2022.02.28(2022.03.09 更新)
【配布資料】今日から始める自然観察「芋虫・毛虫と仲良くなろう!」
観察ノウハウ
専門度:
フィールド:公園雑木林田畑
<会報『自然保護』No.586より転載>
このページは、筆者の方に教育用のコピー配布をご了解いただいております(商用利用不可)。ダウンロードして、自然観察などでご活用ください。
つるつるの芋虫、毛やトゲのある毛虫は、チョウやガなどの幼虫です。ちょっと苦手……という方もいるかもしれませんが、苦手意識を手放して観察してみませんか? 観察する際には、あらかじめ毒のある毛虫を把握しておきましょう。
(三田村敏正 コクーンワールド福島副会長、日本蛾類学会、日本野蚕学会)
芋虫・毛虫をじっくり見る
芋虫、毛虫をじっくり見たことがありますか? 野外で見かけても近付いてじっくり見たことがある人は少ないかもしれませんね。この機会にぜひ、芋虫、毛虫を観察してみてください。まず、注目してほしいのは、足の数です。次に気門を探してみましょう。幼虫の体の横に縦長の丸い紋が付いています。昆虫はこの気門で呼吸をしているのです。いくつ気門があるのかも調べてみましょう。
体の作りを見てみよう
芋虫、毛虫はどんな体の作りをしているのでしょうか? まず注目して欲しいのは足です。フクラスズメの写真を見ると、胸脚が3対(6本)、腹脚が4対(8本)、尾脚が1対(2本)あります。チョウやガの足の数は、これが基本形ですが、ヒロオビトンボエダシャクのように腹脚が1対しかないもののほか、2対、3対の種もいます。また、腹脚が5対以上あるなら、それはハバチというハチの幼虫です。
毛虫との触れ合い
リンゴドクガは美しいレモンイエローの毛虫で、淡いクリーム色の個体もいます。ドクガという名前でも毒はないので触ることができます。毛はやわらかいので、さわさわした感触です。背中に盛り上がった毛の束があり、つつくと背を曲げ、毛の束の間にある黒い横線を見せます。観察会では、手に乗せて楽しむ子どももいます。
注意:毒がないとされている毛虫でも、痒みや炎症を起こす例が報告されています。肌が敏感な方、アレルギー体質の方はお気を付けください。
毒のある毛虫はごくわずか
それでは、野外で探してみましょう。木の葉や草に虫が食べた跡があるかどうか、木の下に糞が落ちているかどうかが見つけるポイントです。
注意してほしいのは毒を持つ種類がいることです。毛虫には毒があるというイメージがありますが、実は日本に6000種以上もいるガの仲間の中で、幼虫に毒がある種類はごくわずかです。しかし、そのわずかな種類のせいでひどい目に遭う人がいるのです。ですから、毛虫を見つけて毒があるのかどうか分からないときは触らないようにしましょう。また、毒がなくても毛の刺激で、人によっては痒みが出る場合もあります。
毒がないと分かった時はそっと触ってみます。その時、芋虫や毛虫の反応も感じてください。フクラスズメのように体を大きく震わせ威嚇するのもいれば、丸まって落ちてしまうのもいます。ただし、触られることは虫にとってはストレスになりますので少しだけにしましょう。枝に止まっている幼虫は足の力が強いので、無理やり引っ張ると足が切れてしまうことがあります。また、強くつかむとつぶれてしまいます。可能であれば、足を優しくすくうようにして手のひらにのせてみましょう。手のひらで幼虫が歩いている時の足の感触を感じてみます。そうすればきっと、愛着が湧くことでしょう。
(毒がありそうに見えて)毒がない毛虫
ヒトリガ(ヒトリガ科)
背中に黒く長い毛、足元に褐色の毛を持つ。幼虫で越冬し、5月から初夏に道路を横断しているのをよく見かける。触ると丸くなる。
モンクロシャチホコ(シャチホコガ科)
サクラやウメなど主にバラ科の葉を食べる。夏から秋に幼虫を見ることができ、若齢幼虫は集団になる習性がある。
アゲハモドキ(アゲハモドキガ科)
ミズキの葉を食べる。体の表面から分泌された白い物質でおおわれ、ふわふわした毛のような状態になっている。
ツマグロヒョウモン(タテハチョウ科)
スミレの仲間の葉を食べる。背中に赤い線があり体にはたくさんの突起がある。最近、増えているチョウ。
覚えておきたいあぶない毛虫
イラガ(イラガ科)
カキ、サクラなどの葉を食べる。トゲに触ると、毒液が注入されビリっと痛むため電気虫とも呼ばれている。
ヒロヘリアオイラガ(イラガ科)
トウカエデなどの街路樹に多く、若齢幼虫は群れる。体に多数の突起があり、触れるとトゲが刺さる。繭にも毒のトゲがある。
ドクガ(ドクガ科)
サクラやコナラなど多くの植物の葉を食べる。多数の目に見えない毒針毛を持つ。卵、繭、成虫にも毒針毛がある。
チャドクガ(ドクガ科)
チャノキ、ツバキ、サザンカの葉を食べる。若齢幼虫は集団になる。極めて多数の毒針毛を持つ。卵、繭、成虫にも毒針毛がある。
マツカレハ(カレハガ科)
マツの葉を食べる。胸部の背に毒針毛があり、これが皮膚にささると炎症を起こす。繭にもこの毛がある。
タケカレハ(カレハガ科)
ササ類、タケ類などの葉を食べる。背中に黒い毒針毛を持ち、この毒針毛は繭にも毛の束として残される。
ホタルガ(マダラガ科)
サカキ、ヒサカキの葉を食べ、一見、芋虫のように見えるが、毛は生えている。毛には毒はないが体から毒液を分泌する。
ここに紹介した以外にも毒のあるケムシは、モンシロドクガ、タケノホソクロバ、ヨツボシホソバなどまだまだいます。
刺されてしまった時は、応急処置としてセロテープやガムテープで毒針毛を取るか洗剤で洗い流します。ただ、気が付かないうちに触れていて家に帰ってから炎症を起こすこともあります。観察時は服装には気を付けましょう。
参考になるおすすめ本
- 『イモムシハンドブック』①~③巻 著者:安田 守 発行:文一総合出版
- 『庭のイモムシ ケムシ』文:川上洋一 編:みんなで作る日本産蛾類図鑑 発行:東京堂出版
- 『道ばたのイモムシ ケムシ』文:川上洋一 編:みんなで作る日本産蛾類図鑑 発行:東京堂出版
- 『小学館の図鑑NEO イモムシとケムシ』DVDつき 著者:鈴木知之 横田光邦 筒井学 発行:小学館
- 『キモカワ! イモムシ超百科 (これマジ?ひみつの超百科)』 著者:やぎ まきこ いのうえ けいこ 発行:ポプラ社
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