2023.01.01(2023.01.04 更新)
第9回 会報表紙フォトコンテスト 結果発表
報告
専門度:
テーマ:環境教育フォトコンテスト
フィールド:暮らし風景自然観察文化
第9回 会報『自然保護』表紙フォトコンテスト結果発表!!
第9回会報『自然保護』表紙フォトコンテストには、291名の方から合計857作品を送っていただきました。今年も質の高い素敵な作品がたくさん届きました。また、多くの方が大切な作品を、NACS-Jの広報・普及啓発活動に無償で使用してもよいとしてくださいました。ご応募・ご協力、誠にありがとうございます。2023年の自然保護誌をどうぞお楽しみに!
尾園 暁 (昆虫・自然写真家)
秋山幸也 (NACS-J 自然観察指導員講習会講師、相模原市立博物館学芸員)
美柑和俊、田中未来 (MIKAN-DESIGN)
志村智子 (NACS-J 事務局長)、大野正人 (NACS-J 保護・教育部)
渡辺聡子、田口裕美子 (NACS-J 自然のちから推進部)
講評者:尾園 暁
昆虫・自然写真家。幼少から生きもの好きで、小学生のころトンボのかっこよさに魅かれて以来、筋金入りのトンボ好き。著書には『ネイチャーガイド日本のトンボ・改訂版』(文一総合出版)や、『ハムシハンドブック』(文一総合出版)などがある。
ブログ『湘南むし日記』で出会った昆虫たちを毎日紹介している。
■優秀賞(会報表紙賞)
2023年の会報『自然保護』の表紙になります。
長友逸郎【キレンジャク雪原に舞う】
【撮影者コメント】
この年はナナカマドの実が豊作で、キレンジャクやシメなどがたくさん来ました。約300羽のキレンジャクが群れて実を食べ、雪原に降りて水の代わりに雪をついばむという行動を繰り返しては、ハイタカに追いかけられて去っていきます。そんな光景が数日続き、20本ほどある木も食べつくされました。雪の降る中、寒さを忘れて写しました。
【講評】
降りしきる雪の中、一斉に飛び立つキレンジャクの群れがシャープに捉えられています。白い雪に覆われた大地と暗い林に二分された強いコントラストが画面を引き締め、レンジャクたちをいっそう印象的に見せています。
山本亜沙美【モンジャウミウシ】
【撮影者コメント】
ときどきやみつきになってしまう“ウミウシ探し”。ダイブ中ずっと海底を見続けてウミウシを探していることもよくあります。体長数mmの個体から10cmを超える個体までさまざまな大きさのウミウシ。カラフルな色のウミウシを探すのは、まるで海の中の宝石探しのようです。
【講評】
奇怪な姿と艶やかな色使い。ウミウシは種類が多くその多様性が魅力の一つですが、写真のウミウシはその中でもかなりインパクトがある姿をしていますね。海中でのマクロ撮影は難しいと思いますが、確かな技術でまさに宝石のごとく美しく撮影されています。
積田佳世【ダイセンクワガタ(大山鍬形)】
【撮影者コメント】
鳥取県で開催された自然観察指導員講習会で撮影しました。小学校理科の授業以来のルーペにワクワク! 目で見るのとは違い、ルーペを通すとより植物の個性が確認できます。とっても可愛らしいピンクの花とこの形。なぜこの名前が付いたのか、調べる良いきっかけになりました。ルーペで覗いた世界、とっても不思議で興味深い。
【講評】
クワガタはクワガタでも昆虫ではなく植物の「クワガタ」なんですね。あえてルーペを画面に入れることで、撮影者が感じた驚きや感動が、自分もその場にいたかのようにリアルに伝わってきました。
浅野慈英結【夏の出会い】
【撮影者コメント】
真夏のある日、友人と山奥で散策中に出会いました。この若いクマは、夢中で木登りの練習をしているように見えました。メディアでは悪いイメージを持たれがちのクマですが、人の気配があまりない、自然界の中では平和で優しい動物なのだと感じました。私にとって、初めて目撃した野生のツキノワグマで思い出の一枚です。クマの環境に影響しないように静かに遠方から望遠レンズで観察しました。
【講評】
怖がられることの多いクマですが、この写真を見るとまるで隠れんぼをしているような、愛嬌たっぷりの姿に思わず頬が緩みます。あえてクマを画面の中心から外し、周辺の様子が分かるように画面構成したことで、一層臨場感のある作品に仕上がっています。
荒牧敬太郎【オオケマイマイ】
【撮影者コメント】
山間を流れる渓流の岩の上で1匹のカタツムリが這っていることに気付きました。遠目ではあまり見かけない少し平べったいカタツムリだなと思いながら、念のため近づいてよく見ると、殻の周囲に毛が生えていることからオオケマイマイであることが分かりました。
【講評】
体をめいっぱい伸ばし、周囲の様子を探っているかのようなオオケマイマイが素敵です。難しい場面だと思うのですが、構図やピント、露出がしっかり決まっていて、状況にしっかりと対応できる力が感じられます。見る人の印象に残る一枚ですね。
中西啓貴【シマアメンボ】
【撮影者コメント】
渓流にすむ小さなアメンボ。岩間の水流に隔てられた小さな水面に群生していて、常に忙しく動き回っています。そんな中に、餌を捕まえて静かにしている個体がいました。日が射すと、他のアメンボが立てる波紋がプリズムのようになって、川底の小石が映し出されていました。
