2021.10.29(2021.10.29 更新)
自然度の高い場所が風力発電施設の計画地に
読み物
専門度:
▲建設予定地のブナ林は自然度が極めて高く、非常に良い森林。(2021年7月2日)
テーマ:里山の保全生息環境保全森林保全環境アセスメント
フィールド:エネルギー問題
現在、国内では再生可能エネルギー(以下、再エネ)導入が急速に進んでいます。
再エネの推進は地球温暖化を抑制し、生態系の保全にもつながることから歓迎すべきことです。しかし現在、再エネの導入による自然環境や住環境への影響が各地で問題となっています。
(仮称)美浜新庄ウィンドファーム計画地を視察
自然環境に影響が懸念される福井県美浜町の風力発電施設(仮称)美浜新庄ウィンドファームの予定地を、情報提供者の滋賀山友会と共に現地確認してきました。NACS-Jは本計画の環境影響評価法に基づく環境影響評価方法書に対し、自然環境への影響を懸念すると意見をしています。
計画地は標高600~800mの野坂山地の庄部谷山と芦谷山から伸びる尾根筋一帯です。高さ約150~200mの風力発電機を20~25基設置し、計画総出力は最大10.5万kWです。一帯は胸高直径1mを超えるブナの巨木が点在する、極めて自然度の高い森林となっています。
既に風況調査の観測タワーが設置され、周辺のブナが伐採されていました。伐採された最も太いブナの樹齢は250年以上でした。計画地には、さらに太いブナが数多くあり、これら森林が伐採された場合、元の森林の再生には少なくとも300年以上はかかります。また既存の林道では、風力発電機設置などのための機材搬入道路としては、不十分なため、林道整備が進行していました。これら工事は風力発電施設本体の工事ではないため、環境影響評価手続き中でありながらも先行して行われています。
他にも自然度の高い場所で計画が進行中
福井県内では他にも大野市・池田町や滋賀県境の敦賀市・南越前町で、自然度が高く自然環境への影響が懸念される風力発電施設が環境影響評価の手続き中です。また三重県松阪市と大台町でも、ブナ天然林内に60基15万kWと大規模な計画があります。計画地は室生赤目青山国定公園および大台ケ原・大峯山・大杉谷ユネスコエコパーク内でもあり、NACS-Jは8月30日に環境影響評価配慮書に対し、自然環境への影響を懸念するとの意見をしています。
このように自然度が極めて高く、全国規模で重要な自然環境への影響が大きい風力発電施設の計画が全国各地で進行しており、今後も注視していきます。
▲高さ20mほどの風況調査の鉄塔。風力発電機はこの10倍近くの高さになる。周囲の樹木は太いブナの木を含め、伐採され無造作に積み上げられている。
▲既設の林道は荒れているため、重機による整備が進んでいた。
ご参考
担当者から一言
リポーター
保護部 若松伸彦
温暖化防止の観点から再エネ推進には賛成ですが、重要な自然環境を犠牲にしての推進は目的を見失っています。