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2022.12.15(2023.09.20 更新)

大詰めに向けて交渉再開したCOP15と企業活動に関する動き(12月13日の進行)

報告

専門度:専門度4

Nature Action 100 Soft Launch:COP15 Dec 2022

テーマ:国際生物多様性条約

フィールド:国際会議COP15

11日・12日の交渉休憩をはさみ、13日よりCOP15の第2週目が始まりました。

今後、15日から17日にかけて開かれる各国の閣僚級(環境大臣や政務官など)会合に向けて、政府団の中にも局長級の合流が見られるようになりました。IUCNのブルーノ・オベール事務局長の姿も会議場でお見掛けしました。

ここでは、13日にみられた交渉の進行と、企業活動に関するイベントやドラマティックな交渉場面をご紹介します。

男性3名、女性3名のパネリストの写真ビジネス関係フォーラムの一例。ジェンダバランスも考慮されている

第1作業部会と第2作業部会の進捗

この日、主にポスト2020枠組み(GBF)を議論する第1作業部会は開催されず、引き続き、特定議題を集中的に議論するためのコンタクトグループを中心に議論を継続していました。

ポスト2020枠組みの行動目標18、19.1、14、15の議論が午前から午後にかけて行われました。その他、「DSI(電子化された塩基配列情報の扱い)」、「資源動員」、「立案・報告・レビュー」の議題がさらに夜にかけて行われました。

コンタクトグループ:特定議題を集中的に議論するために、関係する国関係者のみで設定される会合。

第2作業部会は、個別議題や名古屋議定書、カルタヘナ議定書を扱う部会ですが、13日には、2日間の休み期間の調整の結果が報告され、それを反映した「外来種」、「IPBES」、「生物多様性と農業」、「大西洋北東海域の重要海域」、「保全と持続可能な利用」、「重要海域(EBSA)」の今後の作業、カルタヘナ議定書資金メカニズムなどの会議文書(CRP:Conference Room Paper)が採択されました。また、夜のセッションで、「気候変動」と「合成生物学」の議題のコンタクトグループが議論されました。

サイドイベント:企業活動のネイチャーポジティブに向けた取組みの紹介

この日、お昼のお弁当目当てで立ち寄ったサイドイベントが「当たり」のサイドイベントでした。

「森林漁業環境省」、「南アフリカ生物多様性国立研究所(SANBI)」、「バードライフ」などが共同開発し、“EADAS(環境アセスメントデータベース)*”と生物多様性リスク測定ツール“IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool)*”を組み合わせたような仕組みと、生物多様性フットプリントという測定手法を用いて、企業のネイチャーポジティブに挑戦しようというもので、統合的なシステムが構築されていることに驚きました。

企業活動によって生じる生物多様性のロスについて、ミティゲーションヒエラルキーの各種段階措置を取った上でも残る影響を、周辺の土地の信託管理(Stewerdship)制度を使ってNGOの活動を支援し、その成果を測定しながら、ポジティブを目指すという王道の仕組みが出来つつあるそうです。

まだ海洋については、そこまでのシステムができていないようですが、全く同じ内容を日本で話してもらいたいと感じました。

EADAS:環境省の運用する環境アセスメントデータベース。環境アセスメントにおいて地域特性を把握するために必要となる自然環境や社会環境の情報を、地図上で閲覧できる地理情報システム(GIS)として提供している。
https://www2.env.go.jp/eiadb/ebidbs/
IBAT:Integrated Biodiversity Assessment Toolの略。IBATアライアンス(バードライフ、コンサベーション・インターナショナル、IUCNおよびUNEP-WCMC)が運用。
https://www.ibat-alliance.org/

行動目標15「企業や金融活動と生物多様性」におけるドラマティックな交渉場面

13日は、行動目標15「企業や金融活動と生物多様性」の交渉が非常にエキサイティングでした。

焦点の一つが、企業に求める、企業活動による生物多様性への影響に関する情報開示を、2030年までに “ 義務的要求(Mandetory Requirement)” とするかどうかという論点があります。締約国からは、「(小さな企業まではやりきれないので)対象を大企業や多国籍企業に絞れば良いのではないか」とか、「立法措置を伴うものは不可能なので “ 義務的(Mandetory)” という表現は避けたい」「 “ 必要な要求 ” または “ 適切な要求 ” などの弱い表現ではどうか」など様々な消極的な意見が交わされ交渉が暗礁に乗り上げていました。

その時に、ある締約国の提案で、Business For Natureという企業グループに発言の機会が回り(コンタクトグループの場では、締約国の国代表以外(オブザーバー)の発言は全く許可されないことがほとんど)、「2030年までの情報開示を “ 義務的(Mandetory)” にして、公平な競争環境を整えることを望む声が330以上もの企業から届いていて、今こそ、生物多様性の危機のために意欲度を上げるべきだ」というスピーチがなされたのです。それを受けた、傍聴席全体からの割れんばかりの同意の拍手が会場の雰囲気を変え、「“ 義務的要求によるものも含む(including with Mandetory requirement)” なら同意できる」との歩み寄りが引き出されました。

ここまでドラマティックなものは多くはありませんが、少しずつ、歩み寄りの精神から「意見を取り下げる、合意できる表現としてこんなのはどうだろうか?」といった発言が聞こえるようになりました。しかし、まだまだ、合意には十分ではありません。

いよいよ、15日より、閣僚級会合がはじまります。
ポスト2020枠組み(GBF)が、より積極的に生物多様性を守る手立てとなり、締約国によって合意がなされるのか、注目が集まります。

日本自然保護協会 保護・教育部 国際担当
国際自然保護連合日本委員会事務局長
 道家哲平


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