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2022.08.31(2022.08.31 更新)

【配布資料】今日から始める自然観察「野鳥の行動観察は発見の連続!」

観察ノウハウ

専門度:専門度1

今日からはじめる自然観察ページの画像

テーマ:環境教育自然観察ツール里山の保全

フィールド:森林公園

【今日から始める自然観察】野鳥の行動観察は発見の連続!(PDF/1MB)
<会報『自然保護』No.589より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可・抜粋利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。

自然観察を楽しむコツは五感を駆使すること。単に頭で知識を覚えるよりずっと素晴らしい体験になります。野鳥を観察するときには、視覚と聴覚を研ぎ澄ませ、その行動を何だろう、なぜだろうと問いながら観察を深めます。見つけて見分け、写真を撮って終わるのではなく、とにかくよく観ることです。

高野 丈 自然写真家 自然観察指導員)


あなたも遭遇できるかも?!秋に見つけた野鳥の行動

シジュウカラやカルガモなど、身近な野鳥の名前は多くの人が知っています。でも、それらがどんな鳥かということを知っている人は、意外に少ないと思います。どんなものを食べているか。何をしているか。じっくりと観察すると、今まで知らなかったことをたくさん発見できます。

▲落ちたドングリを樹上にもっていったシジュウカラ。ドングリを食べるのかと思いきや?

▲ツツドリやホトトギスは警戒心が強く、なかなか目の前に姿を現してくれないが、秋にサクラを見てまわると、見つけられることがある。彼らのお目当てはモンクロシャチホコの幼虫だ。幼虫が食べたボロボロの葉や、木の下にたくさん落ちているふんを目印に、桜の木を見てみよう。

シジュウカラはドングリも食べる?

シジュウカラは樹上でよく動き回り、葉や枝を裏側まで丹念に見て虫を見つけます。木の実を食べることもありますが、おもに昆虫やクモを食べます。そんなシジュウカラが、地上に落ちていたドングリを拾って、樹上に上がりました。そういう場面を見るのは初めてだったので、発見を喜びながら観察を継続。ドングリをどのように食べるのか、観察してみようと思いました。

ところが、ドングリを突いていたシジュウカラは、中から虫を取り出して食べたのです。私は予想が外れて驚くとともに、なるほどとも思いました。やはりシジュウカラは、植物質の食べ物よりも虫が好きなのだと。そして、新たな疑問が生じました。シジュウカラはどうやってドングリの中に虫がいることを知り得たのか。また、ドングリの中の虫の位置をどのように探ったのか。発見は新たな謎を呼びました。

野鳥観察では、美しい鳥、かわいい鳥、かっこいい鳥、珍しい鳥ばかりが注目を集め、身近な鳥たちへの関心は高くないように感じます。しかも多くの人が写真を撮ることに終始しがちで、観察がおろそかになっているようにも思えます。事実、双眼鏡を提げていない人をよく見かけます。今回紹介した例のように、知っているつもりの身近な鳥でも知らないことだらけ。よく観ることで興味深い発見があり、観察や撮影をより楽しむことができるのです。

▲真夏の暑さが残るころ、台風が通過したわけでもないのに、枝ごと落ちているミズキの実を見かけることがある。果実は未熟。よく観察すると、犯人はカラスだということが分かるだろう。この時期なぜか、完全に熟す前の未熟な果実を採食する。

野鳥を行動観察するコツ

距離をとる。

野鳥は近づきすぎると警戒し、逃げる準備にかかる。こうなると自然な行動を観察することはできない。距離をとって観察しよう。距離の目安も鳥の動きを観察することで分かる。動きが止まり、頭を上げてこちらを見るのは逃げる構え。近づきすぎだ。

静止画の撮影は最小限に。

写真を撮影するとつい近づきがちになるし、良い構図を探すのに夢中になり、周囲の状況が見えなくなって、観察がおろそかになる。できるだけ観察に時間をかけよう。

動画を撮る。

記録するなら、距離に気を付けながら動画を撮ろう。ファインダーを覗いたまま動画を撮影できるミラーレスカメラなら、観察しながら記録できる。気に入った場面を静止画に切り出せるし、目視で確認しきれなかったことを、後から再生して確認できるのも利点だ。

じっくりと観察することで見つけた事例

プレゼントの中身より、気持ちがたいせつ

冬の寒い朝、ハシブトガラスのつがいが霜柱を食べていた。北国でよく見られる雪を食べる行動と同じで、水分補給になる。つがいの2羽とも自ら霜柱を食べていたが、ある時点からオスと思われる個体がメスと思われる個体に対して、なんと霜柱を与え始めた。自分で食べられるにもかかわらず、メスは給餌を求め、オスも応じた。その目的は、気持ちを確かめること。たいせつなのは何かを与える行動であって、上等なごちそうをプレゼントする必要はないのだ。

参考になるおすすめ本

  • 『探す、出あう、楽しむ身近な野鳥図鑑』監修:樋口広芳 著・写真:髙野 丈
    発行:ナツメ社

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