2023.09.07(2023.09.11 更新)
南三陸でイヌワシ野外放鳥の検討を開始
報告
専門度:
南三陸地域で2019年に伐採と植栽を行った生息環境再生地。
テーマ:絶滅危惧種生息環境創出生息環境保全モニタリング
フィールド:森林
イヌワシ生息環境保全ネットワーク発足
NACS-Jは「イヌワシの舞う日本の森を未来へ引き継ぐ」ことを目指し、多くの皆様のご支援をいただきながら活動を進めてきました。今回、日本各地でイヌワシの生息地保全に取り組む方々と『イヌワシ生息環境保全ネットワーク』を発足しました。
宮城県の「南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会」、長野県の「長野イヌワシ研究会」、滋賀県の「東近江に再びイヌワシを呼び戻すプロジェクト協議会」、兵庫県但馬地域でイヌワシ保全の研究に取り組む布野隆之准教授(兵庫県立大学大学院)、群馬県の「赤谷プロジェクト」、の計5地域のネットワークです。地域ごとに保全上の課題は異なりますが、各地域での保全策を前進させるため、NACS-Jが事務局となってネットワーク運営を行います。
昨年12月に赤谷の森の視察会を機会に発足し、今年6月には南三陸で現地視察と意見交換を行いました。まずは、各地域を訪問しながら意見交換を進め、今後は、環境省と林野庁が連携した生息地保全の推進や、2025年7月に10年を迎える、種の保存法に基づく「イヌワシ保護増殖事業マスタープラン」の改定への働きかけなどを進めていきます。
飼育下個体群の放鳥を検討するワーキンググループ設置
また、南三陸地域では、2018年から国有林と民有林が連携しながらイヌワシの生息環境再生を進めてきました。しかし、モニタリング調査の結果、イヌワシの確認回数は減少し続けています。そこで、今年から生息環境再生と並行して、動物園飼育下のイヌワシ個体群を南三陸地域に放鳥することを検討する事業を開始します。
南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会とNACS-Jが共同で事務局となり、専門家も含めたワーキンググループを設置します。その上で、海外の先行事例を収集し、南三陸で放鳥を実施する場合、どのような方法がよいか、どのような準備が必要かなどについて検討していきます。
NACS-Jでは、赤谷プロジェクトでの生息地保全を進めるとともに、日本各地の生息地保全に関わる方々、動物園などの生息地域外の保全に関わる方々と連携しながら、日本のイヌワシを未来へ引き継ぐ取り組みを進めていきます。引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。
スコットランドのSouth of Scotland Golden Eagle Project では、イヌワシをかつての生息地に再導入する事業に成功している。南三陸の検討事業においては、これらの海外の先行事例から情報収集を行う。写真はYoutube動画よりキャプチャ
南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会
「イヌワシ野生復帰ワーキンググループ」のメンバー
- 井上剛彦(極東イヌワシ・クマタカ研究グループ代表)
- 小松 守(秋田市大森山動物園長)
- 佐藤太一(株式会社佐久 専務取締役)
- 出島誠一(公益財団法人日本自然保護協会)
- 山﨑 亨(アジア猛禽類ネットワーク会長)
<事務局>
- 鈴木卓也(南三陸地域イヌワシ生息環境再生プロジェクト協議会)
- 野口将之(公益財団法人日本自然保護協会)
担当者から一言
リポーター
生物多様性保全部 出島 誠一
赤谷の森のイヌワシは今年で3年連続で子育てに失敗。各地域でイヌワシの生息地保全が進みつつありますが、それは危機的状況の表れでもあります。