2022.08.08(2022.09.02 更新)
シンポジウム「御嶽山の価値と未来 ~国立・国定公園に向けて~」を開催しました!
イベント報告
専門度:
▲シンポジウムの会場となった木曽町立開田中学校から望む御嶽山。
2022年6月18日(土)、長野県の木曽町立開田中学校体育館でシンポジウム「御嶽山の価値と未来〜国立・国定公園に向けて〜」を木曽町・王滝村・NACS-Jの主催で開催しました。国・県・地方自治体、そして御嶽山に関わる自然保護団体や地域の方々が一堂に会し、国立・国定公園化への機運を高める場となりました。
長野県と岐阜県にまたがる御嶽山は、標高3067mの独立峰で、希少な高山植物やライチョウが生息するなど生物地理学や生態学上極めて重要な自然環境を有しています。1979年と2014年には大規模な噴火による火山災害をもたらした活火山でもあります。また古くから山岳宗教の根付いた霊山であり、歴史や文化の面からも独自性の極めて強い山岳です。唯一無二とも言える貴重な山岳環境であるにも関わらず、これまで国立・国定公園には指定されていませんでした。標高3000m以上の山岳23座の中で唯一指定から取り残されたのが、この御嶽山です。過去には大規模なスキー場など多くのリゾート開発で自然が改変されてきた歴史もあり、希少な自然環境の保全と持続的な利用を図る上で、一刻も早い国立・国定公園への指定が望まれてきました。
NACS-Jは今年2月4日、飛騨高山ふるさと歩こう会、一般財団法人中村浩志国際鳥類研究所と連名で、現在の長野・岐阜両県の県立自然公園から国立・国定公園への昇格を求める要望書を環境大臣や長野県・岐阜県の知事に提出しました。
早期の国定公園昇格への一歩
こうした中、保護と利用のあり方を考える「シンポジウム御嶽山の価値と未来」を開催。地元住民を中心に約100名の来場者を集め、原久仁男氏(木曽町長)の言葉で開会。「日本の山岳信仰と御嶽の宗教文化」と題した中山郁教授(皇學館大学)の基調講演では、御嶽山独自の人と自然との関わりについて学びました。続くパネルディスカッションでは、熊倉基之氏(環境省)、稲垣 康氏(木曽町)、小野木三郎氏(飛騨高山ふるさとを歩こう会)のお三方による話題提供を受け、「御嶽山の国立・国定公園への昇格に向けて」と題した議論が交わされました。
国や県、自治体などの関係者が一堂に会し、地域住民の見守る中で国立・国定公園指定に向けた共通の意思を確認できたことは、当シンポジウムの大きな成果となりました。早期の国定公園の昇格に向けて、県境を越えた行政や国の連携が重要で、NACS-Jも協力していきます。(文・写真:若林 輝)
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▲絶滅危惧ⅠB類のライチョウ(写真:小野木三郎)
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▲基調講演を行う皇學館大学の中山郁教授。スライドを用い、長い時代を通じて人が関わり続けてきた御嶽山の魅力と大切さを熱弁。
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▲パネルディスカッションでは、まず目指すのは国定公園への昇格という今後の目標から、周囲にある廃業しているスキー場の植生回復や草原管理も視野に入れたエリア拡張の可能性、観光への期待、などについて話し合った。(写真左から、NACS-J・大野正人、環境省自然環境局国立公園課長・熊倉基之氏、木曽町環境協議会住民運動部会長・稲垣康氏、飛騨高山ふるさとを歩こう会会長・小野木三郎氏)
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▲当日は地元テレビ局や新聞社など報道関係者が取材に訪れ、複数のメディアで取り上げられた。地元の期待が高いことが分かる。
シンポジウム動画と資料
●プログラム
1)開会挨拶:亀山 章(NACS-J理事長)、原 久仁男(木曽町長)、國島芳明(高山市長)
2)基調講演:中山 郁(皇學館大学教授、宗教学)「日本の山岳信仰と御嶽の宗教文化」
3)パネルディスカッション
<話題提供>
熊倉基之(環境省自然環境局国立公園課長)「国立・国定公園の今後の役割と発展」
稲垣 康(木曽町環境協議会住民運動部会長)「木曽町開田高原における保全活動の取組み」
小野木三郎(飛騨高山ふるさとを歩こう会会長)「御嶽山の価値と自然保護の課題」
<ディスカッション>
テーマ「御嶽山の国立・国定公園への昇格に向けて」
4)閉会挨拶:亀山 章(NACS-J理事長)、越原道廣(王滝村長)
●シンポジウム動画
●シンポジウム資料
国立・国定公園の役割と発展(熊倉基之・環境省自然環境局国立公園課長)
●参考記事
・報告記事「御嶽山の国立・国定公園への昇格を要望」
・御嶽山の国立・国定公園への昇格を求める要望書を提出
担当者から一言
保護・教育部 大野正人
環境省が今年6月に「国立・国定公園の新規指定・大規模拡張候補地」を公表し、その中に御嶽山も盛り込まれたことで、このシンポジウムでは「国定公園の新規指定」の実現性に向けたキックオフの機会になりました。