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2023.10.11(2023.10.11 更新)

八甲田山で計画されていた「(仮称)みちのく風力発電事業」が事業廃止に!

報告

専門度:専門度3

風力発電計画地にあるブナ林

テーマ:国立公園生息環境保全森林保全

フィールド:開発問題

2023年10月10日、株式会社ユーラスエナジーホールディングス(以下、ユーラスエナジー社)は、(仮称)みちのく風力発電事業の取り止めを発表しました。
ユーラスエナジー社は、総合的な検討の結果、このまま計画を推進していくことは適切ではないと判断したとのことです。
これは、計画が明らかになった直後から、地元のガイドの方々を中心としたProtect Hakkodaなどが計画に反対し活動してきた結果といえます。

本計画は八甲田山の北側に高さ150mほどの風車を最大150基建設予定でした。日本自然保護協会(以下、NACS-J)は2022年から、計画予定地内のブナ林の現況などを調査し、計画予定地には樹齢300年ものブナ林が広がっており自然環境への影響は多大であることを示してきました。

ちょうど1年前の2022年10月10日には、Protect Hakkoda主催のシンポジウムが青森市で開催され、八甲田の自然の素晴らしさ、風力発電計画による影響をお話しさせていただきました。

八甲田の自然保護と風発を考える講演会、「再エネ、立地に配慮を」(朝日新聞)

このシンポジウム直後、会場参加していた平内町の船橋町長が本計画に対して反対を表明しました。

さらに、その後、続々と計画予定地6市町村長、青森県知事が計画への反対を表明し、今年の8月には6市町が白紙撤回求める意見書を直接ユーラスエナジー社に提出しました。

過去に、ユーラスエナジー社では、アセス段階での風力発電計画の中止は3件ありますが、どれも2012年以前のものです。同社はそれ以降46件の風力発電計画を進めていますが、過去10年間事業中止をしていません。そのような点からも、この撤退の決断は苦渋の選択であったと思われます。
この事業廃止により、ブナを始めとした推定約35万本の樹木が伐採される大規模な土地改変が見直され、八甲田の貴重な自然環境が残されることとなりました。

八甲田山での計画は中止となりましたが、全国各地に八甲田山の計画のように自然環境への影響が多大な陸上風力発電計画が多数進行しています。
地球温暖化防止は生物多様性保全のためにも重要な課題です。しかし、このような自然環境への影響が多大な再生可能エネルギー導入は本末転倒であり、適正な立地における再生可能エネルギー導入を図れるよう引き続き活動をしていきます。

保護チーム 若松 伸彦

(仮称)みちのく風力発電事業の経緯

2021年9月:
株式会社ユーラスエナジーホールディングスが計画段階環境配慮書を縦覧
2022年5月:
日本自然保護協会による現地確認。朝日新聞にて報道される。
風力発電のために300年の森を破壊?「失われる価値大きすぎる」(朝日新聞)
2022年8月:
ユーラス社が国立公園エリアを計画地から除外することを発表。
2022年8月:
青森市議会で「(仮称)みちのく風力発電事業の中止を求める決議」が否決される。
2022年10月:
青森市内でProtect Hakkoda主催の青森市内で「八甲田300年の森に迫る危機~自然保護と風力発電を考える」が開催され、開催直後に平内町長が計画への反対を表明。
2022年12月:
青森市議会で「(仮称)みちのく風力発電事業の中止を求める意見書」が全会一致で可決。
2023年2月:
ユーラス社が計画の大幅な縮小を発表。
2023年3月:
ユーラス社が自主的な事業説明会を6会場で実施。
2023年3月:
青森知事および青森市長候補者すべてが計画への反対を相次いで表明。
2023年8月:
6市町村長がユーラス社に事業の白紙撤回を求める意見書を提出。
2023年8月:
青森県がユーラス社に事業の白紙撤回を求める文書を送付。
2023年10月:
ユーラス社が事業の撤回を発表。

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