2022.01.01(2021.12.22 更新)
第8回 会報表紙フォトコンテスト 結果発表
報告
専門度:
テーマ:フォトコンテスト
第8回 会報『自然保護』表紙フォトコンテスト結果発表!!
第8回会報『自然保護』表紙フォトコンテストには、535名の方から合計1517作品を送っていただき、過去最高の応募数となりました。また、今年も多くの方が大切な作品を、NACS-Jの広報・普及啓発活動に無償で使用してもよいとしてくださいました。ご応募・ご協力、誠にありがとうございます。2022年の自然保護誌をどうぞお楽しみに!
尾園 暁 (昆虫・自然写真家)、秋山幸也 (NACS-J 自然観察指導員講習会講師、相模原市立博物館学芸員)、美柑和俊、田中未来 (MIKAN-DESIGN)、志村智子 (NACS-J 事務局長)、道家哲平、渡辺聡子、田口裕美子(NACS-J 広報会員連携部 編集室)
講評者:尾園 暁
昆虫・自然写真家。幼少から生きもの好きで、小学生のころトンボのかっこよさに魅かれて以来、筋金入りのトンボ好き。著書には『ぜんぶ分かる!トンボ』(ポプラ社)や、『ハムシハンドブック』(文一総合出版)などがある。
ブログ『湘南むし日記』で出合った昆虫たちを毎日紹介している。
■優秀賞(会報表紙賞)
有本 実【ヤマアカガエル卵】
【撮影者コメント】
早春の雑木林に隣接する湿地内で、アカガエル類の卵を見つけました。ニホンアカガエルかヤマアカガエルか……卵塊が崩れずにすくえたらニホンアカガエル、などと紹介されますが、すくってみてもどうもよく分かりません。結局孵化するタイミングを見計らって再訪し、オタマジャクシになってから同定しました。
【講評】
早春の水辺を、インパクトのあるアングルと構図でうまくまとめた作品です。芽吹きを待つ水辺の林を背景に、日差しを浴びてきらめくヤマアカガエルの卵が宝石のように美しく、質感豊かに描写されています。生きもの好きなら誰もがこの作品を見て、来たる春に胸をときめかせるのではないでしょうか。
脇坂 大【珊瑚に囲まれて】
【撮影者コメント】
シマキンチャクフグの幼魚です。毒を持っていますが、とても可愛い魚なので見つけた時にはいつもカメラを構えます。特にこの時は、色鮮やかなソフトコーラルに囲まれて泳ぐ姿が愛らしく、何枚もシャッターを切りました。この写真はその中でも最高の一枚です。
【講評】
なんといっても色合いが素晴らしい一枚。ソフトコーラルとフグの織りなす色のハーモニーに、見ているこちらが幸せな気持ちになりました。フグの大きな瞳とのんびりとした表情に癒されますが、クローズアップ撮影の技術にも精緻さが感じられ、貴重な一瞬を狙い通り的確に捉えられていることが分かります。
伊藤 慶【アマミイシカワガエル】
【撮影者コメント】
奄美の森の中で偶然出会ったアマミイシカワガエル。日本で一番美しいカエルと言われているだけあり、一瞬で心を奪われました。今まで、哺乳類と鳥類にばかり夢中になっていた私に、新しい世界を見せてくれた瞬間でした。
【講評】
ここから小さな物語が始まりそうな、イマジネーションが掻き立てられる作品です。夜行性で日中に見ることが簡単ではないイシカワガエルに、よくこの素晴らしいシチュエーションで出会えましたね。写真は一期一会のものですが、その機会を逃さずしっかり作品として昇華させているところに感服しました。
伊藤京子【真夏の公園】
【撮影者コメント】
街中の公園にある小さな花壇。そこにはヒャクニチソウやキバナコスモスなどの花が植えてあり、近くには柑橘系の樹木もありアゲハにとっては都会のオアシスです。吸蜜に夢中のナミアゲハを、真下からそっと魚眼レンズで構えていました。花から花へと移る瞬間、大きく翅を広げた夏型ナミアゲハの街中での飛翔を捉えることができました。
【講評】
大胆な構図と躍動感が素晴らしいですね。チョウの飛翔を魚眼レンズで撮る手法自体は広く知られていますが、この作品は太陽とチョウの配置、青空と雲、植物と建物のバランスなどが良く、ひときわ印象に残る一枚に仕上がっています。きっとたくさんシャッターを切られたのだと思いますが、この一枚を選んだ作者の選択眼にも飛び抜けたものを感じます。
有山 誠【骸骨三兄弟】
【撮影者コメント】
顔と骨の様な模様からダイバーは「骸骨ホヤ」と呼んだりするホヤの一種が3個体集まっていて三兄弟のようでした。骸骨と呼ばれていますが表情は笑顔のようで笑っちゃいます。
【講評】
