2021.09.02(2021.09.03 更新)
全国の会員の協力を得て生物季節観測が再開中!
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▲ヒグラシ(写真:伊藤信男)
テーマ:モニタリング自然環境調査
毎年、さくらの開花宣言などで知られる気象庁の「生物季節観測」。この調査の大部分が廃止されると発表され、NACS-Jは、記録の重要性や日本文化の季節感の喪失につながると考え、継続を求める声明を出しました。その後の動きについて紹介します。
高川晋一(NACS-J市民活動推進部)
対象種が身近に確認できなくなったため、一度は廃止に
「生物季節観測」は、気象庁が1953年から全国の気象台で続けている調査で、さまざまな生きものの開花や初鳴き・初見などを記録する調査です。2020年末時点で57種の動植物が調査対象となっており、生きものの季節の移り変わりに伴う行動・状態の変化(=生物季節。フェノロジーともいう)が半世紀にわたり記録された国際的にも価値の高い調査となっています。しかし昨年11月に、多くの観測対象種が身近な自然で確認できなくなっているといった理由から、この生物季節観測の大部分を廃止することが気象庁から発表されました。
このことは大きな話題となり、さまざまな団体やメディアから調査継続を求める声が上がりました。NACS-Jも声明を提出し、その後も気象庁とのやり取りを続けていました。
その結果、新たに気象庁・環境省・国立環境研究所が事務局となり、全国の市民の手も借りて調査を継続することが3月末に発表されました。NACS-Jは調査設計や調査員の募集呼びかけに協力する立場で関わり続けています。
全国100名以上の方から協力のお申し出。11月まで調査員募集中
現在(7月末時点)、自然観察指導員やモニタリングサイト1000里地調査の調査員の皆様などを中心に、全国100名以上の方から調査協力の申し出をいただき、なるべく過去の調査方法を踏襲する形で調査が再開しつつあります。世界的にも価値の高いこの調査が皆様の協力により続けられることに、心からお礼申し上げます。
11月までは調査員の第一弾募集が続きます。基本的には気象台の周辺での調査が推奨されていますが、一部の調査項目を、ご自身の定めた地点で調査いただくことも可能です。調査への参加にご興味のある方は、国立環境研究所のウェブサイトをご覧ください。
この調査は、生物の状況や温暖化の影響を全国規模で把握する上で重要なだけでなく、四季と共に暮らしを営む私たち日本人の季節感や自然観を育み引き継ぐ上でも価値のある活動です。古くから日本人が季節の移ろいを知る暦として使ってきた「七十二候」との共通性が高いのも興味深いところです。
皆様も季節の移ろいと生きものたちの変化を観察し、自分なりに記録してみてはいかがでしょうか? なお気象庁と環境省では、「いきものログ」にて、一般の方からもさまざまな身近な生きものの所見・初鳴きの情報を募集しています。
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