2022.06.29(2022.07.01 更新)
外来生物法が改正! 注目点は?
解説
専門度:
▲オオクチバス(写真:環境省提供)
テーマ:生息環境保全外来種
フィールド:外来生物法規制
「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」(外来生物法)の法改正が、第208回通常国会で審議されました。大きな法改正のポイントとしては、①ヒアリ類を想定して、国内への侵入防止のために「要緊急対策特定生物」を指定して検査体制などを強化すること、②広く一般に飼育されているアメリカザリガニやアカミミガメの対策のために規制手法を整備すること、③国と地方公共団体による防除を円滑化することが挙げられます。
②については、種ごとに政令で定める規制のうち一部(輸入、販売、放出など)のみの適用が可能になり、外来生物に指定されたことでペットを野外に捨てる人が増えないよう、個人での飼育は許可手続きなく継続できる方向で検討されています。
NACS-Jが2003年、2013年に行った「自然しらべ」で、観察されたカメのうち6割以上をアカミミガメが占めていた結果から、輸入と流通の規制の必要性を2014年に環境省に求め意見交換を続け、今回の法改正に向けた「外来生物対策のあり方検討会」でも、規制の一部をかける新たな指定カテゴリーの創設を提案してきました。これらの調査と提言活動によって、具体的な法改正が実現しました。
オオクチバスに頼らない生業の在り方へ
オオクチバス・コクチバスは、未だに全国で違法放流により生息地が増えています。「かいぼり」などで地域で水辺の環境保全と外来集駆除を行ったにもかかわらず、再び放流される事例もあります。また、山梨県の西湖、河口湖、山中湖、神奈川県の芦ノ湖の4つの湖では、オオクチバスが「第五種共同漁業権」の対象として、「生業の維持」を理由に知事による漁業権の免許が行われています。
これらの問題を全国ブラックバス防除市民ネットワークのメンバーと連携の上、衆議院・参議院の環境委員会の議員に要請・ロビイングをし、このブラックバス問題を法改正審議で野党議員から質問してもらいました。
その結果、水産庁からは「放流量の削減や代替種の育成など、オオクチバスに頼らない生業の在り方について」各県に必要な指導助言を行っていくことや、山口環境大臣から「平仄(条理や道筋の意味)を合わせてやっていきたい」という答弁を得ることができました。また、特定外来生物を対象とした漁業権の在り方やオオクチバス対策の方針を見直し、対策の実効性を高めることが、附帯決議に明記されました。
附帯決議(衆議院・参議院の環境委員会)
六、特定外来生物オオクチバス・コクチバスによる生態系や漁業への被害の実態と違法放流の実態を把握するとともに、地方公共団体及び民間団体等と連携して、違法放流の撲滅を目指した対策と防除の取り組みを強化すること。また、特定外来生物を対象とした漁業権の在り方や「オオクチバス等に係る防除の指針」等のオオクチバス対策の方針を見直し、対策の実効性を高めること。
七、アメリカザリガニやアカミミガメは、既に広く一般に飼育されている状況を鑑み、特定外来生物への指定を検討する場合には、野外への放出を防ぐため、新たな規制内容を広範に周知させるなど、学校教育等の機会を捉えつつ、外来種問題について普及啓発を一層強化すること。また、こうしたアメリカザリガニやアカミミガメの飼育を通常の特定外来生物と同様に制限しない場合には、生態系等に係る被害が生じるおそれを解消することができないことから、無責任な飼育をなくす方向に誘導すること。
附帯決議とは
国会の衆議院及び参議院の委員会が法律案を可決する際に、委員会の意思を表明するものとして行う決議のことであり、慣例として全会一致で決議される。法律的な拘束力はないが、立法府の意思や理念が示されているため、政府はこれを尊重することが求められ、無視はできないことになっている。
担当者から一言
リポーター
保護・教育部 大野正人
今後も、法改正の運用や附帯決議の実行など関係団体と注目をしていきます。