「なんだこれは!?」とびっくりさせられるのが楽しい写真ですが、ホヤの仲間なんですね。ネットで調べてみると「ガイコツパンダホヤ」という名前で出てきました。そう思ってみると、本当に笑ったパンダとガイコツが見えてきて、楽しくて仕方がありません。普段はまず目にすることがない生きものを、クオリティの高い写真で見せていただけて幸せです。
米田和志【ハギマシコ】
【撮影者コメント】
初雪が遅い年でもいったん降り始めると一気に冬景色。雪が降るかすかな音とハギマシコが枝に揺れる音。無音の雪原で心暖かく耳をすましながら眺める穏やかな時間。
【講評】
まるで日本画の名作を見ているようです。撮影状況を想像しただけで寒さに震えてしまいそうですが、モノトーンの景色の中に木の実とハギマシコが生気を与え、吹雪によって静謐な雰囲気の中にも動を感じられる、卓越した作品だと思います。
■入賞(ポストカード賞)※50音順
大西恭彰【ニホンミツバチ】
【撮影者コメント】
日本固有種のニホンミツバチの採蜜の際に垂れたハチミツを舐めに来ているところを撮影しました。きれいに整列して舐めているところがとても印象的でした。この後ものの数分で全てのハチミツがミツバチによって回収され、ハチたちもまた花の蜜を求めて飛んでいきました。
【講評】
蜜を舐めるために並んだミツバチがどこか幾何学的な模様にも見えて、美しさと面白さを兼ね備えた写真ですね。こうした行動も初めて見せていただいて、たいへん勉強になりました。
金山利幸【ミユビシギ】
【撮影者コメント】
波打ち際でテケテケとすばしっこく走り回るミユビシギ達、見ているだけで癒されます。あまりの素早さに、シャッターチャンスは運任せ(笑)。また来てくれる日を心待ちにしています。
【講評】
砂浜を歩き回るミユビシギの群れを叙情的に表現されています。背景の波とサーファーもこの場面をいっそう美しく盛り上げていますね、カメラアングルの工夫も感じられ、心惹かれる作品になっています。
小林嵩史【見つめる先は】
【撮影者コメント】
羅臼町に流れ着く流氷にはワシたちが集まります。海風や雪に耐えながら冬を越そうとする彼らの姿はとても勇ましいです。ときには同時に何かを見つめたり、少しかわいい表情も見せてくれたりします。このときの3羽は一体何を思っていたのか気になります。
【講評】
白い景色の中に黄色い嘴と脚が浮かび上がり、とても印象的です。三羽並んだオオワシが凛々しく、神々しくさえ見えてきました。視線の先に何があるのか、想像が掻き立てられるのもいいですね。
増田 恵【碧き翼】
【撮影者コメント】
この鋼のような羽を撮影するのに苦労しました。環境変化の影響を受けやすいトンボなので、私が知っている数カ所の発生場所の1カ所は、完全にいなくなってしまったところがあります。
【講評】
チョウトンボの美しさを見事に写し取られていますね。この翅は光の加減によって見え方が変わり、写真に撮るのが意外に難しいのですが、質感がしっかり表現されていて、撮影の苦労や工夫が伝わってきます。
米澤葉琉【エゾリス】
【撮影者コメント】
エゾリスが巣作りのために草木を運んでるところを撮影した一枚です。ファインダーを覗きながら、かわいさに圧倒されシャッターを押すのを忘れるほどでした。こんなにかわいい動物が末長く生存できる地球になっていけばいいと願ってます。
【講評】
リスはとてもかわいいので被写体での勝負になってしまいがちなのですが、この写真はそこにとどまらず、彼らの生態を美しい作品として捉えているところが素晴らしいです。でもやっぱりかわいいですね(笑)。
■佳作 ※50音順
中西啓貴【虹色の巣】
【撮影者コメント】
竹林でクモの巣が虹色に光っていました。真ん中には光の矢を射る主もいました。付近には同じクモの巣がありましたが、光の当たり具合が良かったのでしょう、虹色はこの巣だけ。緻密な糸一本一本が、見る角度によって色彩が変わるので、綺麗な色がでる位置を探し、混んだ竹林なので、日陰になる前に急いで撮影しました。巣の大きさはCDサイズ。緻密さと色彩が音楽を奏でるCDのようでした。
前地 覚【ササゴイ】
【撮影者コメント】
ササゴイが婚姻色オイカワを捕食する瞬間を撮ることができました。この日、ササゴイはオイカワを12匹取りましたが、ほとんどが後ろ姿で、チャンスはコレ一度でした。
宮本昌宏【アオサギ】
【撮影者コメント】
湿地の中で餌を探すアオサギ。カメラを構えても逃げる様子もなく、淡々と小魚を捕る姿に気品を感じました。ふかふかの羽毛がとても綺麗でした。
渡辺 聡【ダンゴムシ】
【撮影者コメント】
小さい子どものころに集めて遊んでいたダンゴムシ。大人になると気にもかけなくなりましたが、よく見るとやっぱりカワイイ。エサを探して一生懸命歩いていました。よく見るこの色はオスで、色が薄いのはメスです。