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2022.12.14(2023.09.20 更新)

折り返しを迎えたCOP15(12月10日の進行)

報告

専門度:専門度5

折り鶴の写真

テーマ:国際生物多様性条約

フィールド:国際会議COP15

カナダ・モントリオールで開催中の生物多様性条約COP15も、12日間ある日程の4日目が終わりました(12月10日時点)。
11日(日)・12日(月)と様々なフォーラムが開かれ、その後、残りの6日間連続的に交渉が再開されるため、ちょっと変則的ですが「中間」を迎えた形です。

少しずつ参加者も増え、いろんなイベントも活気づいてきました。CEPAフェア会場では、1日がけで、生物多様性世界コミュニケーションフォーラム(Global Biodiversity Comunication Forum)が開催され、日本からも、ゲーム要素を盛り込んだ市民科学の取組みとして、バイオームの渥美さんや、NACS-J道家より生物多様性MY行動宣言の事例を発表する機会などもありました。

フォーラムで発表する道家の写真

午後には、第1週の成果を振り返る本会議が開かれ、オブザーバー中心に声明が読み上げられたのち、2つの作業部会の報告を受け、検討の済んだ決議の採択が行われました。

第1作業部会では、主に、ポスト2020枠組み(GBF)関連の決定起草が任務で、第2作業部会では、主にGBF以外のカルタヘナ議定書や名古屋議定書をはじめとした各議題を議論しています。

第1作業部会の報告:主にポスト2020枠組み(GBF)に関する議論

全議題について検討や検討のための進め方の確認を終え、名古屋議定書関連の議論も行いました。準備会合からの提言を基に、直接CRPを作成した議題やコンタクトグループを設置し検討していることが報告されました。引き続き、検討事項が多いものの、多くのCRP文書が作成されているとの報告です。

CRP:Conference Room Paperの略。締約国の意見を集約して作成された決定案。
コンタクトグループ:特定議題を集中的に議論するために、関係する国関係者のみで設定される会合。

他方、「ポスト2020枠組み(GBF)」は、継続的に審議を行っており、A~Kまでの12章のうち、A(背景)、B(目的)、Bbis(基本原則)、C(SDGsとの関係)、D(変化の理論 ※タイトル含めて変更予定)、E(ビジョンとミッション)についての協議では、モニタリング指標-付属文書1だけを残し、メイン文書はブラケットを外せましたが、引き続き行動目標の進捗を測るのに用いられるヘッドライン指標については作業継続していることが報告されました。

ブラケット:まだ合意がなされない文言箇所に [ ] をつけること。“ブラケットが外れる”は、その箇所が合意されたということ。
ヘッドライン指標:ポスト2020枠組み(GBF)の各ゴールや行動目標について、各国の国内の進捗や世界的な進捗を計測するために活用できる指標。国家間でも比較可能なものとして提案されている。(ただし、現時点では不完全なものも含まれる。)全締約国が国別報告書で使用することで、世界レベルでの進捗を集約しやすくする目的。

「電子化された塩基配列情報の扱い(DSI)」については様々なステークホルダーの意見が多岐に渡ることから、議長の友会合(FoC)を設置し、能力養成や技術協力などについて、可能な選択肢が何かの議論を重ねていることが報告されています。

「資源動員」については、資源動員の後継戦略について検討しているとのことです。

「能力養成」や「科学技術協力・移転」については、多くのブラケットを外せましたが、継続審議事項について検討しています。

また、「立案」や「モニタリング」、「評価の仕組み」については、NBSAPガイダンスを合意し、国別報告書のテンプレも大枠合意しました。一方、付属書3はCOP15では議論しない可能性が高く、付属書4はまだ決定本体も議論できていないと進捗の厳しさを伺わせる報告でした。

第2作業部会の報告:主にGBF以外の各議題

6つのセッションを実施し、各国の協力もあって前進があり、多くの議題について会議文書を決定案(L文章*)まで進めることが出来たとの報告がありました。

L文書:Limited CirculationのL。決定案で、法的チェックや文法チェックなどを残すのみとなった文章

「農業」については、多くのブラケットが外せましたが、行動計画がまだ合意できていません。「合成生物学」は良い進展があり、ホリゾンタルスキャニングの頻度等も議論できました。「リスクアセスメント」は、作業がかなり進みました。「気候変動」についての議論が、歩みが遅く、9つある文章の内7つにブラケット、そのうち2つが外せただけに留まりました。「健康と生物多様性」は、CRP作成に向けて作業中であるとの報告でした。

中間本会合での決定事項

COP決定は、20議題のうち5議題の決定を採択できました。CP-MOP14は、11議題の内7つを採択、NP-MOP4は、10議題の内5議題を採択しました。

2つのMOPについては、解決していない議題が非常に多く、解決してない議題に、多国間条約や機関との連携、資金関係の議題が残っているのがよくわかります。

決定事項一覧(カルタヘナ議定書関係)

  • モニタリングと報告(第 33 条)
  • 議定書の有効性の評価とレビュー(第35条)及び2011年から2020年までのバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書戦略計画の最終評価
  • バイオセーフティ・クリアリングハウスの運営・活動(第20条)
  • 条約及びその議定書の下での構造及びプロセスの有効性の審査
  • リスク評価とリスク管理(第15条および第16条)
  • 遺伝子組換え生物の検出と特定
  • 社会経済的配慮(第26条)
  • 責任と救済に関する名古屋-クアラルンプール補足議定書

決定事項一覧(名古屋議定書関係)

  • 資金メカニズムおよびリソース(第25条)。
  • 能力構築及び能力開発を支援するための措置(第22条)及び遺伝資源及び関連する伝統的知識の重要性に対する認識を高めるための措置(第21条)。
  • Access and Benefit-sharing Clearing-House 及び情報共有(第 14 条)。
  • モニタリングと報告(第 29 条)。
  • 構造及びプロセスの有効性の検討

国際会議まめ知識

カルタヘナ議定書(CP)とは

正式名称「生物の多様性に関する条約のバイオセーフティに関するカルタヘナ議定書」。この議定書は,遺伝子組換え生物等が生物の多様性の保全及び持続可能な利用に及ぼす可能性のある悪影響を防止するための措置を規定しています。

名古屋議定書(NP)とは

正式名称「生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書」。「遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分(ABS)」の着実な実施を確保するための手続を定めています。

日本自然保護協会 保護・教育部 国際担当
国際自然保護連合日本委員会事務局長
 道家哲平


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日本自然保護協会(NACS-J)では、会員の方に限定で、道家がCOP15の詳細を解説したNACS-J市民カレッジ107「COP15開催前に知っておきたい注目ポイント」(2022年10月28日開催)のアーカイブ動画を公開しています。
下記ページからご覧いただけます。

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