、意思能力だけでなく行為能力も必要になりますので、正常な判断ができるうちに準備をしておきましょう。
なかでも、自分が亡くなった後の財産のゆくえは気になるところです。誰も相続人がいないと、民法が定める手続きに沿ってすべての財産が国のものになります。そこで最近では、社会課題の解決に取り組む非営利団体に遺贈寄付をするなど、元気なうちにご自身で遺産の活かし方を決める人が増えているのです。
ご相談やお問合せは、どうぞお気軽に以下のEメールまたはTELまで。ご案内資料の送付を希望される場合は、ご住所とお名前をお知らせください。
公益財団法人日本自然保護協会(NACS-J) 遺贈・遺産寄付担当(芝小路、鶴田)
E-mail memory@nacsj.or.jp/TEL 03-3553-4101(代表受付、平日10:00~17:00)
【回答者プロフィール】
遺贈寄附推進機構(株)代表取締役一般社団法人全国レガシーギフト協会理事 齋藤 弘道(さいとう ひろみち)
信託銀行勤務時代に1500件超の相続相談や10,000件以上の遺言受託審査に対応。2014年に弁護士・税理士らとともに、遺贈寄付希望者の意思が実現されない課題を解決するための勉強会を立ち上げた(現:全国レガシーギフト協会)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。多ジャンルのNGOに、遺贈寄付推進の助言指導を行っている。
コラム「遺贈寄付を知ろう」 連載目次ページ
https://www.nacsj.or.jp/news/2023/10/37315/
あなたの想いを日本の自然のために遺す、遺贈・遺産・生前のご寄付のご案内