2022.12.21(2023.01.10 更新)
【配布資料】今日から始める自然観察「アカガエルに会いに行こう」
観察ノウハウ
専門度:
テーマ:環境教育自然観察ツール里山の保全
<会報『自然保護』No.591より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
寒い冬の最中、誰よりも早く冬眠から目覚めるアカガエル。
雨降り後には、普段は見つけにくいアカガエルたちを、よく観察できる絶好のチャンスです! アカガエルたちはこんな寒いときに一体何をしているのか?しっかり防寒をして、アカガエルに会いに出かけてみましょう。
文:休場聖美(モニタリングサイト1000里地調査アシスタント)
写真:前田憲男 イラスト:蛙ノ庄
早春に水辺で観察できるアカガエルには、主にニホンアカガエルとヤマアカガエルがいます。姿はそっくりで捕まえて見ないと判別は難しいですが、水場がある辺りから「ニャッニャニャ」と鳴き声が聞こえてきたらヤマアカガエルがいます。ヤマアカガエルは、鳴き声を大きく響かせる〝鳴のう〟がありますが、ニホンアカガエルにはないので「キュククク」と静かな鳴き声です。鳴き声のする方向に、そっと近づいてみましょう。
田んぼや浅い池、流れのない水路など、10㎝くらいの深さがある水場に、ポツポツとオスが座っていたり、オスとメスがくっついていたりするのが見られます。また、既に産卵された卵塊(数百~千個ほどの卵の集まり)もあるかもしれません。卵塊があれば、そっと手で下からすくってみてください。生まれたては固めのニホンアカガエルの卵でも、時間が経つとヤマアカガエルの卵のようにどろりとしてしまいますが、卵一つ一つがぶちぶち切れる感じがあり、区別できることもあります。
見た目以上に深いこともあるので、田んぼや池の中までは入らずに、外から手の届く範囲で観察しましょう。カエルは夜間の方が動きも鳴き声も活発ですが、昼間だと卵やオタマジャクシが観察しやすく、ときどき鳴き声が聞こえることもあります。
アカガエルの一年(関東近郊の場合)
気温によって繁殖の開始時期が前後するため、九州・四国地方では12月中、近畿地方では1月ごろ、東北地方では4月ごろにずれます。
寒いときに卵を産む
▲ヤマアカガエルの産卵。メスの背中にオスが乗っている
まだ寒い時期に、アカガエルは冬眠から目覚め、繁殖のために田んぼなどの水場に集まります。寒くてヘビなどの天敵が活動できず襲われる心配がないことや、オタマジャクシが、他種のオタマジャクシがいないうちに餌を食べて大きくなれることなど、良いことがあるのです。
また眠りにつく春眠
▲越冬中のニホンアカガエル
繁殖が終わると疲れてお腹が空いてますが、まだ虫たちが起きていないので、暖かくなるまでまた眠ります。冬ではなく春に眠るので、これを春眠と呼びます。春眠から目覚めると、餌を求めてニホンアカガエルは田んぼ周りの草地などに、ヤマアカガエルは山の方に移動します。
アカガエルくらべ
湿地と森林や草地の2種類の環境が必要なアカガエル。水域と陸域の連続性を捉える指標になります。NACS-Jが取り組む、環境省の「モニタリングサイト1000里地調査」の調査対象にもなっています。
アカガエルが暮らす場所
これまでアカガエルは、冬でも水が溜まる浅い水場を好んで、主に田んぼで繁殖をしてきました。しかし近年は、田んぼ自体も減少し、繁殖場所から森への移動の際に大きな道路や側溝に阻まれて、アカガエルが減ってきています。アカガエルたちの暮らしを観察しながら、これからもアカガエルたちと一緒に暮らすために大切なことを考えてみてください。
参考になるおすすめ本
- 『見つけて検索!日本のカエルフィールドガイド』文一総合出版 カエル探偵団 編
本コーナーは、エプソン純正カートリッジ引取回収サービスを利用されたお客様のポイント寄付によるご支援をいただいております。