2023.10.30(2023.10.30 更新)
沖縄県浦添市の都市部に残る貴重なサンゴ礁
調査報告
専門度:
那覇軍港予定地周辺のサンゴ礁の調査風景
テーマ:生息環境保全モニタリング海の保全
フィールド:サンゴ礁米軍基地沖縄沖縄ホープスポット
30年を経て動き出した那覇軍港移設計画
沖縄県那覇市に隣接する浦添市西海岸に米軍那覇港湾施設(那覇軍港)の移設が計画されています。1974年に日米が移設を条件に那覇軍港の返還に合意したことから始まり、浦添への移設が決まってから30年が経ち、今年4月に日米両政府が具体案に合意して、計画が動き出しました。
サンゴ礁の浅瀬を埋め立ててT字形の軍港(約49ha)を造り、軍港の南側も約109haを埋め立ててクルーズ船寄港地や人工ビーチを整備する計画です。環境アセスメントの手続きなどを含め、完成には15年以上かかるとみられています。関係する沖縄県、那覇市、浦添市の3者とも移設計画を容認する姿勢です。
リーフチェックの結果、サンゴ礁は健全な状態
NACS-Jは2021年11月と2023年2月に軍港移設予定地地点にてリーフチェックを実施しました。サンゴの被度は最初の調査では65%、2回目の調査では53.8%で11.2%減少したものの総じて健全な状態と評価しています。減少した原因として考えられるのは2022年夏に海水温の高い状態が続いたことや、2023年1月の強い寒波の影響です。2回の調査ではミドリイシ類やキクメイシ類、ハマサンゴ類などの多くのサンゴや、健康なサンゴ礁に生息するチョウチョウウオやテングカワハギなどの魚が生息していました。
軍港移設予定地は2019年にできた商業施設・サンエー浦添西海岸パルコシティの沖合400mにあり、周辺は小中学校の総合学習や市民による自然観察会、釣り、潮干狩りなど、多くの市民に親しまれている場所です。
沖縄島西海岸一帯のサンゴ礁は1998年の大規模な白化現象の影響を受けてサンゴの健康度が大きく落ちた状態が長く続いていましたが、時間をかけてここまで回復してきました。2020年の調査結果をもとに、2021年1月には、日本政府、沖縄県、浦添市に見直しを求める意見書を提出しています。都市部に残った貴重なサンゴ礁を残してほしいと思います。
2021年のリーフチェックのメンバー
担当者から一言
リポーター
保護・教育部 安部 真理子
調査時に沖合からクジラのブローが見えました。都市部に残る豊かなサンゴ礁を残して欲しいです。