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2022.10.28(2022.12.23 更新)

【配布資料】今日から始める自然観察「ミミズは種類も暮らしぶりもさまざま」

観察ノウハウ

専門度:専門度2

テーマ:自然観察ツール里山の保全環境教育

フィールド:公園森林

【今日から始める自然観察】ミミズは種類も暮らしぶりもさまざま(PDF/1.8MB)
<会報『自然保護』No.590より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。

誰もが知っている動物、ミミズ。でも、ミミズにはたくさんの種類がいて、暮らしぶりも少し違っているのです。実は日本には少なくとも約180種類のミミズが暮らしています。たくさんの新種が見つかるので、研究が進めば日本だけで500種類を超えると予想されています。ここでは、ミミズを深掘りします。

南谷幸雄 栃木県立博物館 昆虫を除く無脊椎動物担当)


地表のミミズ、地中のミミズ

ミミズは、暮らしている場所と食べ物で3タイプに分けられます。表層性種は、落葉中で暮らしており、少し分解の進んだ落ち葉を食べます。地中性種は、土壌中で暮らしていて、有機物に富んだ土壌を食べます。表層採食地中性種は、土壌中で暮らしているものの、地表に体を乗り出して落ち葉を引きずり込んで食べます。

この暮らしぶりに対応して、寿命も違います。表層性種は卵で越冬し、春にふ化して、夏までに成熟し、交尾・産卵後の初冬には死滅します。地中では越冬できますので、ふ化・死亡の時期は決まっておらず、成熟するのに1年以上かかる種類もいます。

体はたくさんの指輪のような、「体節」がつながってできています。各体節には、毛が生えており、体を動かすときには、この毛を引っ掛けて支えにして動きます。

ミミズは雌雄同体で、同時にオスとメスの機能を持っています。環帯(いわゆる首輪)は、ミミズが成熟した証。成熟したミミズ同士が出合うと交尾して、互いに自分の精子を受け渡しします。交尾が終わった後、乾いたら卵の殻になる粘液が環帯から分泌され、これを脱ぎながら、自分の卵子と交尾相手の精子を粘液の中に入れ、口から脱ぎきったら卵のできあがり!

ミミズは土の中ではかなり大きな動物です。ミミズが暮らしているだけで、土壌中の環境を大きく変化させます。ミミズが掘った孔は、空気や水、そしてもっと小さな動物の通り道。ミミズの体内や糞塊(土壌団粒)では、微生物が活発に働いて、有機物を分解します。さらに、体に硬いところのないミミズは、モグラやツグミ、オサムシなどにとって、消化しやすいとても良いエサになります。ミミズは落ち葉の下で、生態系を支えている大事な生きものなのです。

ミミズの目や口は?

ミミズには目がありません。皮膚に散在する視細胞で、明るさ程度は分かるようです。
動くときには、口の先にある舌のような部分(写真の丸の中で、口の先の白っぽく見える部分)を広げたり、左右に動かしたりして、自分の周りに何があるのかを探りながら動きます。

ミミズの画像

背と腹はどっち?

ミミズの背面と腹面。背中は黒っぽく、腹は白っぽいので、見分けは簡単。しばらく経つと、背面を上にして動き出します。

ミミズの背面と腹面比較画像

毛が生えている

体はたくさんの体節がつながってできている。各体節には、フトミミズ科では約50〜100本の、ツリミミズ科やジュズイミミズ科では8本の毛が生えています。
毛の生え方

姿は見えなくても……

ミミズの糞塊。森の中で落ち葉をどけると、たくさんの糞塊が見つかります。
ミミズの糞塊の画像

環帯で科が分かる!

フトミミズ科とツリミミズ科の環帯の位置

:環帯が体を一周しているフトミミズ(アジアを中心に分布)。日本で簡単に見つかるミミズのほとんどがフトミミズ科。環帯が第14〜16体節にあり、口に近いところにあるように見える。
:環帯が腹で途切れるツリミミズ科(欧米を中心に分布)。数が少ないので、見つけるとちょっとうれしい。環帯は第22体節以降にあるため、やや後ろ寄り。(フトミミズ科、ツリミミズ科の他に数は少ないが6科のミミズがいる)

メスでもありオスでもある

環帯の後ろの腹面に、左右一対の雄性孔を持っています。ただし、身近な公園などで見つかるミミズの多くは、雄性孔が退化しており、交尾せずに産卵し、子ミミズが生まれます。

雄性孔と雌性孔の画像

交尾するミミズの画像交尾するミミズ
ミミズが出合うと、逆向きになって腹面をぴったりと付け、相手の精子をもらいつつ、自分の精子を相手に渡します。

シマミミズの卵の画像シマミミズの卵
フトミミズの卵はもっと黒っぽい。

こんなにきれいなミミズも!

フトスジミミズの画像

発光しているフトスジミミズの写真ホタルミミズ(ムカシフトミミズ科)
成熟しても体長1cmほどのとても小さなミミズ。暗い場所では、粘液が光る。東北から九州に分布。発見は主に冬で、夏にはほとんど見つからない。

シーボルトミミズの画像シーボルトミミズ(フトミミズ科)
四国や九州南部ではふつうに見られる、体長30cmにも達する大きいミミズ。中部から九州に分布。青い体に金属光沢が美しい!

ホタルミミズの画像フトスジミミズ(フトミミズ科)
北海道から⿅児島県まで、公園などのちょっとした森でもふつうに⾒られる。しま模様がとってもきれい!

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