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2023.10.25(2024.11.20 更新)

【配布資料】今日から始める自然観察「ハチ? アブ?いいえ、ハナアブです」

観察ノウハウ

専門度:専門度2

今日からはじめる自然観察見開きページの画像

【今日から始める自然観察】ハチ? アブ? いいえ、ハナアブです(PDF/2.6MB)
<会報『自然保護』No.596より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。

花の周りに黄色や黒の虫が飛んでいるのを見て、「ハチだ!」という人も多いでしょう。しかしよく見てみてください。実はハチではなく「ハナアブ」だったということも多いのです。「ハナアブってアブ? やっぱり刺すの?」と聞かれることもしばしば。実は奥深いハナアブの世界をのぞいてみましょう。

熊澤辰徳(大阪市立自然史博物館外来研究員、オンライン生物雑誌『ニッチェ・ライフ』編集委員長)


ハナアブはハエに近い

ハナアブは、ハエ目ハナアブ科に属するグループの昆虫です。ハエ目は、翅が2枚のハエやアブ、カ、ガガンボなどの仲間が含まれるグループです。ハナアブは、名前に「アブ」と付きますが、動物の血を吸うことで有名なアブの仲間ではなく、どちらかというとハエに近い仲間です。ハナアブ科は知られているだけでも日本に450種以上がおり、さらにまだ名前の付いていない種もあります。ハエの仲間は研究が進んでいないグループも多く、まだまだ多くの新種が見つかっています。

ハナアブは名前の通り花を訪れて蜜を吸う種がたくさんいます。成虫はハチに見間違えられるような黄色と黒の種がよく見られますが、全身が黒い種や金色の種などもいます。人を刺すことも血を吸うこともありません。

幼虫の姿もさまざまで、草の茎に付いているアブラムシなどを食べるヒラタアブ類の幼虫や、「オナガウジ」と呼ばれる呼吸管の長いナミハナアブなどの幼虫、そしてアリの巣の中で生活するアリスアブ(アリノスアブ)の幼虫といったように、各環境に適応しています。

ハチと間違えられることが多いのですが、翅の枚数(ハチは4枚、ハナアブは2枚)や、眼の形などで見分けることができます。スズメバチの仲間に似たナガハナアブ類など、飛んでいるときは羽音までハチに似た種もおり、一見区別しづらいこともあります。

ハナアブの多くは植物の花粉を運ぶ送粉者としての役割を果たしており、受粉への貢献度合いが高い生きものです。実は身近な環境の維持やヒトの暮らしにも大きく貢献しているであろうハナアブ、その生態や分類はまだまだ研究途上なのです。

ハナアブの食事処

オオハナアブ。秋に見られる大型のハナアブ。一見マルハナバチの仲間のように見えるが、毒針は持っていない。本種をはじめ、秋にはツワブキの花を訪れるハナアブが多く、花の少ない時期に貴重な食事処になっている。ハナアブは大きく目立つ花、白や黄色の花などに来ることが多い。

オオハナアブの画像

ホソヒメヒラタアブの画像ホソヒメヒラタアブの成虫。春先や秋に、花の周りなどで普通に見られる。より大型のミナミヒメヒラタアブなど、よく似た種がいる。ハナアブを含め、ハエ目の仲間には似た種が多く、種名の確定(同定)が難しいものも多い。写真を見ると、翅が2枚で、翅の付け根付近に平均棍(へいきんこん)があるのが分かる。平均棍は、飛翔中の平衡を保つのに使う。

ハナアブの生活史(ヒラタアブ類)

植物につく小さなヒラタアブ類の卵

ハナアブ幼虫とアブラムシ

ホソヒラタアブのサナギ

❶植物に付く小さなヒラタアブ類の卵。❷ヒラタアブ類の幼虫はアブラムシを食べる。❸ヒラタアブ類のさなぎ。しずく型の小さなさなぎが茎や葉に付いていたら、やがてそこからハナアブが羽化するだろう。(写真:Eran Finkle)

ハエ、ハチの分類

ハエとハチは分類的には異なるグループ。ハエ目は大きくカに近い仲間(カ亜目)とハエに近い仲間(ハエ亜目)に分かれる。和名の付け方は見た目の印象によるところがあり、カ亜目にケバエなどハエと名前が付くものがいたり、ハエ下目にハナアブなどアブと名前が付くものもいる。※研究の発展に伴い、分類が流動的に変更されている。

血を吸うアブは?

いわゆる血を吸うアブとして知られるのはハエ目の中のアブ科の種だ。ただし血を吸うのはアブ科のメスのみ。ヒトを刺すアブは口が尖っており、体がずんぐり丸く、触角が太く角状に見えるものが多い。アブに刺されるのを防ぐには、アブに使える虫除けスプレーが有効。もし刺された場合は、早めに水で洗い、ステロイド系の塗り薬を使うと良い。

アブの画像ハエ下目/アブの仲間(アブ科)

よく見られるムシヒキアブの仲間も口が尖っているが、こちらは普通ヒトを刺さない。体は比較的細長く、脚に棘が多い。


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