【講評】
餌となる小昆虫を食べているシマアメンボ。その姿をシャープに捉えながら、透明感のある水と波紋によってどこか幻想的な雰囲気さえ漂っています。動き回る難しい被写体ですが、これ以上ないという一瞬のチャンスを見事に撮影されていますね。
■入賞(ポストカード賞)※50音順
ポストカードを作成します。
川邊良樹【テーブルサンゴ復活】
【撮影者コメント】
石垣島の周囲に広がるテーブルサンゴ。2016年、石垣島と西表島の間に広がる石西礁湖では、海水温上昇による大規模白化現象が起こりました。すぐ近くのこのエリアも被害を受けていましたが、撮影した2021年にはみごとなサンゴ礁が広がっていました。しかし2022年に再び海水温上昇に襲われてしまいました。繰り返される海水温上昇が人類の叡智で1日も早く止められることを願います。それまではその逞しい生命力で耐えしのいで欲しいものです。
【講評】
美しく広がる一面のテーブルサンゴ。撮影されたのはかつて海水温度の上昇によってサンゴが白化した石垣島の海だそうです。このように復活した姿を美しい写真で見られるのは嬉しい限りですが、今もなお危機的な状況とのこと。ぜひこれからも記録と発信を続けてください。
丹羽明仁【晩秋の釧路湿原】
【撮影者コメント】
落葉の樹林帯の散策を楽しみながら展望台に登り切ると、視界が開け日本とは思えない雄大な釧路湿原(北海道)が広がっていました。
眼下には晩秋の湿原を流れる釧路川が見下ろせます。ちょうど一艘のカヌーがのんびりと川を下って行く様子が見られ、しみじみとした旅情に浸ることができました。
【講評】
まるで一幅の風景画を見ているよう。美しい秋の景色の中、川を下るカヌーが一艘。ゆったりと流れる時間がこちらにも伝わってくるようです。蛇行しながら流れる川を右手前から左奥へと配置した奥行き感のある構図も素晴らしく、きわめて完成度の高い写真です。
野口強志【樹液酒場で三者会談】
【撮影者コメント】
群馬県にある「月夜野きのこ園ぐんま昆虫の森・新里」のフィールドで撮りました。クヌギの樹液周りでカブトムシとオオムラサキ三者で何か相談しているようでした。
【講評】
昆虫好きにはたまらないシチュエーション。魚眼レンズで至近距離から撮影されたのでしょうか、適度にデフォルメされたカブトムシとオオムラサキが目前に迫ってくるような、迫力も感じる作品ですね。撮影者の昆虫愛もよく伝わってきました。
橋爪悟司【河川敷の春】
【撮影者コメント】
埼玉県にある川越公園と土手を挟んだ入間川河川敷にキジさんが生息しています。春になると求愛の鳴き声があちらこちらから聞こえてきます。環境が良くなってきたのか、キジさんを見かける範囲が年々広がり、出会うのも珍しくなくなってきました。
【講評】
季節感のある素晴らしい一枚。これはきっと偶然ではなく、撮影者がしっかりと構想を練り、作り上げた作品ではないでしょうか。飛んでいるキジも非常にシャープに捉えられていて、文句なしにいい写真ですね。
肥後真紀【チュウシャクシギ】
【撮影者コメント】
チュウシャクシギは海岸でよく見かけますが、大阪府の淀川河川敷ではシロツメクサが一面に咲いてる所にやって来ます。都会の中というのを忘れさせてもらえます。まるでおとぎの国のようでした。
【講評】
幻想的で美しい写真ですね。シロツメクサの花の中にチュウシャクシギとは珍しいと思いますが、その状況を生かしたアングル選び、前景・背景の表現もお見事です。
■佳作 ※50音順
会報表紙賞と競り合った作品、目の付けどころがすてきな作品やおもしろい瞬間を捉えた作品を選びました。
木村公介【水の惑星】
【撮影者コメント】
真夏の都心。ちいさないのちを探し歩き、喉の渇いた私。水の出ない公園の蛇口を見つけると、そこには私と同じように水を求める同じ惑星のちいさないのちがありました。
小谷明日香【右のハサミとカメラ目線】
【撮影者コメント】
和名のついていないエビです。チャツボボヤの中で生活をしています。今回、ホヤの外にでていて早くホヤの中に入りたいわけですが、入口がどんどんふさがるため、片方のハサミで穴がふさがらないように阻止をしています。そんな中でもカメラ目線であることが面白いな、と思った1枚です。
迫田 拓【コフキゾウムシ】
【撮影者コメント】
クズの葉の上で見つけた小さなゾウムシ。目も”落とし物”も、まん丸。
西山亜希子【オコジョ】
【撮影者コメント】
普段オコジョに出会える確率は低いのですが、真っ赤な紅葉のロケーションで出会いたいとずっと思っていました。動きがとても素早い生きものなので、カメラで捉えるのが難しかったのですが、思いが叶った瞬間でした。
三田村 瞬【眩耀】
【撮影者コメント】
ケヤマハンノキの内部から「カリカリカリ…」と音を立て、齧り出て来たゴマダラカミキリ。昨年の内に時期・時間・場所を把握しておき、当日早朝から待って撮りました。暗闇の中から出て来たゴマダラカミキリの眼には、新しい世界がさぞ眩しく輝いて映ったことでしょう。