2023.07.19(2023.11.06 更新)
【連載】遺贈寄付を知ろう「第2回:人口減少社会で、遺贈寄付が注目されるワケ」
解説
専門度:
フィールド:活動支援寄付
NACS-Jではここ数年、遺贈寄付に関するご相談が寄せられることが多くなってきました。まだ元気なうちに、ご自身のエンディングの準備を進め、遺産の活かし方をご自身で決める方が増えているようです。
遺贈寄付とは、人生の最後に財産が残った時に、その一部を公益団体などへ寄付をすること。自分の想いを未来に託し、自身亡き後に財産を社会に有効に活かす方法の一つとして、注目が高まっています。
そこで、NACS-Jの遺贈寄付アドバイザーで遺贈寄附推進機構(株)代表取締役の齋藤弘道さんに、遺贈寄付の基礎知識や今すぐ役立つ準備の進め方のポイントをお聞きしました。
【連載】遺贈寄付を知ろう ~ あなたの想いと自然を未来につなげるために
第2回:人口減少社会で、遺贈寄付が注目されるワケ
Q.「相続」や「遺贈」は、なぜ今大きく注目されるのでしょうか?
A. それは、現在の日本の人口問題が大きく関係しています。
「国土の長期展望」中間とりまとめ概要より(国土交通省作成)
江戸時代の中期は3000万人ちょっとだったのが、明治維新の頃から一気に増え始め、今から20年ほど前に1億2780万人超とピークを迎えましたが、2100年には4700万人まで減少すると推計されています。また、人口ピーク時には20%弱だった高齢化率が、100年後の2100年には2倍の40%超まで増加すると言われています。
人口減少の原因は、晩婚化・出生率の低下・生涯未婚率の上昇などが考えられます。おひとりさまの増加が人口減少につながっているとも言えそうですが、そこには社会的な問題が背景にあると思います。国が少子化対策の政策を今すぐ加速しても、人口減少の流れはそう簡単には止められないでしょう。
人口増加の時期は、高度経済成長の時期とも重なり、大多数の人が経済成長の恩恵を享受できた時代でした。しかし、人口減少の時代はそうはいきません。人が減れば消費が減り、経済成長が難しくなります。このままでは、得られる富が減ってごく一部の人に集中し、多くの人が貧困に苦しむ社会になってしまいます。
そこで注目されているのが、「老老相続」問題や相続者がいない財産の使い方なのです。
Q.「老老相続」とはどういう相続でしょうか。
A. 日銀によれば、個人の金融資産は2023兆円あるそうです(2022年12月末時点)。これに不動産などを加えた資産の大半を、高齢者が保有しています。そして、毎年50兆円とも言われる資産が相続で動いていますが、財務省主税局の調査では、2019年には被相続人の死亡時の年齢が80歳以上の方が71.6%を占めているので、財産を引き継ぐ子は60歳以上が大半ということになります。
こうした高齢者から高齢者へ相続される「老老相続」では、引き継いだ財産の大半が貯蓄に回され、消費や投資行動が緩やかな世代間で資金移転が繰り返されることになり、経済活動や社会貢献活動へなかなか資金が巡らない状況が加速します。さらに、相続人不存在で国庫に帰属された遺産は、2021年には647億円と過去最高まで上っています。
そこで、相続で動く50兆円のうちたった1%でも、遺贈寄付や遺産からの寄付として公益団体やNPO団体に回れば、毎年5000億円もの資金が貧困対策や自然保護など、社会課題の解決のために活用されることになるわけです。
Q. 多くの人が幸せにくらせる社会を実現するために、どんな考え方や方法が必要でしょうか。
A. それはおそらく、個人に責任を負わせる「自助」ではなく、国や行政に頼る「公助」でもなく、お互いを支え合う「共助」をさらに推進するしかないように思います。「共助」には、ご近所や地域単位で支え合ったり、教育や貧困などの活動テーマごとに支え合うなど、支える組織形態も個人やサークル、NPOや公益財団などさまざまです。
今は支える側にいる人も、事故に遭ったり、病気や認知症になったり、失業したり、障害者の家族を持つなど、突如として支えられる側になることがあるわけです。「固定化された弱者」というよりも、「誰でも弱者になる可能性がある」「人生には弱者になる時期がある」と考えるべきでしょう。弱者になる時期を乗り越えるために、お互いに支え合う意識やしくみが必要なのではないでしょうか。
社会課題の解決にはお金が必要です。しかし、善意だけでは限界があります。その財源として期待できるのが「遺贈寄付」や「遺産からの寄付」だと、私は考えています。病気や介護など万一に備えた資金を、使い切ることなく亡くなる方も少なくないでしょう。その残った財産の100分の1でも寄付することを皆が遺言に書いておくことで、共助社会の実現に貢献し、人口減少の時代をソフトランディングして社会課題を解決していく助けができるのです。
ご相談やお問合せは、どうぞお気軽に以下のEメールまたはTELまで。ご案内資料の送付を希望される場合は、ご住所とお名前をお知らせください。
公益財団法人日本自然保護協会(NACS-J) 遺贈・遺産寄付担当(芝小路、鶴田)
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【回答者プロフィール】
遺贈寄附推進機構(株)代表取締役一般社団法人全国レガシーギフト協会理事 齋藤 弘道(さいとう ひろみち)
信託銀行勤務時代に1500件超の相続相談や10,000件以上の遺言受託審査に対応。2014年に弁護士・税理士らとともに、遺贈寄付希望者の意思が実現されない課題を解決するための勉強会を立ち上げた(現:全国レガシーギフト協会)。2018年に遺贈寄附推進機構株式会社を設立。多ジャンルのNGOに、遺贈寄付推進の助言指導を行っている。
コラム「遺贈寄付を知ろう」 連載目次ページ
https://www.nacsj.or.jp/news/2023/10/37315/
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