2022.12.26(2022.12.27 更新)
ニホンジカの低密度管理に向けた取り組み
調査報告
専門度:
▲定点センサーカメラ(小出俣)に写ったGPS装着個体(2022年6月15日撮影)
テーマ:モニタリング獣害問題里山の保全
フィールド:森林
群馬県みなかみ町で進める赤谷プロジェクトでは、全国で被害を及ぼしているニホンジカの爆発的な増加を未然に防ぐため、継続的なモニタリング調査や鉱塩による誘引捕獲試験など、効果的な捕獲手法と体制確立を目指しています。
捕獲効率が高い場所の捜索
2021年6月には、赤谷の森でメスの成獣にGPSを装着しました。その結果、同年12月に越冬地とみられる大峰山の東の麓へ直線距離約7km移動し、2022年4月上旬に赤谷の森に帰ってくる様子が確認されました。越冬地は、みなかみユネスコエコパーク(以下BR)で生物多様性の高い里地として調査していた美しい棚田が維持されている集落です。GPSによって、日中は大峰山の鳥獣保護区内に生息し、夜間に保護区外の集落へ出てくる動きも把握されました。
地域協議会とともに、越冬地集落内でのライトセンサス調査により夜間の出現状況を調べたところ、GPS装着個体が赤谷の森へ帰った後の4月下旬も10頭近くの群れが確認されましたが、8月には全く確認されませんでした。これらの調査により、低密度下でも捕獲効率が高いと期待される場所を把握することができます。
赤谷プロジェクトでは、みなかみBRへの貢献を謳っています。2022年10月には専門家を含む関係者と町内の視察を行い、シカの影響により、既に牧草地での収量低下や湿地の乾燥化、沢沿いの小径木の樹皮剥ぎなどが生じている場所があることが共通認識されました。専門家からは、広域的な状況把握を急ぎ、捕獲戦略を意識して取り組みを進める必要があると指摘されています。科学的データを活用し、多様な人々と実効性のある対策を進めていきます。
▲GPS首輪発信器を装着したニホンジカの移動軌跡(赤谷森林ふれあい推進センター提供)
株式会社サーキットデザイン:ANIMAL MAP
※地図は国土地理院地図を一部加工して使用しています。
担当者から一言
リポーター
生物多様性保全部 武田裕希子
以前住んでいた京都で目の当たりにしたシカによる壊滅的な食害とそこで奮闘する方々の想いを、みなかみでの低密度管理の確立につなげます。
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